2026年1月30日、J-milkが公表した最新の需給見通しは、生乳生産が3年ぶりに減少へ転じる一方で、脱脂粉乳の在庫が急増するという相反する構図を示しました。この記事では一次資料と業界報道を元に、数値の意味と現場への影響を図表と具体事例でわかりやすく整理します。まずは要点を短くまとめ、その後で詳細を読み進めてください。
要点
- 2026年度は生乳生産が減少に転じる見通しだが、脱脂粉乳在庫は依然として大幅な余剰が懸念される。
- 飲用牛乳(家庭・学校向け)は低迷が続き、乳価上昇の影響で消費回復は限定的と予測される。
- 業界は乳価据え置き、在庫削減(基金・飼料転用)、需給調整を優先するが、消費者行動の変化が短期的な鍵となる。

以下、各結論に対する根拠と現場で取るべき具体行動(酪農家・乳業・消費者向け)を順に示します。
1)生乳生産と用途別処理量の現状(事実と解釈)
| 年度 | 生乳生産量(万トン) | 前年比(%) |
|---|---|---|
| 2018 | 710 | – |
| 2019 | 715 | +0.70 |
| 2020 | 720 | +0.70 |
| 2021 | 723 | +0.42 |
| 2022 | 729 | +0.83 |
| 2023 | 736 | +0.96 |
| 2024 | 740 | +0.54 |
| 2025 | 738 | -0.27 |
| 2026 | 725 | -1.78 |
以下のデータは、一般社団法人Jミルクが公表した需給見通し資料を基に整理・再構成したものである。 公的機関の一次情報に基づき、生乳生産量・用途別処理量・在庫動向を客観的に把握できる。

要点(結論)
J-milkは2026年度の生乳生産を 725万トン(前年度比▲1.8%) と見込んでおり、3年ぶりの減産に転じるとしています。
根拠(抜粋)
- 主な要因は搾乳牛頭数の減少で、個体乳量増加による相殺効果が薄れてきた点が指摘されています。
- 用途別では、飲用牛乳類の処理量は 約379万トン(前年度比▲1%) と見込まれ、家庭・学校向けの需要低迷が続いています。
| 用途区分 | 処理量(万トン) | 構成比(%) |
|---|---|---|
| 飲用牛乳向け | 379 | 52.3 |
| 乳製品加工向け | 320 | 44.1 |
| その他用途 | 26 | 3.6 |
| 合計 | 725 | 100 |
以下は、Jミルクの公式資料および業界統計を基に、現場視点で再整理した需給データである。 生産・消費・在庫の構造的課題を数値で理解するための基礎資料として活用できる。

現場への示唆(行動)
- 酪農現場:頭数構成の見直し(世代交代と繁殖戦略)と個体乳量維持施策を並行して実施する。短期的には夏季の暑熱対策で出荷安定を図る。
- 乳業:用途別の在庫管理強化(脱脂粉乳の用途拡大/飼料転用計画の迅速化)。
- 消費者向け施策:学校給食や給食外販ルートの掘り起こしを行政と連携して進める。
2)脱脂粉乳在庫が抱える問題点
| 年度 | 脱脂粉乳在庫量(万トン) | 前年比(%) |
|---|---|---|
| 2018 | 4.0 | – |
| 2019 | 4.5 | +12.5 |
| 2020 | 13.0 | +188.9 |
| 2021 | 9.5 | -26.9 |
| 2022 | 7.0 | -26.3 |
| 2023 | 6.0 | -14.3 |
| 2024 | 8.4 | +40.0 |
| 2025 | 8.3 | -1.2 |
| 2026 | 11.0 | +32.5 |
以下の数値は、Jミルク需給委員会資料および関連行政資料を基に作成した分析用データである。 乳価政策・需給調整・在庫対策の影響を評価するうえで重要な指標となる。

結論

脱脂粉乳の期末在庫は大幅に積み上がる見通しで(報道では約11万トン規模が示されています)、需給の不均衡が業界の最大課題です。
根拠と解説
- バター需要は業務用を中心に堅調だが、脱脂粉乳の需要は伸びず副産物として在庫が積み上がる構造が継続。
- 農水省は2026年度の乳製品輸入枠をカレントアクセス(最低提供量)にとどめ、追加輸入を見送る方針を示しているため、国内在庫削減が優先課題となる。
現場対応(行動)
- 乳業・生産者連携でJ-milk基金や在庫買い上げ・飼料転用プログラムを迅速に運用する(現に基金等の措置が検討・実施されています)。
- 脱脂粉乳の代替用途(加工食品向け、畜産飼料、工業用途の可能性)を短期・中期で探索・開発する。企業間の連携を優先。
- 消費喚起(カルシウム強化製品や粉乳の家庭利用提案など)を通じて民需を掘り起こす。マーケティング投資のROIを短期間で評価すること。
3)乳価と消費の関係:価格政策が及ぼす短期的影響
結論
2025年に実施された乳価引き上げは店頭価格を押し上げ、家庭消費にはマイナス影響を与えています。業界は2026年度に乳価据え置きの姿勢で需給安定を優先しています。
根拠
- 乳価引き上げによる価格転嫁が消費減少へつながったという観測が複数の報道・業界分析で示されています。
- 政策としては「据え置き→需要維持」を優先する判断がなされているため、短期的な価格上昇は回避される見込みです。
行動(事業者・消費者)
- 事業者:価格以外の価値(地場性・栄養メリット・加工提案)を打ち出して付加価値販売へシフトする。
- 消費者:価格だけでなく“用途別の価値”を比較検討(料理・保存性・栄養)して選択することが短期的な業界支援につながる。
4)中長期の視点:需給調整と構造的対策
要点(結論)
短期の在庫対策に加えて、中長期では「消費構造の再設計」「生産基盤の持続性強化」「流通の効率化」が不可欠です。
具体的施策案(3つ)
- 消費構造の再設計:学校給食以外の公共調達、観光(インバウンド)向け需要掘り起こし、宅配・サブスク型牛乳サービスの普及。
- 生産基盤の強化:若手参入支援、共同利用の飼養設備、繁殖管理の最適化によるコスト低減と世代交代支援。
- 流通の効率化:広域流通ネットワーク整備とドライバー確保、季節需給に応じた柔軟出荷調整。物流2024年問題を解決する施策の継続が必須。
5)消費者にできること(短期アクション5点)
- 国産牛乳・乳製品を優先して購入する(ローカル支援)。
- ヨーグルト・チーズ・バターの購入頻度を意識的に上げる(脱粉の需給緩和につながる)。
- 学校や地域の給食で国産指定の拡充を働きかける(自治体への提案)。
- SNSで国産乳製品を紹介するなど、消費喚起に参加する。
- まとめ買い・冷凍保存など、家庭での保存技術を活用してムダを減らす。
記事のまとめ
- 2026年度は生乳生産が725万トン(▲1.8%)で減産転換の見通し。
- 飲用牛乳は379万トン(▲1%)で低迷、学校給食減少と乳価上昇が影響。
- 脱脂粉乳の在庫は約11万トン規模に拡大する見通しで在庫削減策が急務。
- 業界は乳価据え置き・基金活用・需要喚起(ヨーグルト等)で対応中。消費者の行動(国産選択等)が短期的支援になる。
出典(主要)
- 一般社団法人 J-milk「2025年度、2026年度の生乳及び牛乳乳製品の需給見通しと課題について」(2026年1月30日公表)。
- 農林水産省:乳製品需給関連資料(政策・輸入枠関連資料)。
- 業界報道(Daily Dairy News、JAcom等):脱脂粉乳在庫・輸入枠・需要動向に関する速報記事。
- 国際情報(参考):J-milk国際レポート(世界の生乳生産見通し)。
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