酪農基礎講座第二回:乳牛の5大品種

酪農

はじめに
乳牛の品種は、牛乳やバター、チーズなどの乳製品の質に大きな影響を与えます。この記事では、乳牛の5大品種をわかりやすく解説します。乳製品を作るために、どの品種がどのように適しているのかを知ることが、酪農を知るための第一歩です。


ホルスタイン・フリーシアン(Holstein Friesian) —牛乳生産に最適な乳牛

原産国

ドイツホルスタイン州オランダフリースランドで品種改良された品種。比較的寒い土地で改良されました。

特徴と利点

ホルスタインは、世界中で最も多く飼われている乳牛です。斑模様が特徴で、体は大きく(体重700kg)、平均乳量が多いです。この品種は、特に大量の牛乳を生産するのに適しています。日本では乳牛の99%がこの品種です。まれに『RED』と呼ばれる赤茶色斑模様のホルスタイン種もいます。

1乳期の乳量が2万kg以上の牛をスーパーカウと言います。

なぜホルスタイン種が飼育頭数の99%を占めるのか

ホルスタインの最大の利点は、その乳量です。1頭から年間8,000リットル以上の牛乳を得ることができ、品種です。スーパーで見かける多くの牛乳は、ホルスタインから生産されたものです。

乳製品への影響

ホルスタインの牛乳は、脂肪分3.8%程度)が他の品種に比べて少なめですが、その分、低脂肪乳や飲みやすい牛乳が得られます。このため、日本の酪農で最も使用される品種です。


ジャージー(Jersey) — 濃厚な乳製品を作る乳牛

原産国

イギリスとフランスの間の海峡にある、チャネル諸島のジャージー島で改良された品種。暖流が流れているため比較的暑さに耐性があります。

特徴と利点

ジャージーは、小型(約500kg)で茶色の毛を持ち、乳脂肪豊富な乳を生産します。乳脂肪が高いため、濃厚なバタークリームを作るのに最適です。しかし、性格に難あり。高校生の時は頭突きしてくる牛がいたり、かまってちゃんがいたり、自由奔放でわがままな子といったイメージです。

ホルスタイン種の次に多いジャージー種

ジャージーの乳は、乳脂肪約5%〜6%と高く、非常にクリーミーで濃厚な味わいです。この特性により、バターを生産するのに適しています。イギリスとフランスの間にあるジャージ島で発達した品種で、本来はイギリス本土バター供給するために発達した品種です。しかし、平均乳量が年間5000kgとホルスタイン種と比べ乳量が少ないのが特徴です。

また、生乳を出荷した時に得られる乳価乳成分によって変動するのですが、乳量の多いホルスタイン種に不足しがちな乳脂肪分を補えるためジャージー種と組み合わせて飼育している牧場が多いです。

乳製品への影響

ジャージーの乳は、その濃厚さからアイスクリームクリームバターの製造が理想的です。高品質な乳製品を求める消費者に向けて、付加価値のついた製品を作る際に使用されます。また、濃厚な味わいを楽しめるジャージー牛乳も人気です。


ガンジー(Guernsey) — 高脂肪と高タンパク質の乳牛

原産国

ャージー種と同様のチャネル諸島、ガンジー島で改良された品種です。

特徴と利点

ガンジーは、オレンジ色斑模様が特徴の乳牛です。乳脂肪が豊富で、特にクリームバターの製造に最適です。

ジャージーとほぼ同じ

ガンジーの乳は、高い乳脂肪を誇ります。このため、バター作る際に非常に重宝されています。乳脂肪の含有量は約5%〜6%で、風味豊かな乳製品が作れます。

乳成分への影響

ガンジーから取れる乳は、特にバタークリームに向いており、濃厚でまろやかな味わいを持っています。特に高級乳製品に最適な品種です。


ブラウンスイス(Brown Swiss) — チーズ作りに最適な乳牛

原産国

スイス山地酪農にて発達したこの品種は現地ではスイス・ブラウンと呼ばれています。18世紀後半にアメリカ乳肉兼用種として改良されました。

特徴と利点

ブラウンスイスは、乳成分中乳固形分乳タンパク等)が多い乳牛です。この品種は、特にチーズ作りに最適とされています。平均乳量は年間5000kg

チーズ作りと放牧向き

ブラウンスイスの乳は、特にチーズを作るのに理想的です。温厚強健スイスで発達した経緯から放牧主体で飼育されていたことが多く、チーズの生産や放牧をしたい酪農家で徐々に数を増やしつつあります。

乳製品への影響

高い乳固形分: ブラウンスイスは、乳固形分(特に乳タンパク3.5%以上の含量が比較的高いため、その牛乳はクリーミーな味わいがあります。乳固形分の含量が高いので、特にチーズを作るのに適しています


エアシャー(Ayrshire) — 高タンパク、耐寒性が高いのが特徴

原産国

イギリスエア州で品種改良されました。

特徴と利点

エアシャーは、の斑模様を持つ乳牛で、乳タンパクが非常に高いのが特徴です。また、丈夫耐寒性が高く飼育がしやすい牛です。

日本ではほぼいないエアシャー種

エアシャー種は高タンパクチーズの生産に向いていますが、ホルスタイン種と比べ年間乳量が5,00kgと少なく普及しにくいためこのような結果になっています。


まとめ — 乳牛の品種

乳牛の品種は、それぞれ異なる特性を持っており、どの品種が乳製品作りに適しているかは重要なポイントです。ホルスタイン大量生産に向いており、ジャージーやガンジーは高い乳脂肪を誇ります。ブラウンスイスエアシャーチーズ作りに向いています。

品種名特徴乳量乳脂肪乳製品への適応利点
ホルスタイン白黒斑模様を持つ大型の乳牛。世界で最も飼われている品種1頭あたり年間8,000リットル以上約3.5〜4%主に飲用乳大量生産に最適大量生産に適しており、商業乳業で最も一般的。
ジャージー小型茶色の毛、乳脂肪が高い乳を生産。乳製品の濃厚さを求める場合に最適。1頭あたり年間5,000リットル程度約5〜6%バターアイスクリームクリームに最適。濃厚で風味豊かな乳製品。高乳脂肪濃厚な乳製品が作れる。バターに特に適している
ガンジーオレンジ色斑模様乳脂肪豊富1頭あたり年間5,000リットル程度約5〜6%バタークリームに向いている。高脂肪濃厚な乳製品を作れる。
ブラウンスイス丈夫で放牧向き。特にチーズ作りに適した品種。1頭あたり年間5,000リットル程度約4〜5%乳固形分の含量が高くチーズ作りに最適チーズの製造に特に適しており、乳タンパクが高い。
エアシャー斑模様強肩でたくましく耐寒性が高い1頭あたり年間5,000リットル程度約3.9%チーズに適している。飼育しやすく、タンパク質含量が高い

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この記事を書いた人

神奈川県横浜市の非農家に生まれる。実家では犬を飼っており、犬部のある神奈川県立相原高校畜産科学科に進学。同級生に牛部に誘われ、畜産部牛プロジェクトに入部。牛と出会う。

大学は北海道の酪農学園大学に進学。サークルの乳牛研究会にて会長を務める。

今年で酪農歴10年!現在は関西の牧場にて乳肉兼業農場の農場長として働いています。

毎日牛乳1L飲んでます!

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