酪農現場で最も注意すべき子牛の寄生虫病「コクシジウム症」。1~3ヶ月齢の子牛は特にリスクが高く、放置すると下痢や発育遅延を招き、最悪の場合、死亡や繁殖成績の低下へとつながります。本記事では、コクシジウム症の基礎知識から、現場ですぐに取り入れたい予防・治療法、経済的損失を最小限に抑えるポイントまで、理解しやすく、かつ専門性を盛り込んで解説します。

子牛の下痢…それ、コクシジウム症かも!
1. コクシジウム症とは?
コクシジウム症は、Eimeria属の原虫が小腸や大腸の粘膜に寄生することで発症する寄生虫病です。主に E. bovis と E. zuernii が牛に強い病原性を示し、子牛(特に1~3ヶ月齢)が感染すると、重度の下痢や血便を引き起こします。
- 感染経路:成熟オーシスト(卵様体)の経口摂取
- リスク要因:多頭飼育、敷料の汚染、湿度・温度管理の不備
- 潜伏期間:感染後約2~3週間
オーシストは環境中で数か月~1年以上生存し、通常の消毒薬では完全に死滅しにくいため、現場の衛生管理が極めて重要です。

コクシジウムは子牛の腸に寄生する原虫です

2. 主な症状と診断方法
症状 | 特徴・発現時期 |
---|---|
下痢(泥状~水様性) | 初期~中期 |
血便 | 中期以降、重症例で顕著 |
発育不良・体重減少 | 感染後3~4週間 |
脱水症状・貧血 | 重症化した場合 |
- 糞便検査:オーシスト検出が確定診断のキー。ウィスコンシン法など浮遊集卵法を活用。
- 臨床観察:軟便や活力低下を日々チェックし、異常があれば速やかに検査を実施。

下痢や血便はコクシジウム症のサイン!
3. 現場でできる予防策
予防は「環境管理」「母牛のケア」「薬剤投与」「栄養管理」の4本柱で実施しましょう。
予防策 | 方法例 | ポイント |
---|---|---|
環境管理 | 牛舎の定期消毒、敷料交換、蒸気消毒 | オーシストの繁殖を抑制 |
母牛の駆虫 | 分娩1ヶ月前の駆虫投与 | 母体を介して子牛に免疫パス |
抗コクシジウム剤の投与 | バイコックス(ジクラズリル)、ベコクサン等 | 感染初期の未発症群にも投与 |
栄養管理 | Bacillus菌や酵素添加飼料の利用 | 腸内環境の安定化 |
- 牛舎衛生の徹底
- 敷料は週1回以上交換し、湿度管理も同時に実施。
- 高温スチームや乾熱処理でオーシスト死滅率を高める。
- 母牛免疫の強化
- 分娩前の駆虫で母体の抗体を高め、初乳を介して子牛へ移行。
- 産後1週間以内に十分な初乳摂取を確保。
- 薬剤投与プログラム
- 単独飼育から群飼への移行時期に合わせた事前投与が効果的。
- 獣医師と相談し、耐性リスクを抑えつつ計画的に。
- 飼料添加剤の活用
- プロバイオティクスや酵素製剤で腸内フローラを整備。
- 免疫力向上と同時に下痢症状の軽減を図る。

予防のカギは“4本柱”!環境・母牛・薬・栄養管理
4. 効果的な治療法と注意点
症状が現れた場合、以下の治療を獣医師の指導のもと迅速に開始します。
- サルファ剤投与
- 主にダイメトン、エクテシン等を10日間隔で再投与。
- 残存オーシストを繰り返し駆除。
- 対症療法
- 電解質輸液、下痢止め、抗生剤による二次感染予防。
- 重度脱水には静脈内輸液も検討。
- 群単位管理
- 感染牛の隔離飼育で集団拡散を防止。
- 同時に周囲の健常群にも予防投与を実施。
注意点:
- 長期の薬剤使用は耐性リスクを高めるため、必ず獣医師と相談のうえ行う。
- 治療だけでなく、同時に環境整備を徹底しないと再発を招く。

脱水には電解質補給が必須!

電解質にアクエリアスの粉を使う牧場もあるよ!
5. 経済的損失とコスト削減の工夫
コクシジウム症による経済的な影響は下記の通りです。
- 直接損失:子牛の死亡、治療費、労働コスト増加
- 間接損失:発育遅延による繁殖成績低下、出荷遅延による収益減
損失項目 | 影響度 | コスト削減策 |
---|---|---|
子牛の死亡 | 高 | 早期診断+隔離飼育 |
治療費 | 中 | 予防投与プログラムの事前計画 |
発育遅延 | 中~高 | 飼料添加剤+母牛免疫強化 |
繁殖成績低下 | 中 | 定期健診による健康管理 |
コスト削減のポイント
- 予防プログラムに初期投資を集中し、発症抑制による長期的なコスト削減を図る

予防に投資すれば、結果的に損しない
6. まとめ
- コクシジウム症の理解:Eimeria bovis/zuerniiが原因。オーシストの経口摂取で感染し、下痢や血便を引き起こす。
- 診断ポイント:糞便検査(浮遊集卵法)と日常的な臨床観察で早期発見。
- 予防の4本柱:
- 牛舎の定期消毒・敷料交換
- 分娩前の母牛駆虫と初乳管理
- 抗コクシジウム剤(バイコックス等)の計画的投与
- 飼料添加剤による腸内環境改善
- 治療のポイント:サルファ剤による再投与+電解質補給など対症療法。群単位での隔離管理で拡散防止。
- 経済的効果:予防プログラムへの投資が、子牛の死亡率低下・成長遅延回避に直結し、長期的なコスト削減を実現。
- 実践のコツ:獣医師と連携し、自社の設備・管理体制に合った対策を策定して継続的に評価・改善することが成功の鍵。
コクシジウム症は「発症してから」ではなく、「いかに発症させないか」が経営を左右する鍵です。日々の衛生管理、母牛の免疫強化、計画的な抗コクシジウム剤投与、そして早期診断・迅速治療。この4つを徹底すれば、子牛の健康を守りつつ、経済的損失を最小限に抑えられます。まずは獣医師と連携し、自社の現場に最適な予防プログラムを策定しましょう。

コクシジウム症対策は“現場の継続的な努力”がカギなんだね
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