乳牛の「どの個体を選ぶか」は、酪農経営の収益や持続可能性に直結します。米国農務省(USDA)が開発した**ネットメリット(Net Merit、NM$)**は、乳量や乳質だけでなく、健康・繁殖・飼料効率など多面的な特性を経済価値に換算し、「一生涯でどれだけ利益をもたらすか」を数値化する包括的な指標です。本記事では、2025年4月の最新版を踏まえつつ、NM$の基礎から日本での活用可能性まで、理解しやすいよう解説します。

「ネットメリット(NM$)」って何?→乳牛の“生涯収益力”を見える化する指標です!
1. NM$の概要と目的
- 定義:NM$は、乳量、乳脂肪量、乳タンパク質量、健康・繁殖特性、体型など12の特性を経済価値で重み付けし、合算した単一のスコア。
- 開発背景:1994年にUSDAのAnimal Genomics and Improvement Laboratoryが導入。以後、市場ニーズや飼養実態の変化を反映して定期的に改訂されている。
- 利用メリット:
- 経済的に「利益をもたらす」優良個体の選抜
- 遺伝的改良目標を一元管理
- 長期視点での繁殖・購入戦略の策定

アメリカ発の「NM$」は、健康・繁殖・乳成分までを含んだ、経営直結型の遺伝評価指標です。
2. 計算方法と2025年4月の改訂ポイント
NM$は、以下の5つのサブインデックスと各特性の経済価値を組み合わせて算出されます。2025年の改訂では、市場のバター需要や飼料コスト高騰に対応し、脂肪分や飼料効率の重みが見直されました。
特性 | 2021年の重み | 2025年の重み |
---|---|---|
乳脂肪(Fat) | 28.6% | 31.8% |
飼料節約(Feed Save) | 12.0% | 17.8% |
乳タンパク(Protein) | 19.6% | 13.0% |
生産寿命(HL) | 11.0% | 8.0% |
牛の生存率(CL) | 7.0% | 8.0% |
乳房形質(Udder) | 7.0% | 7.0% |
繁殖能力(PR) | 6.8% | 6.8% |
子牛の生存率(HLV) | 1.3% | 2.0% |
※HL…Herd Life(生産寿命)、CL…Cow Livability(牛の生存率)、PR…Pregnancy Rate(妊娠率)、HLV…Heifer Livability(子牛の生存率)

2025年NM$は、搾れる“量”よりも、残す“利益”を重視したスコアに進化しています。
3. NM$を使うメリット
- 利益最大化
- 高NM$牛は乳量・乳品質が優れ、治療コストや廃用率も低減。
- リスク軽減 & 持続可能性向上
- 健康関連特性を重視することで、乳房炎などの発症リスクを低減し、安定経営に貢献。
- 遺伝的改良の促進
- 短期・長期の改良目標を定量化し、交配プランを最適化。

NM$の高い牛は「乳量アップ+治療コスト減」で利益最大化に直結!
4. 日本での適用可能性
日本ではまだ総合的な指標は定着していませんが、以下のポイントは参考になります。
- 脂肪分・タンパク質重視:国内乳製品市場でも高品質乳への需要が根強い。
- 健康・繁殖管理:少頭数経営が多い日本では、個々の牛の健康維持が利益に直結。
- 小規模からの導入:まずは高NM$牛の導入事例を見学・検証し、自牧場向けの適用基準を作成するのがおすすめです。

国内市場は高品質乳製品へのニーズが高く、脂肪分・タンパク質を重視した牛選びがカギに。
5. 専門インデックスの活用例
- Cheese Merit (CM$):チーズ原料用途向けに特化
- Fluid Merit (FM$):飲用乳向け特化
- Grazing Merit (GM$):放牧酪農向け
日本のチーズ産業や地域特性に合わせ、CM$やFM$を参考にするとさらに精度の高い選抜が可能です。

用途別インデックスで経済価値を最大化しよう!
6. まとめ
ネットメリット(NM$)は、単に「乳量が多い牛」ではなく、**「経営に最も利益をもたらす牛」**を科学的・経済的に選別するツールです。2025年4月の改訂では、脂肪分と飼料効率の重視度がさらに高まり、現代の市場ニーズにマッチしています。日本の酪農経営にNM$の考え方を取り入れることで、収益性の向上と経営の安定化を同時に実現できる可能性があります。ぜひ自牧場の繁殖・購買戦略にお役立てください。

NM$は『経営利益最大化』を実現する最新の牛選抜指標!
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