2025年10月、ファームエイジ(北海道当別町)とGreen Carbon(東京都)が連携し、放牧酪農の環境価値を数値化してカーボンクレジット化するプロジェクトを開始しました。本記事では、AG-002に基づく算定の概要、J-クレジット登録までの流れ、酪農家が期待できる具体的な経済効果(飼料費削減+クレジット収入の試算例)を現場目線で丁寧に解説します。導入を検討する酪農家がまず押さえるべきポイントをわかりやすく整理しました。
放牧酪農とは──環境と品質に資する“自然循環型”経営
放牧酪農は、牛を広い草地で自由に過ごさせる飼養形態です。従来の屋内集約型と比べ、牧草が大気中のCO₂を吸収し土壌に炭素を貯留することで、農地全体がカーボンシンク(炭素の貯蔵庫)として機能します。また、牛の行動が自然に近くストレスが減ることで乳質が向上する傾向があり、飼料の自給率を高められれば飼料費の削減にもつながります。

カーボンクレジットの仕組み(酪農・放牧の場合)
本プロジェクトでは、放牧によって増加する土壌炭素や、飼養方法の改善によるメタン排出削減量を定量化し、クレジットとして登録・販売します。具体的には以下の流れです。
- 放牧導入・管理による温室効果ガス削減のデータ収集(牛の頭数、放牧期間、土壌試験など)
- Green Carbonの方法論(AG-002)に基づく算定と報告書作成
- J-クレジット等の認証機関へ登録・第三者検証を受ける
- 認証済みクレジットを市場で販売し、酪農家へ分配
重要なのは「削減量を確実に説明できること」。現場データを残し、第三者検証に耐えうる記録を作ることが最初のステップです。
AG-002とJ-クレジット──押さえるべきポイント
AG-002は農業分野向けの方法論で、土壌炭素貯留や農業活動による温室効果ガスの変化を評価する仕組みです。J-クレジットは日本で取引される公的認証枠組みで、認証されれば企業・自治体などが購入対象になります。農家は以下を準備してください。
- 現状の飼養データ(頭数、飼料構成、放牧面積、管理記録)
- 土壌分析・写真記録・現場メモ(時系列で保管)
- 外部事業者(例:Green Carbonや支援企業)との連携窓口
事務手続きや報告フォーマットは専門的ですが、支援事業者が申請から登録までをワンストップで補助するケースが増えています。
酪農家が得る具体的メリット(環境・経済・経営)
| 分野 | 期待できる効果 |
|---|---|
| 環境 | GHG削減の可視化・土壌保全・生物多様性の維持 |
| 経済 | 飼料費の削減(自給飼料化で30〜50%改善の目安)+クレジット収入 |
| 経営 | 持続可能性の向上・付加価値の強化(高品質ミルク市場での差別化) |
注:飼料費削減率やクレジット収入は牧場の規模・現状によって大きく異なります。計画時は必ず現地での収支シミュレーションを行ってください。
簡易・想定収益モデル(例)
以下はあくまで概算の試算例です。実際の収益はクレジット単価や導入コストで変動します。
| 項目 | 仮定値(年間) |
|---|---|
| 放牧牛頭数 | 30頭 |
| 飼料費削減(目安) | 年間20万円/頭 → 合計600万円削減 |
| クレジット収入(仮定) | 年間換算で合計50〜200万円(試算例) |
| 合計効果 | 飼料費削減+クレジットで年間650〜800万円の改善イメージ |
(繰り返し)上記はあくまで例示です。導入前の現地シミュレーションが必須です。
導入の流れ(農家向け・簡易チェックリスト)
- 現状調査:頭数・放牧面積・飼料構成を整理
- 支援事業者への相談(例:ファームエイジ)で導入可否や初期投資を確認
- AG-002に沿った計測・土壌試験の実施
- J-クレジット申請書類の作成と第三者検証
- クレジット販売と収益配分の実行
サポート窓口:ファームエイジ株式会社(TEL: 0133-22-3060)/Green Carbon(X: @GreenCarbon2019)
よくある質問(FAQ)
Q:誰でも参加できますか? A:放牧が可能な土地・管理体制が整っていれば参加を検討できます。支援事業者と相談して適合性を判断してください。 Q:初期コストは高いですか? A:電気柵設置・土壌試験・管理体制の見直しなど初期投資は発生します。補助金や支援プログラムを活用できる場合があります。 Q:クレジットはすぐに売れますか? A:認証後、市場での需要や単価に応じて販売します。長期の取引先を確保することが安定収入の鍵です。
まとめと今後の展望
- 放牧酪農は牧草による土壌炭素貯留や飼料自給でGHG削減とコスト削減の両面メリットがある。
- 本プロジェクトはGreen CarbonのAG-002を使い、放牧由来のCO₂削減量をJ-クレジットとして認証・販売する仕組みを提供する。
- 酪農家は現場データ(頭数・放牧日数・土壌試験など)を整備し、支援事業者と連携して申請・第三者検証を進める必要がある。
- 想定される経済効果は「飼料費削減+クレジット収入」で、牧場規模やクレジット単価により変動するため事前の収支シミュレーションが必須。
放牧酪農を通じたカーボンクレジット創出は、環境価値の可視化と酪農家の新たな収益源を同時に実現する有望なモデルです。ファームエイジとGreen Carbonの連携により、制度適合と現場導入の支援体制が整いつつあります。導入を検討する際は、まず現地データの整理と専門家による収支シミュレーションを行い、段階的な導入計画を立てることをおすすめします。
参考・お問い合わせ先:ファームエイジ株式会社(北海道当別町)、Green Carbon株式会社(東京都千代田区 / X: @GreenCarbon2019)。本記事は公開時点の情報に基づき作成しています。導入の際は必ず各社へ最新情報をご確認ください。
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