前回の母校紹介『神奈川県立相原高校畜産科学科の魅力 ~実践学習で未来の畜産スペシャリストへ~』に引き続き、今回も筆者の出身大学である『酪農学園大学』について、僕自身の体験も交えて紹介していきます。前回の記事について知りたい方はこちら
はじめに
「酪農学園大学」は、実践的な教育と最先端技術の融合により、次世代の酪農家や関連分野のプロフェッショナルを育成しています。この記事では、広大な135ha(東京ドーム28個分以上)のキャンパスと北海道の雄大な土地柄を活かした充実の学び、実際の現場での体験、そして卒業後の多彩なキャリアパスまで、筆者の経験も交えて余すところなくご紹介します。
教育プログラムとキャンパスライフ
段階的なカリキュラムで基礎から専門まで
酪農学園大学は、1年次から4年次までの段階的なカリキュラムにより、基礎知識の習得から現場で役立つ専門技術まで、体系的に学べる環境が整っています。
- 1年次:基盤教育
- 導入教育・健土健民入門実習:農業や食品加工の基礎を、未経験者でも安心して学べる講義。
- 幅広い科目:人文社会科学、自然科学、情報教育、外国語、保健体育など、多角的な視点を養成。
- 2年次:基盤教育・専門基礎教育
- 座学と現場体験の融合。夏休みの「20日間実習」では、北海道の様々な農家でホームステイで現場の実践的な農業を学ぶことができます。筆者は北海道中標津町にあるロボット搾乳と放牧を実施する先進的な牧場で、住み込みの実習を経験。
- 3・4年次:専門教育・専修教育
- 酪農学、畜産学、農学など、各専門コースに分かれ、現場で即戦力となるスキルを徹底的に磨きます。

広大なキャンパスの魅力
- 135haの広大な敷地
- キャンパスは東京ドーム28個分以上の広さを誇り、採草地、放牧地、実験牧場、食品加工施設など、実践的な学びの場が充実。
- 自然との距離感
- 直接牛や羊、馬に触れ、実際の飼育管理の現場を体験できる環境は、理論だけでなく実践力も鍛えます。
実践体験が生む成長と現場力
乳牛研究会でのリーダーシップ
私自身、2018年に指定校推薦で入学し、主に乳牛を飼育するサークル『乳牛研究会』に所属。会長としての経験は、実践的な指導力とチームワークの醸成に大きく寄与しました。

会長としての苦労と学び
- 技術・知識の差の克服
サークル内では、実家が酪農を営んでいる経験者や、農業高校出身者と、牛に触れるのが初めての一般高校出身者が混在していました。この環境下で、基礎知識の大切さを再認識し、座学と実践のバランスの重要性を感じました。 - 座学の力
現場での経験はもちろん大切ですが、牛の「なぜ?」を理解するためには、座学による理論知識が不可欠。たとえば、「牛の耳が垂れているのは病気のサイン」など、牛の些細な違いに気づける知識が、実際の飼育管理で大きな役割を果たしました。

やりがいを感じた瞬間
🐄 未経験者の成長エピソード
- 初めての哺乳体験
最初は「怖い」「できるかな?」と不安そうだった未経験者が、先輩の手本を見ながら実践するうちに、少しずつ自信をつけました。
そして、ある日、自ら「この子、体調悪そうです!」と牛の小さな変化に気づく瞬間があり、知識と実践が結びついた感動がありました。
🤝 サークルの一体感
- 協力と連携
酪農体験イベントや合宿では、経験者が未経験者を丁寧にフォローしながら、みんなで協力して作業を進めました。
その中で、自然と仲間意識やチームワークが生まれ、「もっと学びたい!」という熱意が共有された瞬間は、サークル活動の大きな魅力でした。酪農学園大学で行われる大学祭「白樺祭」にも屋台を出店しており、牛乳の魅力を伝えています。

授業外の実践活動:搾乳バイト
実際の現場で学ぶために、搾乳バイトにも取り組みました。
- 実務体験の充実
- 牛の搾乳作業、機械の操作、健康管理など、座学で学んだ知識を現場で応用。
- 実務を通して得た経験が、日々の業務の効率化とトラブルシューティングに大いに役立っています。
20日間実習で先進技術を体感
2年生の夏休みに実施される「20日間実習」では、住み込みで農家の現場を体験します。
- 実習先:北海道中標津町の先進的牧場
- ロボット搾乳システムと放牧を組み合わせた牧場で、放牧で『飼料費』や『治療費』などの支出を抑えつつ、ロボット搾乳で効率的に最大限の収入を実現していました。
- 学びのポイント
- 自動化された搾乳システムの仕組み、牛の健康管理、経営戦略など、最新技術と伝統的な飼育管理の双方を学びました。
専門知識の習得と卒業論文
家畜人工授精師の資格取得授業
酪農学園大学では、家畜人工授精師の資格取得を目指す授業があり、実践的な内容が魅力です。
- 授業で学んだ内容
- 受精のメカニズム、繁殖生理、精液の取り扱い、発情の見極めなどを詳細に学習。
- 感動の体験
- 自分が受精させた牛が子牛を産んだ瞬間は、学びの成果を実感する感動的な瞬間であり、現在の現場での判断力と技術の向上に大いに貢献しています。
卒業論文:「放牧草地の放牧時延べ体重に基づく施肥適量」
「草地・飼料生産学研究室」に所属し、卒業論文では放牧草地の管理に焦点を当てた研究に取り組みました。
- 研究テーマの概要
- 放牧中の延べ体重データを基に、最適な施肥量を算出することで、草地の生産性向上と健康管理を両立させる手法を検証。
- 現場での応用
- この研究成果は、実際の放牧管理において環境負荷を抑えつつ、効率的な飼料生産を実現するための貴重な基礎データとなっており、後輩に受け継がれる研究の大きな基礎になっています。

卒業後のキャリアと進路
多様な就職先とキャリア形成
酪農学園大学での実践教育と専門知識は、卒業後の幅広いキャリアパスを可能にします。
- 酪農家・牧場従業員としての活躍
- 酪農後継者は実家の牧場を引き継ぎ、他にも牧場の従業員として現場で活躍中。
- 乳業関連企業・飼料会社
- 明治、雪印メグミルク、NOSAI、フィードワン、丹波屋、野沢組、ジェネティクス北海道などで、研究、営業、品質管理、商品開発、飼料設計等に従事する卒業生も多数。
- 酪農ヘルパー
- 酪農家が休暇を取るために代わりに酪農作業を行う職業でも活躍中。将来、自分の牧場をもつ『新規就農』を目指す人も多数います。
- 行政・JA・教育分野への進出
- 農業関連の公務員、JA職員、ホクレンさらには教育現場で次世代の育成に貢献する進路も選ばれています。
大学卒業後の進路について詳しく知りたい方はこちらの記事をチェック。
サークルで培ったリーダーシップの活用
乳牛研究会での会長経験は、社会人になった現在でも現場での指導力とチームワークの基盤となっています。
- 新入社員への丁寧な指導
- 牧場の農場長となり新入社員への指導を担う立場になった今でもサークルでの経験が活きています。具体的には座学と実践指導法で、新入社員もスムーズに業務を習得してもらうことができています。
- チーム全体の連携強化
- サークル時代に育んだ仲間意識が、現在の農場運営においても大きな強みとなっています。

北海道の雄大な大地で学ぼう!
まとめ
酪農学園大学は、広大なキャンパスと充実した教育プログラム、そして実践的な現場体験を通じ、次世代の酪農家および関連分野のプロフェッショナルを育成する理想の学び舎です。
基礎教育から専門教育、搾乳バイト、20日間実習、家畜人工授精師の実技授業、卒業論文での先進研究など、実際の現場で得られる豊富な経験は、卒業後の多様なキャリアパスへと直結しています。
この記事が、酪農学園大学への進学や酪農関係に就職を検討する皆さんの参考となり、未来への一歩を踏み出す手助けとなれば幸いです。ぜひコメントやご質問をお寄せください!
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