持続可能な酪農経営を目指す皆さん、夏場の受胎率低下に悩んでいませんか?
実は、人工授精(AI)では猛暑期に20~30%まで受胎率が落ち込む一方で、**ET(受精卵移植)**では50~60%もの高い受胎率を維持できる事例が多く報告されています。本記事では、ETの基礎から導入ステップ、費用・設備、成功率データまでを初心者にもわかりやすく解説します。

牛さん
夏場の受胎率低下に悩んでいるなら、**ET(受精卵移植)**が救世主かも!受胎率50~60%を実現する方法を紹介します!
1. 酪農におけるET(受精卵移植)とは?
- ET(Embryo Transfer):優良な和牛の受精卵をあらかじめ採卵・培養したうえで、乳牛(レシピエント)に移植し繁殖させる技術(優良なホルスタインの受精卵を移植することもあります)。
- 目的:繁殖能力の優れた乳牛を借り腹に用い、高品質な和牛子牛を効率的かつ短期間で増やすこと。
- 国内普及:1990年代から急速に導入が進み、2018年には47,080頭のET子牛(総子牛の9.7%)が誕生※2018年統計データより。
ET導入で「暑熱による受胎率低下を回避」「高遺伝価の子牛を安定供給」など、経営安定化の切り札として注目されています。

牛さん
ET技術の導入で、暑い時期でも高受胎率をキープできるのは大きなメリットだな。

2. 夏にAIよりETが有利な理由
- 排卵・受精プロセスのバイパス
すでに受精・初期発育済みの胚を移植するため、暑熱ストレスによる卵胞発育不良や排卵異常を回避。 - 高品質な胚の利用
涼しい季節に採卵・凍結保存した胚を活用し、夏場でも着床までの環境を最適化。 - シンクロETとの連携
発情同期プログラムと併用し、複数頭をまとめて同時移植。繁殖管理の効率化と人件費削減に貢献。
現場データ例
- AI受胎率:夏場20~30%
- ET受胎率:夏場50~60%
(北海道・九州の複数牧場報告より)

牛さん
暑さでAIがダメでもETなら大丈夫! 受精済みの胚を使うから安心♪
3. ETの技術概要
フェーズ | 主な技術・処理内容 |
---|---|
過剰排卵 | FSH・P4プロトコールで多数の卵胞誘導 |
採卵 | 非外科的ランジング法(Ovum pick-up) |
受精・培養 | 体外受精(IVF)または卵管内受精法 |
凍結保存 | ストロー凍結・ガラス化凍結技術 |
発情同期 | PGF₂α+P₄プロトコールでレシピエント同期 |
移植 | 超音波ガイド下で子宮内腔に胚を定置 |
- ゲノム育種価選抜:JA全農などが提供するゲノム情報をもとに、乳検成績や系統を分析して最適なドナーを選定。
- VET System/Next-Gen ET:凍結融解時のダメージ低減技術や、高通過率培地の開発が進行中。

牛さん
ドナー選定もゲノム時代へ! 育種価から最適牛をピックアップ🐄

4. 成功率・最新統計データ
年度 | ET子牛生産頭数 | 総子牛に占める割合 | 推定移植数 | 国内主要施設生産受精卵数 |
---|---|---|---|---|
1990 | 2,122頭 | 1.2% | 1,000頭 | — |
2000 | 15,907頭 | 4.5% | 5,200頭 | — |
2018 | 47,080頭 | 9.7% | 11,000頭 | S_ET:14,000個 / JA全農:25,500個 |
- 移植成功率:現在60%以上、70%を目標に研究が進む。
- 地域シェア:受精卵の61%が北海道で生産、全体の33%をETで賄う計画あり。

牛さん
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5. 主な施設・導入事例
1)Sabae ET Center(S_ET)
- 年間受精卵生産:約14,000個
- 管理ドナー:500頭超、レシピエント:1,200頭以上
- 敷地:40ha、牛群規模:1,700頭
2)JA全農 ET研究所
- 年間受精卵生産:25,500個
- 移植妊娠牛供給:1,100頭
- 北海道生産比率:61%
導入牧場の声:
「夏場でも受胎率が安定し、和牛子牛販売で大幅に収益アップしました!」

牛さん
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6. コスト・設備のポイント
項目 | コスト目安 | 備考 |
---|---|---|
採卵機器(OPU) | 約200~300万円 | 初期投資。共同所有も検討可。 |
凍結庫 | 約50~100万円 | 個別ストロー管理が必須。 |
超音波診断装置 | 約100~150万円 | 発情同期+移植確度向上に必須。 |
薬剤・培地費用 | 移植1回あたり3~5万円 | FSH・PGF₂α・培地含む。 |
- ランニングコストの抑制策:他牧場・JAと連携し、グループ購入や共同施設化を活用。
- 補助金・助成金:各都府県の農政局が実施する畜産高度技術導入支援事業をチェック。

牛さん
初期費用は確かに高いけど、将来の利益を考えたらむしろ“安い投資”かも!
7. ET導入のステップ
- 情報収集・研修参加
- JA全農「繁殖義塾」など専門講座を受講。
- ドナー/レシピエント選定
- 遺伝価・体格・採卵履歴をチェック。
- 設備導入・スタッフ育成
- 採卵機器、凍結庫、超音波装置を整備。
- プロトコール設定
- FSH/P₄プロトコール、同期化スケジュール作成。
- 採卵・受精・凍結
- 春・秋の気温適期に集中的に採卵。
- 発情同期&移植実施
- 夏季は特にシンクロETをフル活用。
- フォローアップ管理
- 超音波検診、栄養・飼養管理を徹底。

牛さん
移植して終わりじゃない!妊娠維持には“その後のフォロー”がとっても重要です
8. 注意点と課題
- 胚質のブレ:凍結融解によるダメージ。
- 個体差:過剰排卵の反応性が牛ごとに異なる。
- 管理負荷:高度技術導入で人材育成が必須。
- 法令遵守:動物衛生管理や畜産クラスター整備規準を確認。

牛さん
胚質のブレに要注意!凍結融解時のダメージが影響を与えることも!
9. まとめと次のステップ
- ETは夏場の受胎率低下を回避する最強の繁殖戦略。
- 高品質な和牛子牛の安定供給と酪農家の収益向上に直結。
- 導入コストはかかるが、共同化や補助金利用で負担軽減可能。
- まずはJA全農の研修参加や地域JA・専門家によるヒアリングからスタートを!

牛さん
暑い季節でも安定した受胎率を誇るET。これからの繁殖シーズンに向けて、効果的な対策が立てられる!
夏の暑さ対策に必須な知識『THI』についてはこちらの記事から
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