2025年12月17日、網走の楠目牧場が事業を停止し、長年地域で親しまれてきた「オホーツクあばしり牛乳」の生産・販売が終了しました。本記事では停止の経緯と影響、低温殺菌にこだわった牛乳の特長、地元店舗や観光への影響、そして今後の代替策までを現地ソースと公的資料をもとに分かりやすく整理します。
1. 結論:何が起きたのか(要点)
楠目牧場(運営:楠目俊政さん)が2025年12月17日に事業停止を発表しました。これに伴い、牧場が運営していたマイクロプラントで製造していた「オホーツクあばしり牛乳」は生産・販売が終了しています。事業停止の直接的理由は運営者の体調不良と後継者不在とされています。
2. あばしり牛乳の「品質」と製法(酪農家の視点)
「オホーツクあばしり牛乳」は、牧場で搾った生乳をその日のうちに低温で処理するマイクロプラント方式が特徴です。具体的には65℃で30分間の低温殺菌(パスチャライゼーション)を行い、熱変性を抑えて牛乳の自然な甘みと風味を残す作り方でした。これにより、市販の超高温瞬間殺菌(UHT)製品とは異なる“風味”が支持されてきました。
3. 地域・流通への短期的影響
楠目牧場のプラントは紙パック充填設備を持つ数少ない施設の一つだったため、委託製造を頼っていた近隣商品の供給も難しくなりました。結果として、地元のホテルやカフェ、菓子店などで「あばしり牛乳」の提供終了が相次いでいます(例:流氷硝子館、地元食堂の告知など)。納品分が無くなり次第、提供終了という形を取る店舗が多く見られます。
実店舗・観光面での具体例
- 観光向けカフェでのソフトクリーム提供終了(在庫のみで終了)
- ホテルの朝食メニューの牛乳差し替え(地元ブランド消失の実例)
- 製造委託を受けていた地域ブランド牛乳の販売休止(横連鎖)
4. 背景:なぜ地域ブランド牛乳が続けにくくなっているのか
主要因は三つです。第一に後継者不足で経営を継ぐ人がいないこと。第二に資材・エネルギーコストの上昇や流通コスト増。第三に少量多品種生産を支える充填設備・検査体制の維持が難しいことです。こうした構造的な課題は北海道内の多くの小規模酪農に共通しており、今回の事例はその縮図と言えます。
5. 消費者・地元の反応(SNSと現地告知)
XやInstagramなどでは「ショック」「地域の宝がなくなる」といった感想が多数投稿されています。地元施設の公式告知には「残念であるが理解する」といった慎重な惜別コメントが並び、地域の喪失感は小さくありません。これらの声は観光資源としての牛乳ブランドの価値を示しています。
6. 現実的な代替策と短中期のアクションプラン
以下は現場経験に基づく実務的な選択肢です。地域と自治体、民間の協力で実行可能なものから並べます。
- 在庫・最終販売の透明化:残りの紙パックの在庫情報を店舗・観光施設と共有し、「購入できる場所」を一元化する(短期)。
- 共同充填の検討:近隣の充填設備を持つ事業者と提携し、少量分の再委託を模索する(中期)。
- 共同ブランド化・協同組合の形態:複数牧場で生乳を集約し、共同でミルクプラントを維持する方式(中長期)。
- 自治体の後継者支援策活用:補助金・研修・設備投資支援を活用し若手酪農の参入を促す(中長期)。
7. まとめ
- 要点:楠目牧場は2025年12月17日に事業停止。あばしり牛乳の生産・販売は終了。
- 牛乳の特徴:65℃30分の低温殺菌で風味を残すマイクロプラント方式(高品質だが少量生産)。
- 地域影響:ホテル・カフェ・菓子店等での提供終了、委託製造品も停止(地域ブランドの喪失)。
- 背景要因:後継者不足・資材高騰・小規模プラント維持の困難(北海道全体の構造問題)。
- 施策案(短期):残り在庫の扱い情報・扱い店リスト化、観光客向け代替商品の紹介。(中長期):共同配送や共同充填の検討、地域外企業との提携、後継者支援の公的制度活用提案。
楠目牧場の事業停止は「1つの生産者の終わり」ではなく、地域資源の喪失を意味します。牛乳は単なる食品以上に観光資源や地域文化を支えています。短期的には在庫情報の周知や代替商品の案内が必要です。中長期的には共同化や公的支援を通じた持続可能な仕組み作りが欠かせません。失われた“味”をどう守るかは、地域全体の挑戦です。
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