乳牛の健康と乳量を最大化するためには、「粗タンパク質(CP)」の管理が欠かせません。本記事では、CPの基本から、乳期ステージ別の推奨レベル、高CP飼料源、子牛への給餌ポイントまで、わかりやすく解説します。

乳牛の健康と乳量を最大化するためには、CP(粗タンパク質)の管理が不可欠
1. 粗タンパク質(CP)とは?―まずは基本を押さえよう
粗タンパク質(CP, Crude Protein)
- 飼料中の窒素量 × 6.25 で算出
- 真のタンパク質(アミノ酸)+非タンパク質窒素(NPN)を含む
- ルーメン内の微生物が分解し、微生物たんぱく質やエネルギー源に変換
ポイント:CPは「乳量」「繁殖」「成長」などの代謝機能を支える必須栄養素。過不足が乳牛のパフォーマンスや健康に直結します。

微生物がCPを分解し、エネルギー源や微生物たんぱく質に変える。このプロセスを理解することで、乳牛の栄養状態が見えてきます。

2. 乳期ステージ別・CP推奨レベルと管理のコツ
乳期ステージ | 推奨CP含有率(%) | 目的・効果 |
---|---|---|
早乳期(Early) | 16–18 | 乳量維持とエネルギー回復 |
中乳期(Mid) | 14–16 | 安定した乳生産 |
遅乳期(Late) | 12–14 | 体調維持・次期乾乳期への準備 |
乾乳期(Dry) | 10–12 | 休養期間の体調管理 |
- 過剰CPのリスク:過剰な分解性タンパク質(DIP)がアンモニア過多を招き、尿中窒素排泄や肝臓負担、乳質低下につながる可能性
- CP不足のリスク:ルーメン微生物量減少→繊維消化率・乾物摂取量低下→乳量減少、体重減少

過剰CPはアンモニアを引き起こし、尿中の窒素排泄が増え、乳質や肝臓に負担をかけることに。適正CPの管理でリスクを減らしましょう。
3. 豆科牧草から大豆副産物まで──CP豊富な飼料源一覧
乳期ごとにCPレベルを調整する際、以下の飼料源をうまく組み合わせましょう。
3-1. 豆科牧草(ルーサン/アルファルファ)
- CP含量:20~25%
- 特徴:根粒菌による窒素固定で安定的に高CPを供給
- ▶️ 豆科牧草の窒素固定とCPについて詳しくはこちら

豆科牧草はCP供給の頼もしい味方!
3-2. 圧搾大豆(ソイミール)
- CP含量:44~48%
- 特徴:大豆油搾り粕/ルーメン分解性良好 → 微生物合成を強力サポート

圧搾大豆(ソイミール)はルーメン内で素早く分解され、微生物合成を強力にサポート。
3-3. おから
- CP含量:20~25%
- 特徴:安価で入手しやすく、発酵サイレージ材として混合利用に最適

廃棄されがちな食品製造副産物を利用することで、SDGsに配慮した資料になります。
4. DIPとUIPのバランス調整で効率アップ
- DIP(分解性タンパク質):ルーメン微生物のエネルギー源 → 過剰はアンモニア蓄積
- UIP(非分解性タンパク質):第四胃以降で消化 → 直接アミノ酸供給源
ルーメンpHやNFC(非繊維性炭水化物)とのバランスを分析しながら配合設計(TMR)を行うことで、効率的なCP利用を実現できます。

ルーメン微生物のエネルギー源となるDIPは重要ですが、過剰にならないよう注意が必要。UIPは直接アミノ酸を供給し、効率的に利用できる栄養源となります。
5. 子牛期のCP管理:アルファルファサイレージ活用法
子牛には柔らかくて消化しやすい高CP飼料がおすすめ。
- アルファルファサイレージCP約18~20%
- メリット
- ルーメン発達促進 → 早期乾草摂取開始
- 筋肉・骨格・免疫系の成長サポート
注意点:過剰CPは子牛の窒素負荷に。乾物摂取量(DMI)や粗飼料とのバランスを随時チェック!

成長期の子牛には、筋肉・骨格・免疫機能の形成に必要なCPをしっかり補給。アルファルファなら自然にカバーできます。
6. 実践例:当牧場でのCP管理フロー
- 原料分析:定期的に飼料成分表を更新(CP/NFC/繊維質)
- 乳期別TMR設計:乳量・体重・BSCをモニタリングし、CP含量を調整
- 環境負荷低減:低CPダイエット(14–15%)で窒素損失削減と高乳量両立
- データ記録:乳量・乳成分・体調データをスプレッドシートで管理 → PDCAサイクルを回す

乳期別にTMRを柔軟設計!
7. よくある質問(FAQ)
Q1. CPを14%以下にしても本当に乳量は落ちないの?
- A. 飼料のアミノ酸バランスが良好なら14–15%で高乳量(41kg以上)も可能。ただし、12%以下はリスク大。
Q2. 夏場の乾草不足時、どう調整すれば?
- A. おからや圧搾大豆を増量し、NFCとの比も調整。発酵飼料の水分管理も忘れずに。

タンパク質だけでなくNFCや繊維質との“全体設計”がカギです。
8. まとめと次のステップ
- 粗タンパク質(CP)は乳量・健康・環境負荷に直結する重要要素
- 乳期ステージ別に16–18%→14–16%→12–14%→10–12%を目安に調整
- 豆科牧草からおから・ソイミールまで、多様な高CP飼料源をバランスよく組み合わせ
- 子牛にはアルファルファサイレージで早期ルーメン発達と成長促進
- 定期的なデータ記録とPDCAで、持続的な改善サイクルを回そう

CPは“量”だけでなく“質”と“バランス”が重要。乳牛のステージに応じて、最適な配合を意識していきましょう。
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