GnRHとは?|乳牛の発情同期と人工授精成功率を高める方法

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GnRHとは?|アイキャッチ画像 酪農
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はじめに

乳牛の繁殖管理において、GnRH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)を用いた発情同期化プログラムは、AI(人工授精)の成功率向上と繁殖スケジュールの効率化に不可欠です。特に近年、乳量増加によって発情兆候の検出が難しくなった現場では、発情観察に頼らず確実に受精を行える「Ovsynch」や「Wシンク」が注目を集めています。本記事では、GnRHの基礎知識から代表的プログラム、当牧場で実践しているWシンクの手順と利点、さらにAI成功率を最大化するためのポイントまで、専門的に解説します。

牛さん
牛さん

GnRH投与発情同期化を実現!発情観察が難しい現場でも受精成功率アップ!


1. GnRHとは?──繁殖サイクルの“司令塔”

  • 定義GnRH(Gonadotropin-Releasing Hormone)は視床下部から分泌され、下垂体に働きかけてFSH(卵胞刺激ホルモン)LH(黄体形成ホルモン)の分泌を促進するペプチドホルモンです。
  • 役割FSHで卵胞発育を、LHで排卵と黄体形成を制御し、乳牛の発情サイクルを調整。
  • 特徴:パルス性分泌によりホルモンバランスを動的に保つため、外部からのGnRH投与は同期化や排卵誘起に非常に効果的。
牛さん
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GnRHは発情サイクルをコントロールする司令塔ホルモン

GnRHの役割と乳牛の繁殖サイクル調整

2. 発情同期化プログラムの比較

プログラム名Day 0Day 7 or Day 9Day 9 or AI初産牛妊娠率経産牛妊娠率コメント
OvsynchGnRH投与Day 7:PGF₂α投与Day 9:GnRH投与 → AI約40%約40%発情観察不要、大規模牧場向き
Presynch-14-12-OVPGF₂α×2回(14日隔)Day 0:GnRH投与Day 9:GnRH→AI40.5%31.2%事前PGF₂αで同期精度向上
Double OvsynchOvsynchを2サイクル最終GnRH→AI52.5%40.3%初産牛に特に効果的、repeat breeder向け
ダブルオブシンク(当牧場実践)Day 0:PGF₂α投与Day 2:GnRH投与Day 11:GnRH投与→TAI約45%*約42%*AI日程を固定(TAI)、発情検出不要で組みやすい

※当牧場の実績値。繁殖環境や牛群によって変動します。

牛さん
牛さん

自分の牧場にあった方法を探そう!


3. 当牧場で実践中:ダブルオブシンク手順とメリット

3.1 ダブルオブシンク手順(定時AI:TAI)

  1. Day 0:PGF₂α投与(黄体退行)
  2. Day 2:GnRH投与(新規卵胞の優位化)
  3. Day 9:PGF₂α投与(再度黄体退行)
  4. Day 10:再度PGF₂α投与(同期度の向上)
  5. Day 11 18:00:GnRH投与(排卵誘起)
  6. Day 12:定時人工授精(TAI)
牛さん
牛さん

PGは流産のリスクがあるので、牛を間違えないようにしよう!

ダブルオブシンクの日程

3.2 ダブルオブシンクの強み

  • AI日程の固定化:TAIにより繁殖スケジュールが厳密に組め、スタッフの労務計画や資源配分が容易に。
  • 発情検出不要:乳量増加で発情サインが弱い牛でも、確実に同期後の排卵→受精を実現。
  • 再不受胎牛への対応:repeat breederに対しても、GnRH二重投与が有効で妊娠率10~15%向上が報告されています。
牛さん
牛さん

注射する本数が多いので、それが手間でなければおすすめだよ!


4. AI成功率を高める実践的ポイント

  • 投与タイミング厳守:全ステップの時刻を守ることでホルモン反応を最大化。特にGnRHからTAIまでの16~20時間は精度が命。
  • 牛群の健康管理:体調やBCSを把握し、低採食・低体重減少群はプログラム前に調整。
  • 獣医師との連携:薬剤選択(Fertagyl, Cystorelin, Gonasynなど)や投与量を定期的に見直し。
  • データ記録と解析:各牛の投与履歴、妊娠判定結果をExcelや専用ソフトで管理し、PDCAサイクルを回す。
牛さん
牛さん

健康な体調で、より高いAI成功率を狙おう!


5. よくある質問(FAQ)

Q1. WシンクとOvsynch、どちらを選ぶべき?

  • 発情検出に自信があり、シンプルな運用を好むならOvsynch。日程固定と同期精度重視ならWシンクを推奨。

Q2. GnRH投与量や投与経路は?

  • 製品によるが、50–100µgのゴナドレリンを筋肉内または静脈内投与。必ず製品添付文書と獣医師指示に従うこと。

Q3. プログラム失敗時の対処法は?

  • 発情未発現や黄体退行不全が疑われる場合、追加のPGF₂α投与やトランスバルバス超音波検査で卵巣状態を確認。

6. まとめと次のステップ

GnRHを核とした発情同期化プログラム(Ovsynch・Wシンク)は、現代酪農の繁殖管理において欠かせないツールです。当牧場でのWシンク導入例のように、「AI日程固定」「発情検出不要」というメリットを活かし、AI成功率を安定的に40%以上に維持できます。最適なプログラム選択と投与タイミングの徹底、獣医師との連携、データ活用で繁殖成績をさらに向上させましょう

牛さん
牛さん

発情検出不要AI日程固定で、成功率40%以上を安定維持!

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この記事を書いた人

神奈川県横浜市の非農家に生まれる。実家では犬を飼っており、犬部のある神奈川県立相原高校畜産科学科に進学。同級生に牛部に誘われ、畜産部牛プロジェクトに入部。牛と出会う。

大学は北海道の酪農学園大学に進学。サークルの乳牛研究会にて会長を務める。

今年で酪農歴10年!現在は関西の牧場にて乳肉兼業農場の農場長として働いています。

毎日牛乳1L飲んでます!

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