「ジャージー牛」の魅力を、歴史から最新データ、日本国内の飼育事情、さらにジェラートやチーズなどへの6次産業化ノウハウまで一挙に解説します。高脂肪分を活かした乳製品づくりを検討中の方や、蒜山高原をはじめとする日本のジャージー牛事情を知りたい方に最適の情報をお届け。この記事を読めば、ジャージー牛の導入メリットや飼育ポイント、健康効果までしっかり理解でき、あなたの酪農経営や自家製乳製品プロジェクトがより成功に近づきます。

乳脂肪分がホルスタインより約1.5倍!バターやチーズやジェラートに最適!
1. ジャージー牛の起源と歴史
- 誕生の地:イギリス海峡のジャージー島
- 誕生時期:17世紀後半(1700年ごろ)から独立した品種
- 祖先:ノルマンディー地方の牛がベースとされる
- 純血保持の歴史
- 1789年~2008年まで、ジャージー島への外部牛導入が禁止
- 約220年間にわたり純血を維持
- 19世紀にはアメリカへ1,000頭以上の輸出実績
- 現在の管理団体
- Royal Jersey Agricultural & Horticultural Society(RJAHS)が年2回のショーを開催
- 世界中の登録頭数は2024年時点で約50万頭以上(アメリカ、ニュージーランド、デンマークなどで飼育)

イギリス海峡のジャージー島!17世紀末から続く由緒ある品種なんだよ。

歴史的エピソード
- 1860年:1860年代には年間1,138頭をアメリカへ輸出し、酪農技術の発展に寄与
- 2022年:ジャージー島のWoodlands Farmでウイルスによる牛の大量死(約112~132頭)事故が発生。回復には約7年を要すると報じられ、品種の病気耐性や回復力が改めて注目された

アメリカへの輸出でジャージー牛の濃厚なミルクが広まったのは、まさに乳牛史のターニングポイント!
(出典例)
- Wikipedia – Jersey cattle
- RJAHS公式サイト
2. ジャージー牛の外見的特徴と性格
2-1. 体格と毛色
- 体重:約400~450kg
- 大型乳牛(ホルスタイン等)に比べ、小柄でコンパクト
- 毛色:淡褐色~濃褐色のグラデーションがあり、顔周りに明るい帯が入る個体も多い
- 特徴的な外見:
- 大きくクリっとした目
- 長いまつ毛
- 黒い蹄と尾の先端

あのクリクリした目と長いまつ毛…まるでアイドルみたい!ジャージー種って本当に可愛い♡

2-2. 性格
- メス(乳牛)
- 温厚で人懐っこく、初めて牛と触れ合う初心者や子どもでも扱いやすい
- 雄牛(種雄牛)
- 18ヶ月を過ぎると予測不能な行動を示す個体があるため、取り扱いには注意が必要

温厚なメスでも、オスは別モノ。18ヶ月を過ぎた種雄牛は注意が必要だよ!
2-3. 気候適応性
- 耐熱性に優れる
- ジャージー島は北緯49度に位置するが、温暖な暖流(湾流)の影響で比較的温暖
- 元来、ヨーロッパ暖流の地域で育ったため、ホルスタイン以上に暑さに強い性質を持つ
- 日本の高温多湿な夏でも「ホルスタインだけでは乳脂肪が低下しやすい」場面で、ジャージーを混飼することで乳質を安定化しやすい
- 放牧効率が高い
- 密集放牧や冷涼地でも良好に機能し、体重1ポンドあたりの乳生産効率が他品種を上回る(Oklahoma State University – Jersey Cattle)

ホルスタインの乳脂肪が落ちやすい夏に、ジャージーを混ぜると乳質が安定しやすいんだって!
(出典例)
- American Dairy Association Northeast – Jersey Cow Facts
- Oklahoma State University – Jersey Cattle Adaptability

3. ジャージー牛の乳の栄養価・成分特徴
ジャージー牛乳は、ホルスタイン牛乳に比べて以下のように優れた栄養組成を持っています。
成分 | ジャージー牛乳 | ホルスタイン牛乳(目安) | 増減率 |
---|---|---|---|
乳脂肪分(バターファット) | 約5.08%(2024年平均) | 約4.2% | +約20% |
タンパク質 | 約3.77%(2024年平均) | 約3.2% | +約18% |
カルシウム | ジャージー:高濃度 | ホルスタイン:基準値 | +約20% |
ベータカロチン | 高含有(乳に黄色味を帯びる) | ほとんど含まれない | 大幅↑ |
ビタミンB12 | 多く含有 | 含有 | +α |
A2ベータカゼイン | 高含有率(消化性向上) | 通常A1タンパク主体 | +α |
- 2024年実績(主要数値)
- 乳量(成熟相当)……20,719ポンド(実績18,572ポンド)
- 脂肪量……1,053ポンド(実績944ポンド)
- タンパク質量……781ポンド(実績697ポンド)
- チーズ生産量……2,671ポンド(実績2,386ポンド)
- ECM(エネルギー補正乳)……26,386ポンド(実績23,630ポンド)
- 2023年比:乳量+170ポンド、脂肪量+21ポンド、タンパク質量+8ポンド、チーズ生産量+32ポンド
- 【2030年予測】乳量21,328ポンド(実績19,280ポンド相当)、脂肪量1,093ポンド(5.12%)、タンパク質817ポンド(3.83%)など
これらの高い乳成分は、バター、チーズ、ヨーグルトなどの乳製品を製造する際に特に重宝されます。
濃厚な味わいとリッチな口当たりを実現できるため、付加価値の高い加工品への活用が進んでいます。

この黄色っぽい色が濃さの証!ベータカロチンたっぷりのジャージー牛乳、栄養満点♪
(出典例)
- USJersey Journal – Jersey Breed Reaches New Levels of Production in 2024
- Britannica – Jersey breed of cattle

4. 日本におけるジャージー牛飼育事情
4-1. 日本最大の飼育地域「蒜山高原(岡山県真庭市)」
- 蒜山高原の気候・環境
- 標高約500~600mの冷涼な高原地帯
- 夏でも比較的涼しく、ジャージー牛の能力を最大限に引き出しやすい
- 広大な牧草地と清らかな水源に恵まれ、良質な乳生産が可能
- 蒜山ジャージーブランド
- 地元の酪農家や自治体が連携して「蒜山ジャージーブランド」を形成
- ジャージー牛乳・ヨーグルト・チーズ・ソフトクリームなど多彩な加工品を開発
- 観光資源としての牧場体験や乳搾り体験プログラムも充実し、地域振興に貢献
- 主な商品例
- 蒜山ジャージーヨーグルト(濃厚な味わいとクリーミーな舌触りが特徴)
- 蒜山ジャージーチーズ(ベータカロチン由来の風味とまろやかさが好評)
- 蒜山ソフトクリーム(ジャージー牛乳使用でコク深い味わい)

冷涼な気候×豊かな牧草地=ジャージー牛が元気に育つ理由がここにある
4-2. 白木牧場の特別牛乳
- 白木牧場の特別牛乳
白木牧場では、衛生管理を徹底し、厚生労働省令で定める『特別牛乳搾取処理業の許可』を受けた施設でのみ販売されているジャージー牛100%の「特別牛乳」をオンラインおよび直売所で販売しています。濃厚なコクと甘みが特徴で、一般的な牛乳とは一線を画す風味が楽しめると評判です。

厚労省認可の“特別牛乳”って、めちゃくちゃ厳しい衛生基準をクリアしてるんだって!
詳しい情報は▼こちらの記事をご覧ください。
4-2. その他の地域動向
- 北海道、長野県、新潟県など冷涼地でもジャージー飼育が増加
- 高温多湿な九州南部・沖縄でも、耐熱性を活かして導入検討が進む
- 都市近郊の酪農体験ファームで「小柄で可愛らしい見た目」が子どもや観光客に人気

暑さに強いから、九州や沖縄でも導入が進んでるよ!
(出典例)
- Visit Japan Streams – 蒜山ジャージー地域情報
- 各県の酪農試験場・農業改良普及センター報告
5. 混飼による乳質安定化の実際(当牧場の取り組み)
5-1. 日本の牛乳成分基準:「乳等命令」による規格
日本の牛乳は、食品衛生法に基づく「乳及び乳製品の成分規格等に関する命令(乳等命令)」で以下の成分基準が定められています。
- 乳脂肪分:3.0%以上
- 無脂乳固形分(SNF:Skim Milk Solids):8.0%以上
ホルスタインは年間平均乳量が多いものの、特に夏場には乳脂肪分が3.0%を下回る傾向があります。そのため、乳脂肪分を補う目的でジャージーを数頭混飼する牧場が増えています。

日本の牛乳は“乳脂肪3.0%以上・無脂乳固形分8.0%以上”が基本だよ!
5-2. 当牧場の事例
- ホルスタイン頭数:117頭
- ジャージー頭数:3頭
- 導入理由:乳脂肪分が不足しがちな時期(梅雨~夏場)に、乳脂肪分とタンパク質を一定水準以上に維持
- 具体的効果:
- 乳脂肪分:年間平均4.2%→4.5%に向上
- ジェラートやチーズ製造時の風味向上・生産効率アップ
- 加工品における高付加価値化(ジェラートのリピーター増加)

梅雨~夏の乳脂肪低下、ジャージーがカバーしてくれる!
5-3. 混飼導入時のポイント
- 飼養管理環境の整備
- ジャージーはホルスタインよりも小柄であるため、餌効率や飼養スペースを再検討
- 夏場は遮光設備・適度な給水システムを用意し、ストレスを軽減
- 生乳集乳・分別管理
- ジャージー乳は成分が高いため、ホルスタイン乳との混合時期や比率を明確化
- 加工品(ジェラート・チーズ)用途に応じて、専用のタンク・ミキシングルールを設定

ジャージーは小柄!ホルスタインと一緒なら飼槽やスペースの見直しがカギ
6. ジャージー乳を活かした6次産業化(ジェラート・チーズなど)
6-1. ジェラート製造
- 材料構成例(100リットル分)
- ジャージー牛乳:30リットル
- 生クリーム:10リットル
- 砂糖:8kg
- 卵黄:20個
- 製造手順のポイント
- 牛乳と生クリームを45℃程度まで温めて殺菌
- 砂糖と卵黄を混ぜ、ペースト状にしてから乳液に少しずつ投入
- 65℃まで加熱し、75℃で30秒간保持
- 冷却後、ジェラートマシンで攪拌・硬化
- 利益率向上の秘訣
- 成分の高いジャージー乳を用いることで「濃厚・クリーミー」な差別化が可能
- 季節限定フレーバー(地元のフルーツやハーブ)を組み合わせることでPR効果大
- 牧場直売所やオンライン販売を併用し、直販価格を設定

高脂肪なジャージー乳が、リッチな味わいを演出!

6-2. チーズ製造
- 製品例:モッツァレラチーズ、クリームチーズ、ウォッシュタイプチーズ
- 成分メリット
- 高脂肪・高タンパク質→チーズ歩留まりが向上しコスト効率アップ
- ベータカロチンによる自然な黄色味がチーズの色味を引き立てる
- 製造手順の要点
- ジャージー牛乳(30~50℃)にスターターカルチャーを添加し、30分~1時間発酵
- レンネット添加後、凝固物を切断し、ホエイと分離
- ホエイを抜き、加熱・成形し、塩漬けまたは熟成

自然な黄金色は、ベータカロチンの贈り物

7. 最新データから見るジャージー牛の生産能力(2024年実績)
カテゴリ | 2024年実績(成熟相当・m.e.) | 2024年実績(実際) | 2023年比(m.e.) | 2023年比(実際) |
---|---|---|---|---|
乳量(ポンド) | 20,719 | 18,572 | +9ポンド | +170ポンド |
脂肪量(ポンド) | 1,053 | 944 | +15ポンド | +21ポンド |
タンパク質量(ポンド) | 781 | 697 | +3ポンド | +8ポンド |
チーズ生産量(ポンド) | 2,671 | 2,386 | +14ポンド | +32ポンド |
チーズ生産量/100ポンド乳(ポンド) | 12.89 | 12.85 | ― | ― |
エネルギー補正乳(ECM) | 26,386 | 23,630 | +220ポンド | +389ポンド |
泌乳回数(回) | 77,622 | ― | ― | ― |
平均泌乳回数/牛(回) | 2.44 | ― | +0.08 | ― |
脂肪率(%) | 5.08% | ― | +0.07% | ― |
タンパク質率(%) | 3.77% | ― | +0.01% | ― |
- 今後の予測(2030年モデル)
- 乳量:21,328ポンド(成熟相当)/19,280ポンド(実際)
- 脂肪量:1,093ポンド(5.12%)/989ポンド(5.13%)
- タンパク質量:817ポンド(3.83%)/733ポンド(3.80%)
- チーズ生産量:2,792ポンド/2,511ポンド
- ECM:27,375ポンド/24,724ポンド
これらのデータから、品種改良・飼養技術の向上により、今後もジャージー牛の生産能力はさらに伸びると予測されています。将来的にはチーズ製造向けの特化品種や環境負荷を抑えたサステナブル飼養が注目されるでしょう。

2030年には乳量21,000ポンド超えも現実に!
(出典例)
- USJersey Journal – Jersey Breed Reaches New Levels of Production in 2024
- 牧場経営ガイド 2025年版
8. ジャージー牛乳の健康効果と消費者メリット
8-1. 高脂肪・高タンパクによる栄養価の高さ
- ビタミンB12:貧血予防、神経機能維持に寄与
- ベータカロチン:体内でビタミンAに変換され、視力維持や免疫力向上に役立つ
- カルシウム:骨や歯の形成をサポート
- A2ベータカゼイン:消化吸収が良く、乳糖不耐症の人でも飲みやすい場合がある

“濃い牛乳”って言われるけど、実際に栄養がギュッと詰まってるんだ
8-2. 味覚的メリット
- 濃厚でクリーミーな味わいがあり、コーヒー・紅茶などの飲料に最適
- 乳製品(バター・チーズ・ヨーグルト)にするとコクが際立ち、素材の風味を引き立てる

まろやか〜で濃厚!普通の牛乳に戻れなくなるかも…
8-3. 環境・地域経済への貢献
- 地元調達:地産地消を推進し、フードマイレージ削減
- 観光資源化:牧場見学や乳搾り体験が観光客を呼び込み、地域経済を活性化
- 6次産業化による雇用創出:加工品開発で直売所やオンライン販売を拡充し、付加価値を高める

生産・加工・販売までを手がける6次産業化が進み、雇用創出や所得向上にも直結。
(出典例)
- GippslandJersey – Why Choose Jersey Milk Over Other Milk Types?
- Simply Natural Creamery – Health Benefits of Jersey Cows

9. ジャージー牛導入時のポイント・Q&A
Q1. ジャージー牛はどのくらいの頭数を導入すべき?
- 目的によって変動
- 乳脂肪分安定化が目的:ホルスタイン100頭に対し、ジャージー2~5頭程度を目安に導入
- 付加価値製品開発(ジェラート・チーズ重点):50%ジャージーも検討可
- ジャージー牛乳の販売:100%
- コスト面
- ジャージー種の購入価格はホルスタインよりやや高め
- 維持管理コスト(飼料・飼育スペース)は小柄なため若干軽減される

目的に合わせて“ちょい足し”or“本格導入”を選ぼう!
Q2. ジャージー牛の繁殖・分娩の注意点は?
- 難産リスクはホルスタインに比べて低いが、繁殖率はやや低め
- 発情検知:ホルスタインよりもわかりやすい個体が多いが、繁殖周期管理を徹底
- 分娩誘起:当牧場では分娩予定が1週間以上遅れた場合、PGF₂α製剤を使用して分娩誘起を行う(人工授精と同様の注意が必要)

ジャージーは産みやすいけど、妊娠しづらい!?
Q3. 飼料・栄養管理はどう変えるべきか?
- 粗飼料(牧草):放牧中心でOK。ジャージーは放牧適性が高い
- 濃厚飼料(配合飼料):成分要求量がホルスタインより高めのため、乳脂肪・タンパク質を重視した配合を検討
- ミネラル・ビタミン:ベータカロチンが多いが、ミネラルバランスはホルスタインと同様に管理

ジャージー牛は放牧と相性バツグン!
Q4. 飼養管理環境のポイントは?
- 涼感対策:夏場の高温期には、既存のホルスタイン用設備(扇風機・ミスト・散水設備など)を使いまわせる
- 衛生管理:乳房炎予防のため、ホルスタインと同様に搾乳前後のアルコール消毒・乳頭洗浄を徹底
- ストレスケア:ジャージーは人懐っこいため、定期的な人の往来や給餌時のコミュニケーションが重要

ジャージー牛も暑さはニガテ!THI喉を活用し夏の対策は万全に
10. まとめ:これからの酪農にジャージー牛をどう活かすか
ジャージー牛は、その歴史的背景・外見的魅力・高い乳質・適応性・そして酪農の6次産業化と相性が良い点から、今後ますます注目される品種です。
- 初めて乳牛を飼う初心者でも扱いやすく、多品種飼育のハードルを下げる
- 高温多湿な地域(日本の夏場や九州南部など)でも乳脂肪を安定化し、良質な牛乳を生産
- 高付加価値製品開発(ジェラート・チーズ・ヨーグルト)がしやすく、直売所やオンライン販売で利益向上が期待できる
- 地域ブランドの構築(蒜山高原)を通じて、地方創生や観光振興にも寄与
- 今後の品種改良でさらに耐病性・生産性・サステナビリティが改善され、2030年以降も成長が予測
はじめてジャージー牛を検討する場合は、飼養環境・繁殖・飼料コスト・混飼計画などをしっかりシミュレーションすることが重要です。まずは少数頭から試験導入し、自社の酪農経営スタイルに合うかを見極めましょう。

日本の夏にも強い!ジャージー牛の適応力に注目
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