酪農で安定した乳生産を実現するには、繁殖管理がもっとも重要です。本記事では、LH(黄体形成ホルモン)や卵胞発育、排卵誘起から、Ovsynch・Double Ovsynchプログラム、P4(プロジェステロン)分泌までを、初心者にもわかりやすく解説します。

LH(黄体形成ホルモン)や卵胞発育の理解は、発情周期をコントロールするために欠かせない重要な要素だよ。
. 繁殖管理が酪農に不可欠な理由
- 乳生産開始の条件:乳牛は分娩後に初めてミルクを生産。
- 人工授精の普及:日本では98%の乳牛が人工授精(AI)によって繁殖
- 遺伝改良と性別選択:14%が雌性分離精液を使用し、雌牛出生率向上
- 牧場経営への影響:発情間隔が延びるとミルク生産量が減少し、コスト増加へ直結。
Point:効率的な繁殖管理は、生産性向上と経費削減を同時に実現します。

日本では98%の乳牛が**人工授精(AI)**で繁殖しており、効率的な管理が乳牛の生産性向上に繋がっている。
2. LH(黄体形成ホルモン)の基本
概念 | 役割 |
---|---|
分泌部位 | 脳下垂体前葉 |
主な機能 | 卵胞成熟/排卵誘発/黃体形成促進 |
- LHサージ:GnRH投与後1〜2時間でピーク、8〜10時間で基線へ戻る。排卵はピークから27〜30時間後に起こる。

LH(黄体形成ホルモン)は、脳下垂体前葉で分泌され、卵胞成熟や排卵誘発、黃体形成を促進する。
3. 卵胞発育と排卵誘起のメカニズム
- FSH作用:初期卵胞の発育と卵胞腔形成を促進。
- LH作用:優勢卵胞の最終成熟をアシスト。
- フィードバック:優勢卵胞からのE₂(エストラジオール)とインヒビンがFSHを抑制。
- LHサージによる排卵:E₂の正のフィードバックでGnRHサージを誘発し、LHとFSHサージを引き起こす。
Point:GNRH/E₂/インヒビンの相互作用を理解することで、排卵誘起プログラムの最適化が可能です。

FSHは初期卵胞の発育を促し、LHは優勢卵胞の最終成熟をサポート。その後、LHサージが排卵を引き起こす。
4. Ovsynchプログラムの流れとメリット
- Day 0:GnRH投与 → 優勢卵胞のリセット
- Day 7:PGF₂α投与 → 黄体退行
- Day 9:GnRH投与 → 排卵誘起
- Day 10:TAI(定時人工授精)
- メリット:
- 発情検出不要で一律管理
- TAI成功率向上
- 労働時間の短縮

Ovsynchプログラムって効率的!発情検出が難しい牛でも管理しやすくなるから、労働負担が減りそう。
5. Double Ovsynch(ダブルオブシンク)手順
当牧場で運用中の手順を公開!
日程 | 投与内容 | 目的 |
---|---|---|
Day 0 | PGF₂α | 黄体退行 |
Day 2 | GnRH | 新規優勢卵胞の形成 |
Day 9 | PGF₂α | 再度黄体退行 |
Day 10 | PGF₂α | 協調度向上 |
Day 11 18:00 | GnRH | 排卵誘起 |
Day 12 | TAI | 定時人工授精 |

- ポイント:
- 二段階のPGF₂αで黄体完全退行
- GnRH投与後27〜30時間で高精度排卵
- 同期度向上でTAI成功率アップ
- 打つ本数が増えて、負担が増加するのに注意

二段階のPGF₂αが効果的!黄体退行を確実にして、排卵誘起をしっかりサポートしている。
6. 黄体形成とプロジェステロン(P4)分泌
- 黄体への変化:排卵後、卵胞が顆粒細胞/内側膜細胞に分化。
- P4レベル:発情後8〜15日で4〜8 ng/ml
- 黄体退縮:非妊娠ではPGF₂αが作用し、2〜4日前に退縮。
- CIDRデバイス:エストルス同期・超数卵胞形成に有効。
▼牧場での実践ポイント
当牧場では、受胎率をさらに高めるために、シダー(CIDR)腟内挿入型のプロゲステロン製剤を併用しています。
- 挿入タイミング:AI(人工授精)後にDay 5で装着
- 抜去タイミング:Day 19(挿入から2週間後)に除去
- 効果:持続的なP4供給により、黃体機能のばらつきを抑制し、着床率アップ
Point:CIDR併用でP4レベルが安定し、受胎率向上と同期度の強化が期待できます。

CIDRの導入は、受胎率向上のための必須ステップだね!P4の安定が鍵!
7. 経済的メリットと導入事例
- 成功事例:Double Ovsynch導入牧場でAI成功率が従来の10%向上。
- コスト試算:1回の同期プログラムあたり追加投薬費用約3,000円に対し、乳価上乗せ分で1頭当たり年間約15,000円の純利益増。
- 導入のポイント:スタッフ教育と投与スケジュール管理システムの整備が鍵。

AI成功率向上で生乳生産量もアップ!投資効果をしっかり検証しよう。
8. よくある質問(FAQ)
Q1. PGF₂αの副作用は?
→ 一時的な食欲低下や乳房腫脹が報告されていますが、管理頻度を守れば問題ありません。
Q2. TAIの最適な時間帯は?
→ GnRH投与から約30時間後、当牧場では夕方の16〜18時に実施して成功率向上を確認しています。
Q3. 雌性分離精液との併用は?
→ TAIプログラムと組み合わせることで、より高い雌牛出生率が見込めます。
まとめと次のステップ
- LHサージとFSHの役割を踏まえ、Ovsynch/Double Ovsynchで高精度な排卵同期を実現。
- P4管理とCIDR活用で黃体機能を最適化し、妊娠維持率アップ。
- 経済効果を試算し、導入コスト以上のリターンを確認。

LHサージとFSHの役割を理解して、排卵同期プログラムがさらに効果的に!

まずは自牧場でOvsynchプログラムからトライし、データを記録・分析しましょう。
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