日本の酪農業界で注目を集める「NTP(ニッポン トータル プロフィット インデックス)」。この指標は、乳用ホルスタイン牛一頭一頭の遺伝的能力評価を総合的に評価し、遺伝改良や繁殖計画の最適化を支える重要なツールです。
本記事では、NTPの基本から具体的な構成要素、計算の仕組み、最新のアップデート情報、現場での活用事例まで、専門的かつ分かりやすく解説します。

NTPって何?日本のホルスタインの“遺伝的な成績表”なんです!
1. NTPとは何か?
NTPは「Nippon Total Profit(ニッポン トータル プロフィット)Index」の略称で、ホルスタイン種乳用牛の遺伝的能力評価を数値化する日本独自の選択指標です。酪農家が持続的な利益を追求できるよう、繁殖、乳質、乳房の健康指標、脚部や体型の構造的健全性など、さまざまな要素を合成して算出されます。
- 目的:遺伝的に優れた乳用牛を選抜し、長期的な経営効率と牛群全体の健康維持を両立する。
- 運営主体:公益財団法人家畜改良センターおよびホルスタイン協会が管理・公表。

NTPを見れば“どの牛が優れてるか”がひと目でわかる!
2. NTPの構成要素と評価項目
NTPは主に以下の特性から構成され、各特性に重みづけを行ったうえで総合点を算出します。数値が高いほど繁殖価値が優れていることを示します。
特性 | 説明 |
---|---|
乳脂肪量(Fat Yield) | 乳製品加工に重要な脂肪成分の産出量。 |
乳タンパク質量(Protein Yield) | チーズやヨーグルトの品質向上につながるタンパク質量。 |
体細胞スコア(SCC) | 乳房炎リスクを示す指標。低い値ほど健康な乳房を意味。 |
骨格・脚部構造(Conformation) | 牛の歩行性や長寿命化に寄与する脚部健全性を評価。 |
乳房構造(Udder Composite) | 乳房全体の形態的健全性:付着(Attachment)、深さ(Depth)、高さ(Height)など。 |
繁殖性指数(Fertility Index) | 空胎日数と未経産・初産娘牛受胎率を用いて、雌牛の繁殖性を総合的に改良するための指数で、数値が高いほど繁殖性に優れていることを示します。 |
※2024年8月の改定で「大きさ指数(高さ)」が新たに追加され、耐久性評価の精度が向上しました。

脂肪とタンパクだけじゃない!“乳牛の健康指数”まで含まれてる!
3. NTPの算出方法と数値の見方
- データ収集:各生産牛の繁殖・乳成分・体細胞数・体型検定データを集計。
- 遺伝的相関の補正:環境要因を排除し、純粋な遺伝的能力を推定。
- 重み付け合成:各特性に設定された経済重みを掛け合わせ、総合点を算出。
- 標準化:母集団平均を0とし、標準偏差単位で表現。多くの種雄牛が平均0、優秀個体はプラスの数値となります。
数値の目安
- +100以上:繁殖価値が非常に高い
- +50~+100:優良レベル
- -50~+50:平均的
- -100以下:再改良が望まれる

環境じゃなく“遺伝だけ”で評価するのがポイントだね!
4. 最新アップデート情報(2024年8月改定)
家畜改良センターは2024年8月にNTPの改定を行い、以下のポイントが追加・修正されました。
- **大きさ指数(Height Index)**の導入:耐久性評価を強化し、繁殖牛の長寿命化を後押し。
- 搾乳ロボット適合性評価:次世代の自動搾乳システム(搾乳ロボット)普及を見据えた項目を新設。
これにより、最新の技術動向を取り入れた繁殖計画が可能になり、酪農現場の効率化がさらに加速しています。

今後の種牛選び、ロボット適性もチェックが当たり前に?
5. 導入事例:北海道・東北地方での活用
北海道や東北の酪農大規模経営では、NTPを活用した種雄牛の選抜が進んでいます。
- 事例1:乳量重視の牧場
- NTP+120をマークした種雄牛を導入し、年間乳量が平均10%増加。
- 体細胞スコアの改善で乳房炎発生率が20%低減。
- 事例2:長寿命化を狙う牧場
- 耐久性重視型肥育計画で大きさ指数を重視。
- 導入3年目で平均寿命が2ヶ月延長し、労務コスト削減に成功。

北海道や東北の大規模牧場ではもう当たり前!
6. NTPを活用した繁殖計画のポイント
- 目標設定の明確化:乳量重視か、耐久性重視か、繁殖性重視か経営方針に合わせて重みを見直す。
- データ管理の徹底:日々の生産・牛群検定データを正確に記録し、定期的にNTP値を把握。
- 多頭比較による選抜:群全体でのNTP分布を確認し、上位個体の導入や交配計画を策定。
- 長期的視点の導入:短期的な乳量増加だけでなく、牛群の健康維持と経済性を両立。

短期利益より“持続可能な牛づくり”をNTPで実現しよう!
7. NTP活用時の注意点
- 繁殖環境の影響:飼養管理や飼料組成など、環境要因が成績に及ぼす影響も考慮する。
- 遺伝的多様性の維持:優秀個体ばかりを固定化せず、遺伝的多様性も確保する。
- コストとのバランス:高NTP種雄牛は価格も高額な場合があるため、投資対効果を検証。

遺伝+環境+経営”の3本柱で考えなきゃダメだよ。
8. まとめ
- NTPはホルスタイン種乳用牛の繁殖価値を多角的に評価する日本独自の指標。
- 繁殖・乳脂肪量・乳タンパク質量・体細胞スコア・構造評価など複数特性を重み付け。
- 2024年8月に「大きさ指数(高さ)」と「搾乳ロボット適合性評価」が追加。
- 高NTP牛を活用することで、乳量増加や乳房炎リスク低減、長寿命化が期待できる。
- 記録管理と経営方針に合わせた活用が、持続的な利益と群全体の健康維持に貢献。
NTP(ニッポン トータル プロフィット インデックス)は、乳用ホルスタイン牛の繁殖価値を多面的に評価し、遺伝改良や繁殖計画を最適化する強力なツールです。最新の大きさ指数追加やロボット適合性評価など、技術革新に合わせて進化を続けています。
酪農家は自身の経営方針に即したNTP活用法を設計し、長期的な利益向上と群全体の健康維持を両立させましょう。

方針に合ったNTP重視項目を決めていこう!
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