ペレニアルライグラスは高い嗜好性と栄養価を持ち、放牧酪農や採草で乳量・飼料効率の改善に役立ちます。本記事では実践的な栽培・放牧のポイント、品種選び、管理カレンダー、地域別事例まで草地・飼料生産学研究室に所属していた筆者が詳しく解説します。

採草と放牧、両方で活躍する万能牧草
ペレニアルライグラスとは?酪農で重宝される理由
ペレニアルライグラス(学名: Lolium perenne)は多年生稲科牧草で、嗜好性が高く消化性に優れるため乳牛の採食量を確保しやすい種です。早春からの伸長性が良く、放牧初期に素早く利用できる点や、追播が容易である点が酪農現場で評価されています。
主要な特性(まとめ)
- 高嗜好性・高栄養(乳量向上に寄与)
- 初期生育と再生力が強く追播に適する
- 低温伸長性があり早春放牧に向くが、耐暑性・越冬性は品種による
- 永続性は短め→毎年または隔年の追播で維持

ペレニアルライグラスで乳量アップ&放牧効率向上!
酪農向けおすすめ品種と地域適性(実践的に選ぶ)
品種によって耐暑性・越冬性・収量性が異なります。地域気候(北海道〜本州)と利用法(放牧 vs 採草)に合わせて選びましょう。
品種名 | 特性 | 推奨利用地 |
---|---|---|
フレンド | 晩生で越冬性・春萌芽良好。放牧向き。 | 北海道・東北 |
夏ごしペレ | 耐暑性に優れ、夏季でも利用しやすい。 | 関東〜中部以南 |
ヤツユメ | 4倍体で多収、冠さび抵抗性あり。放牧兼用。 | 本州以南 |
SW Birger | 低温伸長性優れ、早春入牧が可能。 | 北海道北部 |
KSP1403 | 多収、越冬性は並。 | 北海道全域 |
※混播する場合、チモシー等の草種との比率や播種量を調整して嗜好性と永続性のバランスを取るのがコツです。

品種ごとの特性を知れば収量と乳量がアップ!
栽培・管理の具体手順
播種時期と播種量
推奨播種量は 3〜5kg/10a(10アール)。秋播き(9〜11月)が基本で、春播き(3〜5月)も可能です。秋播きのほうが越冬後の育成が安定します。
追播のタイミングと方法
放牧地は毎年秋に追播することで永続性を高められます。追播は既存の草地が痩せてきた時、または密度が落ちた時に行ってください。散播後は軽くローリングして種と土の接触を良くします。
更新サイクルと輪作
一般に草地更新は3〜4年ごと。輪作として穀類や豆類を組み入れると土壌改善と病害抑制に有効です。
放牧管理のポイント
- 短草利用(刈高低め)で嗜好性を活かす
- 集約放牧なら給餌・休止輪の管理で刈取り間隔を均す
- 夏季は乾燥・高温で停止する場合があるため、耐暑性品種を混播

3〜4年ごとの草地更新+輪作で土壌改善と病害抑制
酪農におけるメリット・デメリットと対策
メリット(現場で期待できる効果)
- 嗜好性が高く採食量増→乳量改善につながる
- 早春から利用可能で飼料供給の谷を埋める
- 追播で短期間に草地を回復できる
デメリット(注意点)
- 越冬性や永続性が品種依存で、地域に合わないと更新コストが上がる
- 高温に弱い品種があるため、夏季管理が必要
対策
越冬性に不安がある地域では、耐寒性が高い品種を選ぶ/秋追播を徹底/夏季は耐暑性草種(オーチャードグラス等)と混播することでリスク分散します。

高嗜好性で乳量アップ!早春から放牧OK
現場事例:北海道〜本州の実践
北海道(天北地域)
採草用として多回収穫(年間3〜5回)で利用され、消化率80%以上を報告する事例もあります。冬季対策としてフレンドやKSP1403等、越冬性がある品種を選定することが多いです。
山梨県の小面積放牧
小面積での放牧導入により泌乳量が改善した事例。標高差を活かした放牧計画と追播の組合せが成功要因でした。

地域特性に合わせたペレニアルライグラス活用が収益性を高める
栽培カレンダー(目安)
月 | 作業 |
---|---|
2〜4月 | 春播き(必要時)、初期管理、害虫確認 |
5〜7月 | 成長期→採草/放牧開始、給水管理 |
8〜9月 | 夏期管理(耐暑性対応)、追播の準備 |
9〜11月 | 秋播き・追播、土壌改良、冬支度 |
12〜1月 | 除雪・冬季休止(地域差あり) |

年間カレンダーでペレニアルライグラス管理を効率化!
よくある質問(FAQ)
Q. チモシーと混播しても大丈夫ですか?
A. 可能です。チモシーの比率が高いとペレニアルの確保が難しくなるため、導入時の比率と目的(放牧中心か採草中心か)を明確にしてください。混播比率の目安は目的によって変わりますが、試験的に小区画で比率を変えて様子を見るのが安全です。
Q. 追播の最適な時期は?
A. 多くの場合、秋(9〜11月)が最適。気温が落ち着いた時期に播くと越冬後の活着が良いです。
まとめと次の一歩
- ペレニアルライグラスは高嗜好・高栄養で乳牛の採食量・乳量改善に貢献する有力な牧草。
- 品種選定が成功の鍵:寒冷地向け(例:フレンド、SW Birger)、耐暑性が必要な地域には夏ごしペレなどを検討。
- 播種は基本的に秋(9〜11月)推奨、播種量は3〜5kg/10a。追播は毎年秋に行うと永続性が向上。
- デメリット(越冬性・永続性の課題)は、混播(オーチャードグラス等)や適切な品種選定で対策可能。
- 実践の第一歩:まずは小区画で品種比較と播種法を試験→成否を見て規模拡大。地域の農研機関で土壌診断・品種情報を確認すると成功率が上がる。
ペレニアルライグラスは、適切な品種選定と定期的な追播で放牧酪農の生産性を高める有力な選択肢です。まずは小さな区画で品種比較・播種法を試し、地域条件に合った管理サイクルを作ることから始めましょう。導入を検討する方は、まず過去記事や周辺の実践例を参考にして、播種計画を立ててください。

ペレニアルライグラスで乳量アップ&採食量改善!
※注意:地域や圃場の条件により最適な管理法は変わります。導入前に土壌診断や近隣の農研機関に相談することをおすすめします。
この記事で紹介した品種や管理法は、現場での経験と研究資料をもとにまとめています。詳しい品種データや最新の試験結果は各研究機関の公的資料をご確認ください。
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