チーズ作りに欠かせない「レンネット」。その主成分キモシンは牛乳を固める重要な酵素ですが、伝統的に子牛の胃から得られてきたことから、酪農現場や消費者の間で倫理や持続可能性への関心が高まっています。本記事では、レンネットの仕組みと種類、チーズ製造工程での働き、子牛と酪農の関わり、さらに植物性・微生物性・発酵生産キモシンといった代替技術や家庭で試せる方法までを、現場経験に基づいて分かりやすく解説します。

レンネットって、チーズ作りのカギなんだ!
レンネットとは(基本)
レンネット(凝乳酵素)は、牛乳中の主要タンパク質であるカゼインを切断して乳を固め、カード(凝乳)とホエー(乳清)に分ける働きをする酵素群の総称です。チーズ製造で最も重要な成分は「キモシン(chymosin)」で、良質なレンネットではキモシンが凝乳活性の大部分を占めます。

カゼインを切って牛乳を固める酵素、それがレンネット!
レンネットの種類と特徴
レンネットは大きく分けて以下の4種類があります。
- 動物性レンネット(カーフレンネット):伝統的に生後間もない子牛の第4胃(ギアラ)から得られる。キモシンとペプシンを含み、熟成香に安定した特徴をもたらします。
- 発酵生産キモシン(FPC:fermentation-produced chymosin):微生物に遺伝子を組み込み発酵で生産されるキモシン。現在のチーズ生産で大きなシェアを占めています(※2)。
- 微生物性レンネット:特定のカビや細菌から得られる酵素。大量生産が容易ですが、長期熟成で苦味が出る場合があります。
- 植物性レンネット:アーティチョーク、チョウセンアザミ(カードーン)、イチジク、ネトルなど、植物由来の凝乳成分を利用。伝統的・地域的なチーズに使われることがあります(※3)。
補足:製造者や地域、製品の規格(例:伝統製法のチーズ)によって使用されるレンネットは異なります。

レンネットには動物性、微生物性、植物性…種類が豊富!

チーズ製造でのレンネットの役割 — ステップで見る
- 牛乳の温度を管理して乳酸発酵を進める(30〜35℃が目安のことが多い)。
- レンネットを添加して30〜60分程度で凝固させる。キモシンはκ-カゼインを特異的に切断してミセル同士を結びつけ、ゲル構造(カード)を作ります(※4)。
- カードをカットしてホエーを排出し、成形・加塩・プレス・熟成へ進む。
レンネットの種類や添加量、温度、pHによりカードの硬さや熟成後の風味が変わるため、チーズメーカーは微調整して品質を安定させます。

レンネットで牛乳があっという間にカードに変身!

子牛と酪農の関係:レンネットの背景にある現場の事情
伝統的には子牛の胃からレンネットを採取していましたが、酪農の現場では「オス子牛の取り扱い」「早期屠畜」などが社会的な関心事になっています。チーズ生産における動物性レンネットの比率は地域や製品で差がありますが、近年は発酵生産キモシンや植物性レンネットの導入が進んでいます。
酪農経営の観点からは、子牛の飼育コストや用途(繁殖用・肉用・代替利用)を踏まえた上で、持続可能な選択肢を模索する動きが強まっています。消費者側でも「どのレンネットが使われているか」を気にするケースが増えています。


昔は子牛の胃からレンネットを取っていたんだ
倫理的課題と消費者の選択
レンネット由来の議論は広く「家畜福祉(アニマルウェルフェア)」「持続可能性」「食品表示」に関わります。例えば伝統的に動物性レンネットを使うチーズ(例:特定の原産地製品)は、厳格な規格や地理的表示に基づく場合があります。一方で、ヴィーガンやベジタリアンの消費者は植物性や発酵生産由来の選択肢を好みます。
記事を読む際は「使用レンネットの種類」「製造者の表記」「原産地規格」をチェックすると、自分の価値観に合ったチーズ選びができます。

レンネット選びは、アニマルウェルフェアとも関係してる!
代替レンネットと今後のトレンド
技術面では発酵生産により高純度のキモシンが安定供給されるようになり、多くの工業的チーズ生産で採用されています。また植物性や一部の微生物由来酵素は、伝統的風味と差が出ることもありますが、技術改良により選択肢が増えています。
業界のポイント(要約)
- コストと品質のバランスで発酵生産キモシンが主流化。
- 倫理・環境配慮で植物性・ヴィーガン製品の需要増。
- 伝統製法を守る少数のチーズは動物性レンネットを維持。

発酵生産キモシンで安定したチーズ作りが可能に!
家庭で試せる「レンネットなし」チーズの作り方(簡単)
レンネットが手に入らない場合、酸(ヨーグルトやレモン汁)で凝固させる方法があります(フレッシュチーズやリコッタ風)。短時間ででき、材料もシンプルです。
- 牛乳1Lを温めて人肌〜60℃程度にする。
- プレーンヨーグルト大さじ3〜4、またはレモン汁大さじ2を加えてゆっくり混ぜる。
- 30分ほど放置し、カードが固まったら布で水切りする。
家庭用の方法は酸凝固のため熟成には向きませんが、新鮮なフレッシュチーズが簡単に作れます。

材料は牛乳とヨーグルト(またはレモン汁)だけ!
まとめ:レンネット・チーズ・酪農をどう見るか
- レンネットはチーズの凝固を担う酵素群で、主要成分はキモシン。カードとホエイを分ける役割を果たす。
- 種類は動物性(カーフレンネット)、発酵生産キモシン(FPC)、微生物性、植物性があり、それぞれ風味や供給・倫理面で特徴が異なる。
- 伝統的な子牛由来レンネットは歴史的に重要だが、動物福祉や持続可能性の観点から発酵生産や植物性へのシフトが進んでいる。
- 消費者は購入時に「使用レンネットの種類」「表示」「用途(熟成向け/フレッシュ向け)」を確認すると選択がしやすい。
- 家庭ではレンネットを使わない酸凝固法(ヨーグルトやレモン汁)でフレッシュチーズが作れるため、入手性にも実用的な代替を提示できる。
レンネットはチーズ作りの核心であり、その主成分キモシンは凝固を司る重要な酵素です。従来の子牛由来レンネットから、発酵生産キモシン・植物性酵素へと選択肢が広がり、持続可能性や倫理に配慮した消費が可能になりました。購入時にはラベルを確認し、用途(長期熟成かフレッシュか)や自分の価値観に合うものを選びましょう。

レンネットはチーズ作りの核心、キモシンが牛乳をカードに変える!
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参考(脚注)
- レンネット中のキモシンの重要性について(※1)
- 発酵生産キモシン(FPC)の普及と割合について(※2)
- 植物性レンネット(例:アーティチョーク、カードーン等)の存在(※3)
- レンネットがκ-カゼインを切断して凝固させるメカニズム(※4)
- 動物性レンネット使用の表示・消費者選好に関する情報(※5)

