〜身近にある3大牧草〜
道端に生える草=雑草と思い込んでいませんか? 実は、牛も好むおいしい牧草が隠れています。大学で草地・飼料生産学を学んだ筆者が道端に潜む牧草を3種類紹介!

牛さん
え、これ牧草だったの!?見つけたらラッキー!牛も喜ぶ草🌿
1. 道端の“雑草”が牧草になる理由
- 生育力が強い:どこでも育つ雑草は、実はストレスに強い優良牧草。
- 栄養価が高い:マメ科やイネ科など、牛の健康に必要な成分を含む種類が多い。
- コスト0で採取可能:畑や牧草地の補完飼料として最適。
- 豆科牧草の窒素固定:根に根粒菌を共生させ、待機中の窒素を植物が使える状態にします。
牛が自然に好む嗜好性の高い草を見つければ、飼料の無駄を減らし、乳量・肉質の向上も期待できます。

牛さん
野に咲く草、じつはスゴい栄養持ち🌱
豆科牧草の根粒菌と窒素固定
クローバーなどの豆科植物は根に根粒菌(Rhizobium 属など)を共生させ、大気中の窒素(N₂)を植物が使える形(アンモニア NH₃)に変換する能力を持っています。根粒菌は以下のように働きます。
- 感染と根粒形成:
- 土壌中の根粒菌が根毛に付着し、感染糸(infection thread)を通じて根の皮層細胞に侵入
- 感染部で細胞分裂が誘導され、根粒と呼ばれる球状の構造が形成される
- 窒素固定の仕組み:
- 根粒内部でニトロゲナーゼという窒素固定酵素が働き、N₂をNH₃に還元
- 生成したNH₃はアミノ酸やタンパク質の合成に利用され、植物全体に供給される
- 緑肥効果と土壌還元:
- 根粒や地上部が枯死・分解すると、固定された窒素が土壌に戻り、次年度以降の作物の肥料分として活用できる
- 一般的に1haあたり年間100〜200kgNを固定し、化学肥料コストを大幅に削減可能

牛さん
根粒菌がいれば、化学肥料が減らせる=コスト削減!
2. 見分け方のポイント:道端牧草3種クイックガイド
道端でよく見かける「白クローバー」「赤クローバー」「イタリアンライグラス」を、初心者でも瞬時に見分けられるように以下のポイントをチェックしましょう。
ポイント | 白クローバー(Trifolium repens) | 赤クローバー(Trifolium pratense) | イタリアンライグラス(Lolium multiflorum) |
---|---|---|---|
葉の形 | 3枚の小さな丸葉、淡いV字模様あり | 3枚の大きめの葉、V字模様は薄い | 細長い線形葉、葉幅5〜10mm |
茎の形態 | 地面を這う匍匐茎(ランナー) | 直立茎、高さ30〜80cm | 直立茎、草丈30〜60cm |
花の色 | 白〜淡いピンク | 赤紫〜ピンク | 花柄は目立たず、葉のみ利用 |
花の形状 | 球状の小花が密集 | 球状だが花が大きめ | 花序は線形だが観察しにくい |
生育時期 | 春〜初夏活性、夏休眠 | 春〜初夏活性 | 播種後40〜50日で最盛期 |
匂い・感触 | やわらかく甘い香り | やや硬め・甘みあり | さわやかな青草の香り、やや硬め |
見分けのコツ:
- 葉を手に取って形と模様をチェック
- 茎の伸び方(匍匐 vs. 直立)を観察
- 白い小花か赤紫の大きな球状花かで判断

牛さん
芝生や道端でよく見かける、あの“かわいい三つ葉”!
あれも牧草だったんだ!
各牧草の詳細解説
白クローバー(Trifolium repens)
- 特徴:多年草。低く這うように広がるため、踏みつけに強く、草地更新にも利用される。
- 栄養価:粗たんぱく質が豊富で、消化性にも優れる。
- 活用ポイント:採草量が少なく、牛の口に入る量は少ないが、ランナー(匍匐茎とも言われ、種子だけでなく匍匐茎からも繁殖可能!)の特性で繁殖力に優れる。また、根粒菌が窒素固定をしてくれるので他の植物の成長も促す。

牛さん
白クローバー、まさかの栄養優等生!

赤クローバー(Trifolium pratense)
- 特徴:2年草または多年草。白クローバーよりも背が高く、花が目立つ。
- 栄養価:高たんぱくで嗜好性が良く、特に搾乳牛の飼料として人気。
- 活用ポイント:刈り取り後の乾草やサイレージに最適。

牛さん
白より背が高く、花が赤くて見つけやすいよ!

イタリアンライグラス(Lolium multiflorum)
- 特徴:一年草または二年草。成長が早く、草丈も揃いやすい。
- 栄養価:糖分が高く、発酵性も良好。
- 活用ポイント:短期間で収穫可能なため、青刈りやサイレージ原料として重宝される。

犬さん
スピード成長、ありがたすぎる…道端でも良く見かけるね!

7. まとめ:今日から始める道端牧草のある暮らし
白クローバー、赤クローバー、イタリアンライグラスはいずれも酪農や畜産現場でよく利用される重要な牧草です。それぞれに特徴や栄養価の違いがあり、活用方法も異なります。
- 白クローバーは踏みつけに強く、放牧地や草地更新に最適。
- 赤クローバーは嗜好性が高く、乾草やサイレージに向いており、特に搾乳牛に効果的。
- イタリアンライグラスは短期間で収穫でき、青刈りやサイレージに重宝されます。
自分の牧場や利用目的に合わせて、適切な牧草を選ぶことが、効率的な飼料生産や牛の健康管理につながります。身近な草にも目を向けて、うまく活用していきましょう!

犬さん
明日から“雑草”じゃなく“牧草”に見えるかも🌱

牛さん
ただの道端、されど栄養たっぷりな宝の山!
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