春から秋にかけて酪農現場を襲うサシバエ(刺し蠅)は、牛のストレス増大や病気媒介のリスクを高め、乳量を5~20%低下させる深刻な害虫です。本記事では、サシバエの生態や酪農への影響を科学的に解説し、環境管理・物理的対策・化学的対策を組み合わせた統合害虫管理(IPM)の実践例と、導入コストを上回る経済効果をわかりやすく紹介します。

サシバエ被害で乳量が最大20%も減るって…放っておけない問題だね!
1. サシバエとは?酪農現場に迫る吸血性ハエの実態
- 学名:Stomoxys calcitrans
- 体長:3.0~8.0mm
- 発生時期:春先~秋(晩夏~秋がピーク)
- 寿命:成虫で約15日、孵化翌日から吸血を開始
- 飛翔距離:3~4km
サシバエはイエバエ科に属する吸血型のハエで、針のように細長い口吻で牛の血液を吸引します。牛白血病ウイルスなどの病原体を媒介する可能性があり、牛舎内・周辺の湿った堆肥や残飼料が繁殖環境となります。

体は小さくても、牛に与えるストレスはかなり深刻!
2. 酪農への影響──ストレスから経済損失まで
- 乳量低下
吸血ストレスで牛が給餌行動を拒むため、乳量が5~20%低下。実験例では、牛に5匹のサシバエが止まるだけで1kgの乳量減少が確認されています。 - 感染症リスク増大
吸血による皮膚損傷から黄色ブドウ球菌などが侵入し、乳房炎や皮膚炎を引き起こす恐れ。 - 行動異常
牛群がエリアに偏る「片寄り行動」でストレスが増大し、全体の生産性が低下。 - 経済的損失
平均日乳量2,893 kgの農場で5%乳量低下が続くと、年間約16,820 kgの損失。乳価100 円/kg換算で約1,682,000 円の機会損失に。

サシバエ5匹で乳量1kg減!?これはもう“害虫”どころじゃない…
3. 統合害虫管理(IPM)でサシバエを根本から制御
IPMとは、環境管理・物理的対策・生物的対策・化学的対策を組み合わせた総合的なハエ対策手法です。
3.1 環境管理:発生源の除去とモニタリング
- 堆肥管理
発酵熱を40℃以上、水分50%以下に保ち、ウジ(幼虫)の発育を抑制。 - 定期清掃
牛舎内外の残飼料・汚水溜まりをこまめに除去し、卵塊の発生を防止。

堆肥温度は40℃以上、水分は50%以下!これだけでウジの発生を大幅カット!
3.2 物理的対策:防虫ネット・トラップの活用
- 防虫ネット(目合い1–2 mm)
牛舎の出入口や換気口に設置し、70~80%の侵入率をブロック。 - 粘着トラップ
1.5 m以下の低い位置に設置し、朝夕の吸血活動時に多く捕獲。 - 送風機の活用
サシバエは風を嫌うため、常時風通しを良くして侵入抑制。

粘着トラップは“1.5m以下”に設置がコツ。低い位置が狙い目!
3.3 生物的対策:天敵の検討
- 寄生バチ(Spalangia spp.)
理論上は有効だが、現場での安定供給や放飼管理が難しく、限定的な導入に留まります。
3.4 化学的対策:IGR剤・殺虫剤の適正運用
- IGR(昆虫成長調節剤)
1~2週間ごとに堆肥や残飼料付近へ散布し、幼虫の脱皮・成長を阻害。 - 成虫用殺虫剤
金鳥ETB乳剤の空間噴霧で成虫を迅速駆除。 - 幼虫用殺虫剤
シロマジンなどをウジ発生源に適用。 - 薬剤ローテーション
抵抗性防止のため、複数の作用機序を持つ薬剤を交互に使用。

堆肥まわりに1〜2週間おきにIGR剤を散布、これが対策の基本!
4. 実践例:低コスト防虫ネットの経済効果
実験概要
複数のフリーストール農場で低コスト防虫ネットを導入し、牛に付着するサシバエ数・片寄り日数を比較。
- サシバエ数:平均10頭→3~6頭に減少
- 片寄り日数:年間130日→約15日に短縮(約88%改善)
経済効果の試算
- 乳量改善:145 kg/日の増量→年間16,820 kg増
- 収入増:16,820 kg×100 円/kg=約1,682,000 円
- ネット設置費:100頭規模で20~25 万円
→ 初年度で十分に費用回収可能

費用対効果が“見える化”されてると導入しやすいよね!
5. 地域ぐるみの共同防除による持続可能性
- 情報共有:農場間で対策事例・モニタリングデータを共有し、効果的手法を拡大
- 共同実証:地域単位で大規模実証を実施し、信頼性あるデータを収集
- 公的支援:JAや県畜産課と連携し、補助金や技術支援を活用

JAや県畜産課の補助金・技術支援は、酪農家の強い味方!
6. まとめと今後のポイント
- IPMの徹底
環境管理+物理的対策+化学的対策を組み合わせ、定期的に効果をモニタリング。 - コスト対効果の最大化
低コスト防虫ネット導入で、導入費用を大きく上回る収益改善を実現。 - 地域連携の強化
情報共有・共同実証で、飛翔力の強いサシバエの侵入リスクを地域全体で低減。
持続可能な酪農経営を支えるサシバエ対策は、牛の健康と生産性を両立させ、最終的には農場の収益性向上につながります。ぜひ本記事を参考に、効果的なハエ対策を現場で実践してください。

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