「えっ、六甲バターなのにバターを作っていないの!?」
2025年12月13日、創立77周年を迎えた六甲バター株式会社(QBB)の公式投稿が、SNSで大きな波紋を呼んでいます。「実は一度もバターを作ったことがない」という衝撃の告白に、ネット上では「脳がバグる」「嘘だと思った」と驚きの声が殺到。
今回は、話題のツイートの真相と、なぜ六甲バターがバターを作らずにチーズの王様になれたのか、その裏側を酪農歴10年のプロの視点で分かりやすく解説します。
1. 衝撃!六甲バター公式の「告白」とは?
事の発端は、2025年12月13日。六甲バター株式会社が創立77周年を迎えたその日に、公式X(旧Twitter)で投稿された内容でした。
「社名は六甲バターですが、実はバターを作ったことは一度もありません… #いいにくいことをいう日」
(出典:六甲バター公式Xアカウントより)
このユーモラスな投稿は瞬く間に拡散され、数千件以上の「いいね」を獲得。ニュースサイトでも取り上げられる事態となりました。
なぜ社名が「六甲バター」なの?
バターを作っていないのに、なぜ社名に入っているのでしょうか?その歴史は創業当時に遡ります。
- 1948年:「平和油脂工業株式会社」として創業。当時はマーガリンが主力。
- 1950年:植物油を主原料とした商品「マーガリン 六甲バター」が大ヒット。
- 1952年:ヒット商品にあやかり、社名を「六甲バター株式会社」に変更。
つまり、「バターのような美味しいマーガリン」という商品名が、そのまま会社名になったというのが真相です。
2. 【酪農家が解説】なぜバターを作らなかったのか?
ここからが本題です。多くの人が「じゃあ、これからバターを作ればいいのに」と思うかもしれません。しかし、酪農の現場を知る私からすれば、それは非常にハードルが高いことなのです。
🐮 みやむーの「酪農家視点」解説
六甲バターさんがバターではなく「プロセスチーズ」や「マーガリン」に特化したのは、経営として天才的です。理由は以下の2点にあります。
① バターを作るには大量の生乳が必要
バターの歩留まり(原材料からできる製品の量)を知っていますか?実は、バター1kgを作るのに、約20kg以上の生乳が必要です。乳脂肪分だけを使うため、非常に効率が悪いのです。
戦後の食糧難や、生乳生産が不安定な時期に、安定してバターを作り続けるのは至難の業でした。
② 油脂加工技術の強みを活かした
六甲バターのルーツは油脂加工です。生乳の生産量に左右される「バター」よりも、輸入チーズなどを原料として加工・ブレンドする「プロセスチーズ」の方が、彼らの得意な技術を活かせます。
結果として、季節や天候に左右されず、安定的においしい商品を届けることに成功したのです。
3. QBBチーズが「国民食」になった理由
バターを作らない代わりに、六甲バターが全力を注いだのがチーズです。

1972年に発売された「Q・B・B」ブランド(Quality’s Best & Beautifulの略)は、今や年間9億本以上売れるベビーチーズのド定番となりました。
社名の「バター」という響きが持つ「濃厚でクリーミー」なイメージが、逆にチーズブランドとしての信頼感を高める結果になったとも言われています。まさに逆転の発想ですね。
4. SNSでの反応「脳がバグるけど好き」
今回の告白に対し、SNSでは驚きと共に温かいコメントが溢れています。
- 「脳がバグる…QBB食べてるのに社名意識してなかった!」
- 「嘘だろ…スーパーで六甲バター探したことないけど、確かにないわ」
- 「バター作ってないのに六甲バターって、最高のブランディングじゃん」
ネガティブな意見はほとんどなく、「正直で面白い」「QBBチーズは神」といった、ブランドへの愛着を再確認する声が多く見られました。
5. まとめ:バターがなくとも愛される理由がある
記事のポイントまとめ
- 六甲バターは77年間、一度も本物のバターを作ったことがない。
- 社名の由来は、創業当時のヒット商品「マーガリン」の名前から。
- 酪農視点で見ると、生乳確保が難しいバターを避け、加工技術を活かせるチーズに特化したのは賢い選択。
私たち酪農家が育てた牛の乳が、バターだけでなく、様々な形のチーズとして食卓に届くのはとても嬉しいことです。
六甲バターさんの「いいにくいこと」の告白は、むしろ私たち消費者に「企業努力への敬意」を感じさせるきっかけになりました。
今日の晩酌やおやつには、ぜひQBBのベビーチーズを手に取ってみてください。そのクリーミーさの裏にある、77年の歴史を感じられるかもしれませんよ!





