牛乳からチーズやヨーグルトを作ると必ず出る副産物「ホエー(乳清)」。栄養価が高い一方で廃棄が問題になっています。本記事では、ホエーの基礎知識、酪農現場での課題、実際の活用事例、家庭でできるレシピや保存のポイントまで、分かりやすく解説します。

ホエーは牛乳からチーズやヨーグルトを作ると必ず出る副産物
ホエー(乳清)とは?:基礎と酪農での発生過程
ホエー(英語:whey、和名:乳清)は、牛乳からチーズやカッテージチーズ、ヨーグルトを作る際に分離される透明〜淡黄色の液体です。牛乳の固形成分(カード)を取り除いた残りがホエーで、実は牛乳の約80〜90%はこの水分です。
酪農現場での位置づけ
チーズ製造量が増えると、ホエーの発生量も増加します。小規模〜中規模の酪農ではこのホエー処理が経営課題になっており、未利用のまま廃棄されたり周辺環境に影響を与えたりするケースが少なくありません。

牛乳の約80〜90%がこの水分なんです!
ホエーの栄養価と健康面のポイント
ホエーは「ホエイプロテイン」として知られる良質なタンパク質を多く含み、必須アミノ酸のバランスが良い点が特徴です。また、乳糖、ミネラル(カルシウム・カリウムなど)、ビタミン類も含んでいます。 ただし、健康効果を強く断言する際は慎重に扱う必要があります(効果は利用法や摂取量で変わります)。
- 主成分:ホエイタンパク、乳糖、ミネラル
- 用途:プロテイン原料、発酵飲料、家畜飼料の補助
POINT:ホエーは高栄養ですがそのまま大量に流すと水質汚濁の原因になります。活用法・処理法を考えることが重要です。

ホエーには良質なホエイプロテインが豊富!
酪農におけるホエー廃棄問題と経営への影響
ホエーの未利用・不適切処理は環境負荷(高生物化学的酸素要求量:BOD)を引き起こしやすく、近隣河川や下水系へ影響を与える恐れがあります。さらに、廃棄コストや処理設備投資は小規模経営の負担になり得ます。
課題の背景(現場視点)
- チーズ製造の増加によりホエーの発生量が増加
- 処理インフラ(濃縮設備、発酵設備等)を持たない農家が多い
- 法規制や自治体ルールが地域で異なるため対応が煩雑

ホエー廃棄は環境負荷に直結!
ホエーの活用事例(現場と加工)
実際に現場で取り組まれている活用法をまとめます。
1) ホエー豚(飼料用途)
ホエーを養豚の飼料に混ぜることで給餌コスト削減・肉質改良に繋げる事例があります。適切に希釈・発酵させることで保存性を高めます。飼料として使う際は塩分・pH管理、保存性の確認が必須です。
2) 乾燥・濃縮によるプロテイン素材化
ホエーを濃縮・乾燥して粉末化(ホエイプロテイン)すれば高付加価値商品になります。設備投資は必要ですが、外部加工業者との連携で小規模でも実現可能です。
3) ブラウンチーズ・お菓子等の加工食品
ホエーを煮詰めて作る「ブラウンチーズ」や、ホエーを使った焼き菓子・ドリンクへの転用で観光資源や付加価値商品を作る事業も増えています。加工で付加価値を付けることで、地域ブランドの形成にもつながります。
4) 発酵・飲料化(ホエイ酒など)
発酵のコントロールが難しいですが、アルコール飲料や機能性ドリンクへの応用も試されています。食品として販売する場合は食品衛生法などの規制遵守が必須です。
家庭でできるホエー活用レシピ(簡単・安全)
自宅でヨーグルトの上澄みやチーズの副産物として得られたホエーは、捨てずに次のように使えます。食品衛生には気をつけてください(保存は冷蔵・短期が原則)。
ホエードリンク(夏向けリフレッシュ)
- ホエー 150ml をグラスに入れる
- 冷凍ベリーやバナナを加えてブレンダーで混ぜる
- お好みでレモン汁小さじ1を加える(味を引き締める)
パン生地への利用(もちもち食感)
パンの仕込み水の一部をホエーに置き換えると、風味と食感が向上します。塩分や酵母量は調整してください。
ホエイピクルス(簡易保存食)
野菜をホエーに漬けて冷蔵庫で一晩。乳酸発酵が進みやすく、さっぱりした味わいになります。

家庭で捨てがちなホエーを美味しく再利用
酪農家向け:現場で実行する際の実務ポイント
ホエーを現場で活用するための実務上の注意点です。
- 保存・衛生:ホエーは微生物増殖が早いため冷却保存や即時処理(濃縮・発酵)が望ましい。
- 濃度管理:直接畜舎散布などは避け、希釈や発酵処理でBODを下げる。
- 設備連携:濃縮や乾燥は設備負担が大きいため、地元の加工業者や共同組合と連携する方法が効率的。
- 法令・規制:食品として販売する場合は表示・検査等の法規制確認が必要。自治体窓口に相談を。
現場での実施前に、まずは小ロットで試験的に運用し、腐敗リスクや近隣への影響を確認する「段階的導入」をおすすめします。

ホエーは冷却・即時処理で微生物増殖を防ごう!
FAQ(よくある質問)
Q:ホエーはそのまま田畑に撒いてもいいですか?
A:高濃度のまま大量散布すると土壌や水質へ悪影響を与える可能性があります。希釈や発酵処理、専門機関のアドバイスを受けてください。
Q:家庭用のホエーはどのくらい保存できますか?
A:冷蔵(4℃以下)で1〜3日を目安に、長期保存する場合は加熱殺菌や冷凍保存、または発酵処理を検討してください。
現場の声と次の一手(まとめと行動提案)
ホエーは「廃棄物」ではなく「資源」です。小さな取り組み(ホエー豚試験飼料、地域加工連携、試作商品)を積み重ねることで、廃棄コストの削減と収益の多角化が可能になります。まずは以下のアクションから始めてみてください。
- 週1回の小ロットでホエー利用の試験を開始する
- 地元の加工業者や農協に濃縮・加工の相談をする
- 地域での共同設備(濃縮・発酵タンク)導入の可能性を検討する

ホエーは廃棄物じゃない、立派な資源!
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免責:本記事は現場での経験に基づく一般的な情報提供を目的としています。特定の処理法・製品の利用や法令の解釈については、専門機関や行政窓口へ確認してください。