北海道の新鮮な牛乳やヨーグルトが、出荷当日に飛行機で那覇へ運ばれ、翌日には沖縄の店頭に並ぶ──。2025年に本格化したANAとセコマ、野嵩商会、DNPによる共同プロジェクトは、高性能のDNP断熱ボックスと旅客機の貨物スペース活用で実現しました。本記事では、輸送ルート・技術の仕組み・参加企業の役割、そして地域経済や消費者にもたらすメリットを初心者にも分かりやすく解説します。
プロジェクト概要(要点)
2025年7月7日、全日本空輸(ANA)、セコマ、野嵩商会、大日本印刷(DNP)の4社は協働し、北海道で製造した牛乳・ヨーグルト・デザート類を新千歳空港から那覇空港まで即日空輸し、翌日沖縄で販売する取り組みを開始しました。
ポイントは主に次の3つです:
- 輸送ルート:新千歳→羽田経由→那覇(旅客便の貨物スペース利用)。
- 対象商品:サロベツ牛乳、北海道生乳100%ヨーグルト、ミルクプリン等(今後拡大予定)。
- 技術:DNPの電力不要の「多機能断熱ボックス」を採用。コンテナ型でパレット収納が可能、従来比で輸送量を約2倍に拡大。
輸送の仕組みと技術 — DNP多機能断熱ボックスとは?
航空輸送で最大の課題は「温度管理」と「効率」。今回採用されたDNPの多機能断熱ボックスは、高性能断熱材と高い気密性を持つ設計で、輸送中に電力を使わずに一定温度を長時間保つことができます。これにより、旅客機の床下スペースを使った安定的な輸送が可能になりました。
DNPボックスの特徴
- 真空断熱材など高性能素材で長時間の保冷が可能。
- 電源を使わないため空港〜店舗までの物流全体での環境負荷が低い。
- パレットがそのまま入るコンテナ型設計で、箱単位より輸送効率が良く輸送量が増加(従来比約2倍)。
結果として、従来の稚内発ルートでの運用に比べ、機材を大型化した新千歳発ルートへ切り替えることでコンテナ単位での輸送が可能になり、商品ラインナップと輸送量を大幅に拡大しています。
参加企業の役割をわかりやすく解説
ANA(輸送)
ANAは旅客便の床下貨物スペースを活用して即日輸送を担当。新千歳発の大型機材の利用でコンテナ単位の輸送を実現しました。
セコマ(商品製造)
セコマは北海道(豊富町・札幌市)の工場で牛乳・ヨーグルト・デザート類を製造。北海道ブランドの乳製品を沖縄へ供給します。
野嵩商会(販売)
那覇の小売チャネル(フレッシュプラザユニオン等)を通じて、到着翌日から販売・陳列を行います。沖縄での売れ行きは既に好評との報告もあります。
DNP(技術提供)
DNPは断熱ボックスの開発・供給を担当。保冷性能を確保しつつ輸送効率を高めるコア技術を提供しています。
期待される影響:地域、消費者、環境の視点から
1) 北海道側:販路拡大と収益機会
地方の酪農家にとって、遠隔地へ「新鮮なまま」届けられる販路が拡大することは安定的な需要創出につながります。特に生鮮乳製品は鮮度が価値を左右するため、空輸による付加価値は大きいです。
2) 沖縄側:消費者メリットと食の多様化
沖縄では北海道の濃厚な牛乳や加工乳製品が人気です。即日空輸により品質低下を抑えた商品が翌日店頭に並ぶことで、消費者の満足度とリピートにつながりやすくなります。
3) 環境・物流効率:再利用可能な保冷技術と空きスペース活用
電力を使わない断熱ボックスと、旅客便の床下空きスペース活用により、従来のトラック輸送を代替することでCO2削減や輸送効率化に寄与する可能性があります。さらに、「2024年問題(輸送能力不足)」への対策モデルとも期待されています。
よくある質問(Q&A)
Q:本当に「翌日販売」できるの?
A:はい。新千歳発の旅客便貨物スペースとDNPの断熱ボックスを組み合わせることで、出荷当日に那覇へ到着し、翌日には店舗で販売する運用が可能です。実運用は既に開始されています。
Q:電力不要のボックスで保冷は十分?
A:DNPの製品は高性能断熱材と気密設計により長時間の温度保持が可能とされており、実務での採用事例が増えています。ただし、極端な高温・長時間の放置は避けるなど運用ルールの管理が重要です。
Q:これ、他の商品にも広がる?
A:はい。医薬品や冷蔵品の長距離輸送、都市間の鮮度流通など幅広い応用が想定され、将来的には頻度と品目の拡大が見込まれます。
まとめ:物流×技術で「食の鮮度」を地方間でつなぐ
- 何をしているか:北海道で作られた乳製品を新千歳発→羽田経由→那覇着の旅客機貨物スペースで即日空輸し、翌日販売する取り組み。
- コア技術:DNPの電力不要「多機能断熱ボックス」による長時間保冷とパレット対応で輸送効率を向上。
- 効果:輸送量は従来比で約2倍に拡大。鮮度を保ったまま遠隔地販売が可能になり、北海道の販路拡大と沖縄の消費者メリットを両立。
- 社会的意義:「物流2024問題」への対策モデルとしての可能性があり、他食品や地域への横展開が期待される。
今回の取り組みは「航空輸送」「高断熱ボックス」「地域の販売網」を組み合わせた実践例で、北海道の酪農産品を遠隔地へ“鮮度のまま”届ける新たなモデルです。消費者の選択肢が増え、生産者の販路が広がる好循環につながる可能性があります。今後、輸送回数や取扱商品数の拡大が期待されます。
出典・参考リンク
- 大日本印刷(DNP):ANA×セコマ×野嵩商会×DNP プレスリリース(取り組み開始/DNP多機能断熱ボックスの説明)。
- ANA Cargo:プロジェクト説明(新千歳発→那覇、開始日等の公式発表)。
- AviationWire:プレス報道(ルート切替・輸送量2倍の解説)。
- PR TIMES:共同リリースの転載記事(取り組みの概要)。
- LOGI-TODAY / LOGI-BIZ 等物流系ニュース:導入効果や今後の展望。
免責事項:本記事は公開情報(企業プレスリリース、報道等)をもとに筆者がまとめた解説です。商品・サービスの詳細や販売状況は変動する可能性があります。掲載情報の正確性は最大限注意しましたが、最終的な確認は各社公式発表をご参照ください。
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