令和5年(2023年)の公的統計を基に、「日本の肉牛生産量ランキング」を都道府県別に整理しました。北海道が頭数・産出額で存在感を示す一方、鹿児島・宮崎など九州勢も和牛の強みで上位を占めます。本記事ではトップ10の数値、産出額との違い、さらに世界比較と今後のトレンドを現場目線で解説します。
この記事の要点
- 全国の肉用牛飼養頭数(令和5年)は約2,687,000頭。トップは北海道(566,400頭、シェア21.1%)。
- 上位には鹿児島・宮崎・熊本など九州勢も名を連ね、和牛生産の強さが見える。
- 産出額では北海道が約1,224億円で1位(2023年)、鹿児島が約1,208億円で続く。
- 世界の牛肉生産量(枝肉換算)は約7,626万トン(2023年)。日本は約47.8万トンで中位、輸入依存が高い。

都道府県別:肉牛飼養頭数ランキング(令和5年/2023年)
以下は公式統計に基づく飼養頭数ベースの上位10県です(単位:頭)。都道府県別肉牛飼育頭数を一目で比較できる表にしています。
順位 | 都道府県 | 飼養頭数 | シェア |
---|---|---|---|
1 | 北海道 | 566,400 | 21.1% |
2 | 鹿児島県 | 357,800 | 13.3% |
3 | 宮崎県 | 260,200 | 9.7% |
4 | 熊本県 | 139,100 | 5.2% |
5 | 岩手県 | 120,500 | 4.5% |
6 | 栃木県 | 114,200 | 4.3% |
7 | 茨城県 | 111,200 | 4.1% |
8 | 群馬県 | 109,200 | 4.1% |
9 | 千葉県 | 100,500 | 3.7% |
10 | 青森県 | 89,900 | 3.3% |
全国合計:2,687,000頭(令和5年) |

解説:北海道の優位は、広大な飼養面積と乳・肉両方を扱う経営の混在に起因します。九州(鹿児島・宮崎・熊本)は歴史的な和牛生産の中心で、ブランド牛の母体が集中しています。
産出額の視点:飼養頭数とは異なる県別順位
飼養頭数が多い県が常に産出額1位とは限りません。実際に2023年は産出額で北海道が約1,224億円と高く、鹿児島が約1,208億円で続きました。これは1頭あたりの価格(和牛比率)や出荷形態、加工・流通の付加価値が影響しています。

注目ポイント
- 和牛比率の高さ → 県ごとの1頭あたり産出額を押し上げる。
- 交雑種・ホルスタイン由来の肉牛 → 安定した量を供給し、頭数では優位だが産出額は県によって差が出る。
- 地場加工・産地ブランド → 地元での付加価値化が進む県は産出額で上回る傾向。
世界比較:日本の位置付け(牛肉生産量と輸入依存)
世界全体の牛肉(枝肉換算)生産量は2023年に約7,626万トンに達しました。その中で日本の生産量は約47.8万トン前後とされ、国際的には中位の規模にとどまります。上位国はアメリカ、ブラジル、中国などで、これらは大量生産・輸出主体です。
ポイントは、日本は高品質な和牛で国際的な評価を受ける一方、生産量面では輸入に依存している点です。生産規模の差は国内需給と価格形成に影響を与え、飼料コストや為替変動が経営に直結します。
トレンド分析と今後の展望
令和5年のデータから読み取れる中長期的トレンドを整理します。
1. 地域別の「役割分担」が明確化
北海道は大量供給と産出額で存在感を高め、九州は和牛ブランドの供給源としての地位を維持しています。地域によって「量」か「質」かの重点が分かれる傾向が強まっています。
2. 交雑牛の存在感
和牛価格の変動がある中で、交雑牛やホルスタイン由来の肉牛は安定供給面で重要です。経営安定化の一助となっています。

3. 経営の集約とIT導入
規模拡大や飼育管理の高度化(センサ、データ管理)により、1戸当たりの生産性向上が進んでいます。特に北海道の一部大規模経営では顕著です。
4. リスク要因
- 飼料価格上昇(輸入飼料依存)
- 人手不足と高齢化
- 市場(消費)動向の変化
まとめ:実務者目線の結論と提言
- 2023年の全国肉用牛飼養頭数は約2,687,000頭。トップは北海道(約566,400頭)。
- 飼養頭数と産出額は一致しない:産出額は北海道(約1,224億円)が1位、鹿児島が接近。
- 九州は和牛ブランドの供給源として引き続き重要な役割を果たしている。
- 国際比較では日本は生産量で中位(約47.8万トン)で、輸入依存が高い点が課題。
- 政策・現場の焦点は「付加価値化」「飼料コスト対策」「デジタル化」「人材育成」にある。
「日本の肉牛生産量ランキング」を見ると、2023年時点で北海道が頭数・産出額ともに強く、九州勢(鹿児島・宮崎・熊本)は和牛を中心に重要な役割を果たしています。一方で国際比較では生産規模で上位国と差があり、国内市場は輸入依存の構造を抱えています。
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現場・政策の観点からは、以下が重要です:
1) 地域ブランドの強化と付加価値創出、2) 飼料やコスト変動への備え(リスクヘッジ)、3) デジタル技術導入による生産性向上、4) 若手の参入支援と人材育成。
参考出典:農林水産省「畜産統計(令和5年)」ほか公的統計。記事内の数値は公開データを基に作成しています。
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