本記事では、“使える”道端の草・牧草地の雑草、さらには牛にとって危険な有毒植物をまとめ、効率的な自給飼料活用と安全管理のポイントを解説します。前回の記事はこちら↓

使える草・危ない草を見分けることが、安全な飼養の第一歩!
菜の花(ナタネ)も実は“使える”植物
春になると道端や畑の隅に黄色い花を咲かせる菜の花。見た目が華やかなので観賞用と思われがちですが、実は農業にも役立つ植物です。

菜の花からは**菜種油(なたね油)**が搾れますが、その搾油後に残る「菜種粕(なたねかす)」は、牛の飼料としても有用です。
菜種粕は大豆粕ほど消化はよくありませんが、
- CP(粗タンパク質)含量が高い
- アミノ酸組成が良い
といった特徴があり、特にルーメン微生物の活性を高める補助飼料としても活用されています。価格も比較的安価なため、コストを抑えた配合飼料設計にも役立ちます。

菜の花って、見てキレイなだけじゃないんだ…! 牛の飼料にもなるなんて✨
クマザサも立派な自給飼料
もうひとつ、見逃せないのがクマザサ。
山間部に多く見られるイネ科の植物で、パンダの好物としても有名ですね。

このクマザサも、実は反芻動物に向いた繊維源として評価されており、特に
- 山地酪農
- 放牧酪農
といったスタイルでは、自給飼料としての経済性が高いとされています。
刈り取り・乾燥・ロールラッピング(サイレージ化)することで、年間を通して給与が可能になります。ただし、成分的には繊維質が多く栄養価はやや低めなので、他の飼料とバランスを取ることが大切です。

山地&放牧酪農では“自給飼料”としてコスパ高!
牧草地で気をつけたい雑草たち
放牧地や草地管理をしていると、意外なほどたくさんの雑草が顔を出します。
今回はその中でも特に注意したい「ギシギシ」をはじめ、いくつかの草をご紹介します。
ギシギシ(スイバの仲間)
広い葉をもち、牛がまったく食べない上に、周囲の牧草への日光も遮ってしまうため、非常に厄介な雑草です。しかも、掃除刈りでは根絶が難しいのが特徴。

さらにやっかいなのが「埋土種子(まいどしゅし)」としての性質。
これは、発芽能力を保ったまま土中で休眠している種子のことで、草地更新の際に播種床を耕すと、一斉に発芽してしまいます。
そのため、
- 裸地の発生 → ギシギシの発芽
- 草地更新時の耕起 → 埋土種子の呼び起こし
- ギシギシがまた種子を落とす → 負のループ
というように、草地更新のたびにギシギシが増えていくという悪循環が起きやすいのです。
🧠 ポイント:
・更新前のギシギシ除去
・播種後の初期管理(光が当たらないように)
が、草地管理成功のカギになります!

ギシギシ、牛が食べないだけでなく、日光を遮っちゃうなんて…こんな雑草、ほんと厄介だよね
セイヨウタンポポ

一見可愛らしい花を咲かせますが、牧草地では雑草扱い。
タンポポの仲間は繁殖力が高く、種子が風で広く飛ぶため、放っておくとあっという間に拡がります。
牛が食べることはありますが、栄養価は高くなく、良質な牧草の確保という点では邪魔になる存在です。

放置するとあっという間に牧草地を占領しちゃうから、早めに管理が必要!
そのほかの草たち
牧草地の春には、以下のような草もよく見られます:
- ヒメオドリコソウ(シソ科)
→ 紫色の花をつける雑草。越冬性で早春に繁茂しやすい。 - ナズナ(ぺんぺん草)
→ 雑草として扱われるが、早春に群生することも。可食部もあるが嗜好性は低い。 - オオイヌノフグリ
→ 青い小花が可愛いけど、牧草の中に入り込むと景観や草地整備の面で厄介。




牧草地じゃない道端にもいろんな種類の草が生えているよ!
道端に生えているけど、牛にとっては“危険”な植物も
ここまで、役立つ草や雑草について紹介してきましたが、中には牛にとって有毒な植物も存在します。
ワラビ
春の山菜として有名なワラビですが、牛にとっては非常に危険な植物です。

🧪 ワラビ中毒とは?
ワラビに含まれるプタキロサイドという成分が、反芻動物に以下のような深刻な中毒症状を引き起こします。
- 貧血
- 血尿・血便
- 血液凝固不全(出血が止まりにくくなる)
これらの症状は、摂取後数日〜1週間程度で現れることが多く、特に大量に摂取した場合は致命的になることもあります。
🚩 注意すべきポイント
- 生のままでも、乾草やサイレージに混入しても中毒の危険あり
- 若草と間違えて牛が食べてしまうことがある
- 特にワラビが群生するような放牧地では注意

ワラビに含まれるプタキロサイドは、貧血や血尿、血便を引き起こすことがあるので、牛が食べないように注意!
まとめと次のステップ
- 自給飼料として利用できる植物(菜の花・クマザサ)はコスト削減と栄養補給に役立つ。
- 雑草管理は早期発見と開花前刈取が鍵。ギシギシ・タンポポは特に要注意。
- 有毒植物の混入リスクを回避し、牛の中毒事故を防止。
本記事を参考に、道端の草や牧草地の雑草を戦略的に管理し、飼料コスト削減と牛の健康維持を両立しましょう。

牛のとって美味しい草もあれば有毒な草もあるので見極める知識をつけようね!
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