牛の跛行を防ぐ5つのポイント|原因から治療・予防まで

牛の跛行予防5つのポイントを解説するホルスタインの情報画像 酪農
跛行を防ぐための5つの対策ポイントを紹介。
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酪農の現場で頭を悩ませる「牛の跛行」。蹄のトラブルは牛自身のストレスや痛みを招くだけでなく、乳量や採食量の低下、繁殖成績の悪化、さらには市場価値の大幅ダウンにもつながります。本記事では、「跛行とは何か」から「原因」「診断方法」「治療」「予防策」「経済的影響」までを具体例とともにご紹介。今日からすぐ取り入れられる対策で、牛群の健康と農場の収益性向上を目指しましょう。

牛さん
牛さん

乳量・繁殖・市場価値まで影響するなんて…本気で対策が必要だね!


1. 牛の跛行とは?

**跛行(はこう)**とは、牛が蹄(ひづめ)の不調や脚の痛みにより正常に歩けなくなる状態を指します。放置すると採食量の低下、乳量減少、繁殖成績の悪化につながるほか、市場での評価も大幅に下がる深刻な問題です。

  • 歩行スコア:1~5段階で評価。1が正常、5が立つのも困難な重度跛行。
  • 主な影響:乳量の低下、採食量減少、繁殖能力の低下、牛の市場価値が最大50%減少
牛さん
牛さん

牛の歩き方、毎日見てる?その観察が対策の第一歩!


2. 主な原因とメカニズム

跛行を引き起こす要因は複数あります。

原因メカニズム
放牧地不足・運動不足運動が不足し、蹄底の自然なすり減りが起こらず、ひび割れや変形が発生
硬いコンクリート床・床材の不良滑り・衝撃によって蹄壁や白線に傷がつき、感染リスク増大
過密飼養長時間立ち続けることで蹄底潰瘍や蹄周囲の炎症が起こりやすい
高乳量品種(例:ホルスタイン)体重増加に伴う蹄への負荷増大で、蹄病リスクが高まる
削蹄(蹄トリミング)不足蹄の過成長により体重が特定部位に集中し、ひび・変形を誘発

※「白線病」は蹄壁と蹄底の隙間に細菌が侵入して炎症を起こす病気です。

牛さん
牛さん

過密飼養→長時間立ちっぱなし→蹄底潰瘍リスクが上昇!

Pastured dairy cows grazing freely in a green open field for animal welfare and natural dairy farming
緑豊かな牧草地で放牧される乳牛

3. 症状チェック&診断

跛行スコアリング方法

  1. スコア1:背中は水平、歩幅・リズム正常
  2. スコア2:背中が軽く弓状、歩幅がやや短い
  3. スコア3:明らかな跛行、患肢をかばう
  4. スコア4:患肢をほぼ着地せず歩行
  5. スコア5:立つ・歩くが困難
乳牛の跛行スコア評価基準を示す図解
乳牛の跛行を5段階で評価する跛行スコアの基準

追加診断

  • 視診・触診:白線病や蹄壁の裂傷、蹄間部の腫れを確認
  • 動作観察:後退や回旋で痛みのある脚を特定
  • 超音波・X線検査:骨折や深部感染の評価
  • 血液検査:CK、GOT、Ca、Mgなどで全身状態を把握
牛さん
牛さん

視診や触診で“白線病”や“蹄の裂け”まで分かるんだ!


牛の蹄冠部が腫れて炎症を起こしている様子の拡大写真
牛の蹄冠部に見られる腫れと炎症の症状

4. 治療法:早期対応で完治を目指す

  1. 削蹄
    • 専門家による年2~4回のメンテナンスで蹄形状を正常化
  2. 局所治療
    • OTC(オキシテトラサイクリン)軟膏を使用し、感染部位を清潔に保つ
  3. 厩舎安静管理
    • 歩行スコア4以上は隔離して安静を確保。スコア3でも経過観察。
  4. 薬物療法
    • NSAIDs(消炎鎮痛剤)や抗生物質の全身投与。例:セファゾリン注射、デキサメタゾン注射
牛さん
牛さん

削蹄=蹄のバランス調整!形が崩れる前に対処が重要!

ポイント:早期発見・早期治療が完治のカギ。スコア2のうちに対応すると、回復期間を大幅に短縮できます。


オキシテトラサイクリン — テトラサイクリン系抗生物質の軟膏
牛の感染症治療に使用されるテトラサイクリン系抗生物質、オキシテトラサイクリン

5. 予防策:日常管理でリスクを抑制

  • 放牧・運動:1日1~2時間、放牧地または運動スペースを開放
  • 床材改良:ゴムマットや敷料を敷設し、蹄への衝撃と滑りを低減
  • 削蹄ルーチン:年2~4回、専門家に依頼し蹄形状をチェック
  • 飼養密度管理:1頭あたり最低6㎡以上を目安に、十分な横臥スペースを
  • 定期スコアリング:毎週・隔週で歩行チェックを実施し、記録を残す
牛さん
牛さん

定期スコアリングで“跛行の兆候”を見逃さない!


6. 経済的影響とコスト対策

項目影響・目安
乳牛の市場価値跛行発生で最大50%減少
乳量減少10~20%程度の減少(歩行痛による採食量低下)
繁殖成績悪化分娩間隔の延長、受胎率低下
治療・管理コスト削蹄・隔離施設・薬剤費用で年間数千円~数万円/頭

コスト抑制のコツ:日常のスコアリングと簡易処置(軟膏塗布、ヨーチン塗布など)で、重症化を防ぎ高額治療を減らしましょう。

牛さん
牛さん

歩行痛→採食量低下→乳量10~20%ダウン


7. まとめ

この記事のまとめ

  • 跛行の本質:蹄の疾患や環境ストレスによる歩行障害で、生産性・市場価値に直結。
  • 原因対策:放牧・運動不足、硬い床面、過密飼養、品種特性、削蹄不足を改善。
  • 診断のコツ:歩行スコア(1~5)と視診・触診、追加検査で早期発見。
  • 治療法:年2~4回の削蹄、OTC軟膏、セファゾリン・デキサ注射、厩舎安静で完治をサポート。
  • 予防ルーチン:放牧時間確保、床材改良、定期削蹄、飼養密度管理、定期スコアリングを実施。
  • 経済面:跛行牛は市場価値約50%減、乳量・繁殖成績低下。日常管理で重症化を防ぎ、コストを抑制。

これらを継続的に実践し、持続可能な酪農経営と牛の福祉向上を両立しましょう。

牛さん
牛さん

牛の快適性を高めて“持続可能な酪農”を目指そう!


※本記事の内容は執筆時点の情報に基づきます。
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この記事を書いた人

神奈川県横浜市の非農家に生まれる。実家では犬を飼っており、犬部のある神奈川県立相原高校畜産科学科に進学。同級生に牛部に誘われ、畜産部牛プロジェクトに入部。牛と出会う。

大学は北海道の酪農学園大学に進学。サークルの乳牛研究会にて会長を務める。ゼミでは草地・飼料生産学研究室に所属。

今年で酪農歴10年!現在は関西の牧場にて乳肉兼業農場の農場長として働いています。

【保有免許・資格・検定】普通自動車免許・大型特殊免許・牽引免許・フォークリフト・建設系機械・家畜商・家畜人工授精師・日本農業技術検定2級・2級認定牛削蹄師

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