「ブラウン・スイス」とは、スイス原産の乳牛品種で、世界で最も古い乳牛のひとつとされています。3500~4000年以上前にスイスの湖畔住居から発掘された牛骨と類似しているとされ、歴史的価値が非常に高い品種です。主に高い乳量とチーズ製造に適した乳質で知られており、日本国内でも観光牧場などで飼育例が増え始めています。
- 学名・呼称
- 英語:Brown Swiss
- 日本語:ブラウン・スイス、ブラウンスイス
- 原産地:スイス(アルプス地方)
- 日本での飼育例:栃木県・日光霧降高原大笹牧場などで観光用に主体的に導入
リンク

牛さん
**チーズ向きの乳質が魅力!**ブラウンスイスのミルクはコクが違う

歴史:4000年以上前から続く品種改良の系譜
1. 古代~中世:スイス湖畔住居~修道士による改良
- 紀元前2000~1000年頃
スイスの湖畔住居遺跡(シャーパッハなど)から発掘された牛骨は、現代のブラウン・スイスに酷似していたと考えられています。 - 紀元1000~1200年頃
エインジーデルン修道院(スイスのベネディクト会)に所属する僧侶たちが、家畜管理・飼育技術を向上させる一環として、乳用素質の高い個体を選抜し始めたと伝えられています。 - 中世以降
アルプス周辺の村々で少しずつ改良が進み、**“Braunvieh(ブラウンビーヘ)”**として知られるようになりました。ここでの「ブラウン」は毛色、「ビーヘ」はドイツ語で牛の意です。

牛さん
紀元前からの進化系! スイスの古代牛が現代のブラウンスイスに受け継がれている

2. 19世紀:アメリカへの導入と品種登録
- 1869年
アメリカ・マサチューセッツ州ベロントに、ヘンリー・M・クラーク氏がスイス・シュヴィーツ州から雄牛1頭、雌牛7頭を輸入。これがアメリカにおける最初のブラウン・スイス導入です。 - 1880年
ブラウン・スイス・キャトル・ブリーダーズ・アソシエーション(Brown Swiss Cattle Breeders Association)が設立され、系統登録が開始。 - 1889年
初の公式コウ群登録簿(ファーミスト・ジャーナルの付録など)にブラウン・スイスが掲載されました。 - 20世紀
- アメリカ中西部を中心に飼育頭数が急増し、特に乳質改良が加速。
- 第一次世界大戦以降、ヨーロッパ・南米などでも導入が進み、現在は世界で約700万頭以上(※)が飼育されています。

牛さん
世界700万頭の原点! ブラウンスイスの世界展開はアメリカから始まった
※飼育頭数の最新データは、各国の乳牛協会や農林水産省の公表資料を参照して下さい。
特徴と用途:チーズ製造に最適な「乳質」と「耐久性」
1. 毛色・体格・性質
- 毛色:淡い灰褐色~濃い褐色まで幅があり、目の周囲や鼻周りがクリーム色で縁取られている。
- 体格:
- 雌牛:平均体重約590~640kg
- 雄牛:平均体重約900kg
中型~大型の乳牛に分類され、がっしりとした骨格と筋肉質なボディを持つ。
- 性格:
- 非常に温厚で従順
- 人懐っこく、観光牧場や酪農体験でも安心して扱える
- 好奇心旺盛で、新しい環境にも比較的早く馴染む
- 放牧向き(スイスの山で牧歌的な酪農文化が原産地のため)

牛さん
アルプス生まれの放牧上手! 山地酪農のDNAを受け継ぐ牛

2. 乳量・乳質の数値データ
項目 | ブラウン・スイス | ホルスタイン(参考) |
---|---|---|
年間乳量 | 約10,231kg(22,600ポンド) | 約12,000kg |
乳脂肪率 | 約4.0% | 約3.5% |
乳タンパク質率 | 約3.5% | 約3.0% |
体細胞数 | 低~中程度 | 中~高 |
平均寿命(生産年数) | 12~15年 | 8~10年 |
- 乳頭コメント:
- ブラウン・スイスの乳は乳脂肪がやや高めかつタンパク質含量も豊富なので、チーズ製造向き。
- 小さな脂肪球構造により凝固性が良く、チーズの風味や風格を高める。
- 体細胞数が低め → 乳房炎リスクが相対的に低い傾向。

牛さん
チーズ職人が絶賛! ブラウン・スイスの乳が選ばれる理由

3. 用途別の特徴
- チーズ製造
- エメンタール、グリュイエールなど、スイスチーズの伝統的原料。
- 凝固性が高く、チーズの香りやコクを引き出しやすい。
- 熟成によるチーズの品質安定性にも寄与する。
- 乳製品(牛乳・ヨーグルト・バター)
- 比較的コクがある味わいながら、後味はすっきり。
- ヨーグルトやバターにも適しており、濃厚な食感と風味が好まれる。
- 交配用(改良材)
- 他品種(例:ホルスタイン)との交配により、耐久性・長寿命性と高乳質を両立。
- 例えば、ブラウン・スイス×ホルスタインでは乳量が維持されつつ乳質と穏やかな性格が向上する。
- 二目的(肉用・乳用兼用)
- 一部地域では、地元の肉牛(ブラウンビーフなど)との交配による肉質向上を図り、乳肉兼用としても利用。

牛さん
乳だけじゃなくて肉もOKな二刀流牛って、まさに大谷選手!
日光霧降高原 大笹牧場での体験レポート【実例紹介】
大笹牧場でブラウン・スイスを見学・試食
私は栃木県・日光霧降高原にある「大笹牧場」を訪れ、ブラウン・スイス牛の飼育風景を見学し、濃厚なブラウン・スイス牛乳を使用したソフトクリームを堪能しました。分かりやすいようにポイントをまとめます。

- 丸みのある牛舎と広い放牧地
- 牛舎は天井が高く、通気性を重視した造り。
- 放牧地は緑に囲まれており、牛たちは自由に歩き回れる。
- ポイント:適切な運動スペースがあることでストレスが低減し、乳質向上につながる。
- 牛とのふれあい体験
- ブラウン・スイス牛は温厚で人懐っこいため、触れ合いやエサやり体験も安心。
- 子どもから大人まで楽しめる。
- ポイント:実際に“触れる”ことで、乳牛への理解とファンづくりに貢献し、牧場のウェブサイトへの滞在時間(PV)も伸びやすい。
- ミルク&ソフトクリーム試食
- ブラウン・スイス牛のミルクは「ほんのり甘くてコクがある」印象。
- ソフトクリームは牛乳の風味がダイレクトに感じられ、後味がスッキリ。
- おすすめのオーダー方法:
- レギュラーサイズのソフトクリームを注文
- 併設のショップでブラウン・スイス牛乳(瓶入り)やチーズ、プリンなどのお土産をチェック
- おみやげに最適な乳製品
- ブラウン・スイスチーズ(セミハードタイプ)
- プリン・ヨーグルト(濃厚タイプ)
- ブラウンスイス牛乳

牛さん
人懐っこいブラウン・スイス牛とふれあえるなんて最高の癒し体験!


専門家視点:ブラウン・スイスを導入すべき理由
1. 長い生産寿命と低い維持コスト
- 長寿命性:
ブラウン・スイスは12~15歳まで乳を生産する個体も珍しくなく、長期的に見ると初期投資を回収しやすい。 - 耐久性・健康管理のしやすさ:
体が頑丈で蹄病や乳房炎などのトラブルが相対的に少ないため、医療費や獣医対応コストを抑えられる。

牛さん
医療費かかりにくいなんて、酪農経営の味方すぎる!
2. 乳質の優位性と付加価値化
- チーズ原料性能:
乳の凝固性が高く、塩分や熟成期間に対する耐性も優れているため、チーズメーカーからの需要が安定。 - プロセスチーズ・ナチュラルチーズへの応用:
チーズ用乳原料として、ホルスタインよりも小規模酪農家でも高いマージンが確保できるケースがある。 - 加工品バリエーション:
ヨーグルト、バター、アイスクリームなど、高級乳製品ブランドの原料としても活用可能。
リンク

牛さん
ブラウン・スイスの乳はチーズ作りに最適で需要が安定してるんだね!

3. ブランド化・観光農場との相乗効果
- 観光用途:
温厚な性格を活かして、乳牛とのふれあい体験やジャージー牛乳との飲み比べセットなど、観光牧場の目玉コンテンツにできる。 - 地域ブランド化:
一頭飼育コストはホルスタインに比べるとやや高い場合もあるが、「ブラウン・スイス牛乳」として地域内外にPRしやすい。 - SNSマーケティング:
観光客が撮影シェアしやすいフォトジェニックな放牧風景や、濃厚ソフトクリームの写真はInstagramやTwitterで拡散されやすい。

牛さん
温厚なブラウン・スイス牛とのふれあい体験が楽しそう!
比較表:ブラウン・スイス vs. ホルスタイン
項目 | ブラウン・スイス | ホルスタイン |
---|---|---|
原産地 | スイス(アルプス地方) | オランダ(フリースランド地方) |
年間乳量 | 約10,231kg(0.9~1.0万kg) | 約12,000kg(1.2万kg) |
乳脂肪率 | 約4.0% | 約3.5% |
乳タンパク質率 | 約3.5% | 約3.0% |
体重(雌牛) | 約590~640kg | 約600~700kg |
生産寿命 | 12~15年 | 8~10年 |
体細胞数(SCC) | 低~中程度(乳房健康性が高い) | 中~高程度 |
気候適応性 | 高地・極端寒暖差に強い | 温暖・平坦地向き |
性格 | 温厚で従順、人懐っこい | 比較的活発で動きやすい |
用途 | チーズ製造、乳製品、高付加価値化可能 | 量産乳用、幅広い酪農用途 |

牛さん
ブラウン・スイスは長生き&乳房トラブル少なめで飼いやすい!
まとめ:ブラウン・スイス牛を選ぶべき理由
- 高乳質 × 高乳量
- 乳脂肪約4%、乳タンパク質約3.5%のバランスは、チーズ製造において他品種と比較しても高評価。
- 長寿命で耐久性が高い
- 12~15年まで生産可能。医療コストを抑えられ、長期的なコストパフォーマンスが良好。
- 温厚な性格で観光用途にも最適
- ふれあい体験や乳搾り体験を導入しやすく、観光牧場の集客力アップに貢献。SNSでの拡散効果も見込める。
- 地域ブランド化のポテンシャル
- 「ブラウン・スイス牛乳」「地元○○チーズ」など、地産地消・地域創生と組み合わせたブランディングが可能。
- 初心者~経験者まで幅広く取り組みやすい
- 体質が丈夫でトラブルが少ないので、酪農未経験者でも飼育リスクを抑えやすい。
- 既存の酪農家にとっても、改良材として交配選択することで乳質向上や長寿命化が見込める。

牛さん
ブラウン・スイスは高乳質&高乳量でチーズ作りに最適!
リンク
良くある質問(FAQ)
Q1.ブラウン・スイス牛とホルスタイン牛の違いは?
- A1.乳量ではホルスタインが上回るものの、乳質(乳脂肪・タンパク質の割合)ではブラウン・スイスが優位です。また、生産寿命の長さや耐久性でも差が出るため、チーズ製造や高付加価値乳製品を目指すならブラウン・スイスがオススメです。
Q2.ブラウン・スイス牛はどこで購入できる?
- A2.日本国内ではまだ飼育数が少ないため、北海道・長野県・栃木県などの大規模牧場から紹介を受けるのが一般的です。各地の酪農組合や乳牛協会に問い合わせると、ブリーダー情報が得られます。
Q3.ブラウン・スイス牛の導入コストはどのくらい?
- A3.購入価格は1頭あたり100万円~200万円前後が相場ですが、時期や血統によって上下します。長寿命・耐久性をふまえるとコストパフォーマンスは十分に見合うと考えられます。
Q4.飼育管理で注意すべきポイントは?
- A4.
- 放牧環境の整備:広い運動場や適切なシェルターを用意する。
- 餌質の管理:グラスサイレージや濃厚飼料を適正配合し、乳質向上を図る。
- 繁殖計画:長期的に見た繁殖管理と個体識別を徹底。繁殖成績が全体の生産性に直結する。
【関連記事】
乳牛の5大品種についてはこちら!
※本サイトで紹介している商品・サービス等の外部リンクには、アフィリエイト広告が含まれる場合があります。
コメント