バターと脱脂粉乳の関係とは?在庫問題やコロナ影響まで解説【酪農の裏側】

バターと脱脂粉乳の製造過程と関係性を示すインフォグラフィック。生乳からバター、バターミルク、脱脂粉乳への流れとコロナ禍による在庫影響を表現。 乳製品
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バターと脱脂粉乳(スキムミルク)の深い関係と使い分けガイド

バターと脱脂粉乳は、同じ「牛乳」から生まれる乳製品でありながら、製造工程や成分・用途が大きく異なります。本記事では、バター製造の副産物として生まれるバターミルク(→バターミルクパウダー)が脱脂粉乳とどのように関連し、料理・製菓や栄養面、乳業市場においてどのように活用・影響し合っているのかを専門性の高い視点で解説します。

牛さん
牛さん

酪農の現場では、バターと脱脂粉乳をセットで考える必要があるんだ!


1. バターと脱脂粉乳の基本概要

  • バター:生乳から分離したクリームを撹拌し、水分を切り固形化したもの。乳脂肪分80%以上を含み、リッチなコクが特徴。
  • バターミルク:バターを作る過程で分離される液体部分。粉末化したものを「バターミルクパウダー」と呼ぶ。
  • 脱脂粉乳(スキムミルク):生乳から脂肪分をほぼ100%取り除き、残った水分を乾燥させた粉末。低脂肪・高タンパクで、牛乳とほぼ同等の栄養を持つ。

これら一連の製品は、同じ牛乳を原料にしながら「脂肪を多く残すか、除くか」という方向性で分かれます。そのため、需要の増減や価格動向も互いに関連性が強くなります。

牛さん
牛さん

スキムミルクは“低脂肪でも高タンパク”だからダイエットにも◎なんだね!


2. 生産過程における「つながり」

  1. 生乳の分離:集乳された生乳は遠心分離機で「クリーム」と「脱脂乳」に分かれます。
  2. バター製造:クリームをチャーニング(撹拌)すると、脂肪同士が結合して固形状のバターとなり、残りの液体がバターミルク(酪酸など風味豊かな液体)になります。
  3. 粉末化
    • バターミルクはスプレードライヤーで乾燥し、バターミルクパウダーに。
    • 脱脂乳も同様に乾燥し、脱脂粉乳(スキムミルク)となる。

ポイント

  • バターの生産量が増えればバターミルク(パウダー)の供給も増加。
  • 脱脂粉乳とは「スキムミルク」という同じ製法で作られる別製品。
牛さん
牛さん

バターをたくさん作れば、脱脂粉乳の供給も増える…なるほど連動してる!


3. 成分比較:脂肪分・タンパク質・カルシウム

項目バターミルクパウダー(100g)脱脂粉乳(100g)
エネルギー約390kcal約350kcal
脂質7~8g0g
タンパク質30~32g32~34g
炭水化物45~50g50~52g
カルシウム約900~1,000mg約900~1,000mg
乳化リン脂質(乳化作用)◎ 高い× ほぼなし
  • 脂質:バターミルクパウダーは7~8%含むため、風味・コク重視のレシピ向き。
  • タンパク質・カルシウム:ほぼ同等。栄養補給や高タンパクメニューに活用できる。
  • 乳化作用:バターミルクパウダーはリン脂質を含み、油脂と水分を安定的に混ぜる「乳化」の役割を果たす。
牛さん
牛さん

脱脂粉乳は“脂肪ゼロ”だから、ダイエット中でも安心して使える!


4. 料理・製菓での特性と使い分け

脱脂粉乳のおすすめレシピ例

  • 低脂肪パン生地:脱脂粉乳5~10%を小麦粉に混ぜると、栄養価アップ&鯛焼きのようなミルク風味に。
  • ダイエットスムージー:水で溶かして牛乳代替に。プロテインシェイク感覚でたっぷりタンパク質。
  • ヘルシーケーキ:生クリームや牛乳の一部を脱脂粉乳溶液に置き換えてカロリー削減。

バターミルクパウダーのおすすめレシピ例

  • ふんわりスコーン:小麦粉の10%をバターミルクパウダーに替えると、外はサクッと中はしっとり。
  • クリーミーホワイトソース:バター+小麦粉+水にバターミルクパウダーを加え、コク深いソースに。
  • チョコレートムース:乳化作用で口当たりまろやかに。

使い分けのコツ

  • コク・乳化重視 → バターミルクパウダー
  • 低脂肪・高タンパク重視 → 脱脂粉乳
牛さん
牛さん

使い分けのコツは『コク・乳化重視はバターミルクパウダー』『低脂肪・高タンパクは脱脂粉乳』!


5. 代替利用のメリット・デメリット

メリットデメリット
脱脂粉乳の代替利用・栄養価はほぼ同等・低脂肪でヘルシー・乳化作用が弱く、油分と分離しやすい
バターミルク代替・乳化作用で滑らかな食感・リッチな風味・脂肪分が増え、カロリーアップ・味わいが重くなる場合
  • 脱脂粉乳→バターミルクパウダー:風味不足・食感パサつきのリスク。
  • バターミルクパウダー→脱脂粉乳:乳化不足により、ケーキの泡立ちやパン生地のもちもち感が落ちる場合あり。
牛さん
牛さん

脱脂粉乳は低脂肪でヘルシーだけど、乳化力が弱いのが注意点!


6. 日本における供給・価格調整の仕組み

日本の乳製品市場では、農林水産省(MAFF)と農業・畜産振興機構(ALIC)が生産量および輸入量を調整し、需給バランスを管理しています。

  • 国内生乳生産のフォロー:畜産クラスター事業、乳牛飼養改善プロジェクトなどで生産性向上。
  • 輸入調整:バターや脱脂粉乳の輸入枠を設定し、急激な価格変動を防止。
  • 価格への影響:バター需要増加→生乳価格上昇→脱脂粉乳の原料量減少→脱脂粉乳価格にも波及。

これにより、乳業全体の安定供給が図られ、消費者は安定した価格と品質を享受できます。

牛さん
牛さん

日本の乳製品は政府と業界の調整で安定供給が守られている!


7. バター需要と脱脂粉乳在庫の問題

乳製品の供給バランスを語るうえで避けて通れないのが、「バターの需要増加が脱脂粉乳の過剰在庫を生む」というジレンマです。これは酪農や乳製品業界における構造的な課題の一つであり、日本では特に2014年以降この傾向が顕著になっています。

牛さん
牛さん

バター需要増加で脱脂粉乳の余剰在庫問題が深刻化中。

バターと脱脂粉乳の「表裏一体」の関係

バターを作る際には、乳脂肪を取り出すために大量のクリーム(乳脂肪分)を必要とします。その過程でどうしても「脱脂乳(スキムミルク)」が副産物として大量に発生します。この脱脂乳を乾燥させたものが、脱脂粉乳(スキムミルクパウダー)です。

つまり、バターの生産を増やすということは、自動的に脱脂粉乳の供給も増えることを意味します。これは言い換えれば「バターだけを効率よく作ることができない構造」ということでもあります。

牛さん
牛さん

バターを増やせば脱脂粉乳も自然に増加!生産は切り離せない表裏一体の関係

在庫膨張の原因:バター不足とコロナ禍

2014年以降、日本ではバター不足が頻発しました。輸入制限や酪農家の高齢化、気候要因による生乳不足などが背景にあり、スーパーの棚からバターが消える事態もたびたび発生しました。

このため、政府や業界は「バターの安定供給」を最優先に掲げ、乳脂肪分の確保=バター生産量の増加を推し進めました。しかしその副作用として、バターと一緒に生まれる脱脂粉乳の在庫量が右肩上がりに増加してしまったのです。

さらに拍車をかけたのが、2020年以降の新型コロナウイルス感染症の流行でした。

  • 外食産業や給食、観光業での牛乳・乳製品の需要が激減。
  • 酪農家は廃棄を避けるため、牛乳として出荷予定だった生乳を保存が効く「バター」や「脱脂粉乳」へと加工。
  • 結果として、バターと脱脂粉乳の在庫が同時に増加

この状況により、脱脂粉乳の在庫は2021年に約9.8万トンという異常な水準にまで達しました(※農畜産業振興機構調べ)。

牛さん
牛さん

コロナ禍で外食需要激減、生乳の加工先がバター・脱脂粉乳に集中

在庫問題がもたらす影響

脱脂粉乳の在庫が増えすぎると、以下のような問題が発生します:

  • 在庫維持コストの増大:保管や管理にコストがかかる。
  • 価格下落リスク:在庫放出により市場価格が下がる可能性がある。
  • 酪農家の生乳出荷意欲の低下:価格が下がると利益が減少し、生産意欲を削ぐ。

また、日本は国内需要の調整のために政府が一定量の乳製品を買い上げ、保管・放出を行う「国家備蓄制度」も活用していますが、それでも急激な在庫増には限界があります。

牛さん
牛さん

脱脂粉乳の過剰在庫問題は酪農経営にも深刻な打撃に


今後の展望:需要創出と製品多様化が鍵

脱脂粉乳の過剰在庫を解消するためには、単に在庫を削減するだけでなく、新たな需要を創出する取り組みが必要です。

国内での消費拡大策

  • 学校給食・福祉施設への活用
  • 非常食・保存食としての利用推進
  • 高タンパク・低脂肪製品としてのブランディング強化
  • レシピ開発支援・料理教室との連携
牛さん
牛さん

学校給食や福祉施設での脱脂粉乳活用を推進!

海外輸出の強化

  • 東南アジア・中東・アフリカでは、スキムミルクの需要が高い地域も多く、脱脂粉乳を輸出している事例もあります。政府支援やFTA(自由貿易協定)を活用して、日本の高品質な乳製品を海外に売り込む戦略が求められています。
  • 2025年7月11日には中国への牛乳・乳製品の輸出再開に向けた大きな一歩を踏み出しました。詳しくはこちらの記事をチェック。
牛さん
牛さん

2025年7月、中国への乳製品輸出再開が大きな前進!


まとめ

バターと脱脂粉乳は、製造過程で密接に結びついた「一体不可分」の乳製品です。バターの需要が高まれば、脱脂粉乳も自然に増えます。特にバター不足が問題となった2010年代後半から、脱脂粉乳の在庫は増加傾向をたどり、2021年には過去最大の在庫量に達しました。

この背景には、バターの需給調整の難しさに加え、コロナ禍による外食需要の低下も重なりました。今後は脱脂粉乳の用途開発や海外展開など、新たな価値を見出す取り組みが求められています。

牛さん
牛さん

酪農の持続可能性には付加価値創出が不可欠


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この記事を書いた人

神奈川県横浜市の非農家に生まれる。実家では犬を飼っており、犬部のある神奈川県立相原高校畜産科学科に進学。同級生に牛部に誘われ、畜産部牛プロジェクトに入部。牛と出会う。

大学は北海道の酪農学園大学に進学。サークルの乳牛研究会にて会長を務める。

今年で酪農歴10年!現在は関西の牧場にて乳肉兼業農場の農場長として働いています。

毎日牛乳1L飲んでます!

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