夏の畜舎管理で最も注意したいのが「子牛の熱中症」。高温多湿が続く日本の夏では、THI(温度湿度指数)が65を超えると熱ストレスが発生し、70以上で急激にリスクが高まります。特に下痢や飲水不足、風通しの悪い環境が重なると、わずか数時間で命取りに。この記事を読めば、子牛の体調チェックから予防・治療まで、安心して夏を乗り切る知識が身につきます。

夏の子牛熱中症は急激に進行!早期発見が命を救う
1. 子牛の熱中症とは?
子牛の熱中症は、身体が熱を放出できず、深部体温が上昇して起こる状態です。
- 発生条件:高温多湿(THI ≥ 65)
- 影響部位:呼吸器系・循環器系・中枢神経
特に生後0~3か月の子牛は、体温調整機能が未成熟なため、成牛以上に注意が必要です。

子牛の熱中症は高温多湿で発生、特に生後3か月まで注意!

2. 主なリスク要因と発症条件
- 体調不良(下痢・脱水)
- 下痢で脱水傾向の子牛は、体温上昇を抑えるための血流調整ができず発症リスクが急増します。
- 自由飲水の制限
- 月齢が小さい子牛や槽の位置・高さが合わないと、水を十分に飲めず暑さに弱くなります。
- 環境的要因
- 風通しが悪い牛舎、直射日光が当たる場所ではTHIが一気に上昇。
- 品種特性
- 黒毛和種など被毛が濃くて太陽熱を吸収しやすい品種は、体表温度が高まりやすい。
上記3つが同時に重なると、短時間で重篤化する恐れがあります。

脱水や下痢は子牛の熱中症リスクを急激に高める!
3. 初期症状の見分け方
症状 | 観察ポイント |
---|---|
呼吸数の増加 | 1分間に50回以上(通常は30回前後) |
腹式呼吸の激しさ | お腹を大きく膨らませる動きが目立つ |
ミルク・飼料摂取量減少 | 普段より20%以上の減少 |
体温上昇 | 直腸温38.5~39.5℃を超える場合は要注意 |
元気消失・立ち上がり困難 | 動きが鈍く、よだれやよろめきが見られる |
早期発見には毎日の“5秒チェック”が有効。餌やり・哺乳の際に上記ポイントを必ず確認しましょう。

呼吸数が1分間に50回以上なら、熱中症の可能性大!

4. 即効性のある予防策
- 遮光対策
- 牛舎の窓にすだれや遮光カーテンを設置し、直射日光をカット。
- 換気の確保
- 扇風機を複数台配置し、牛舎内の風速を2m/s以上に維持。
- ミスト冷却
- 高圧ミストで体表面を冷却し、蒸発熱で温度ダウン。
- 給餌・給水の工夫
- 水槽の高さ調整や背丈に合った飲み口で自由飲水を徹底。
- 夜間給餌で涼しい時間帯にエネルギー補給。
- 部分的な“保冷ケア”
- 保冷剤を巻いたタオルを首に巻き、体温上昇を抑制。※簡易かつ即効性◎
コスト対策としては、遮光すだれや扇風機を活用し、ミストシステムはスポット的な導入がおすすめです。

首に保冷剤タオルで即効クールダウンが可能!
✅ 保冷剤を巻いたタオルの使用例【現場での実践】
目的:子牛の頸部を冷やし、過度な体温上昇を抑える応急的な熱中症対策。
方法:
- 保冷剤をタオルで包む(凍傷防止のため必ず布を巻く)
- 子牛の首(頸動脈付近)にマフラーのように巻く
- 15~20分程度装着し様子を観察
- 必要に応じて交換(再冷却して使用可能)
使える場面:
- 外気温が35℃以上で、呼吸数や体温が高くなってきたとき
- 哺乳後や直射日光下から戻った直後のクールダウン
- 扇風機やミスト設備がない環境での代替手段
注意点:
- 弱っている子牛には慎重に様子を見ながら使用
- 低温やけど防止のため、直接皮膚に当てない
- 長時間つけっぱなしにしない

5. 発症時の緊急対応と治療法
- 緊急隔離
- 日陰や風通しの良い場所へ速やかに移動。
- 冷却処置
- 水をかけながら扇風機で風を当て、体温を38℃台に戻す。
- 循環改善
- 獣医師の指導で生理食塩水などの血管内液を投与。
- 支持療法
- ビタミンB群、肝臓保護剤の補給。
- 獣医師フォロー
- 重症例は即日入院/処置を依頼。
冷却は急激に行うとショックを起こす場合があるため、均一に、かつ適度な強さで行うことがポイントです。

重症時はすぐに獣医師の治療を受けて!
6. 日常管理で習慣化すべきチェックポイント
- 毎朝・夕のTHI測定:湿度計・温度計を活用し、65以上なら要注意
- 飲水量の記録:日々の消費量をグラフ化し、異常を早期発見
- 体調カルテの活用:体温・呼吸数・摂取量を記録し、トレンド管理
- 環境メンテナンス:遮光具や扇風機の動作確認を週1回実施
データを可視化すると、いつ、どの牛が、どの環境でリスクを抱えやすいかが一目瞭然。効率的な現場管理につながります。

毎朝・夕のTHI測定で熱中症リスクを見逃さない!
7. まとめと今後の取り組み
子牛の熱中症は、以下の3点が重なるとリスク急増します。
- 下痢による脱水傾向
- 自由飲水ができない環境
- 風通し・遮光不足の牛舎
これらを起点に、毎日の体調チェックと環境整備を徹底しましょう。専門的な対策を講じることで、生産性の低下を防ぎ、子牛の健やかな成長をサポートできます。
夏の厳しい暑さを乗り切り、健康な牛群づくりにお役立てください。

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