子牛の下痢は放置すると脱水により急命に関わる問題に発展することがあるため、早期の適切な対応が不可欠です。本記事では、経口補液剤(ORS)の仕組み・効果・現場での投与タイミング・実務的な混合・給餌手順を、主要製品の比較とともに専門家視点でわかりやすく解説します。獣医師判断が必要なケースや緊急対応のフローも掲載しています。
この記事のポイント(先に要点を確認したい方向け)
- 下痢発症直後の脱水兆候を見逃さず、早期に経口補液剤を投与することが回復率を左右します。
- 経口補液剤はミルクと混ぜて与えないのが基本(目的は電解質・水分補給)。
- 製品ごとに成分と用途(治療向け/予防向け)が異なるため、ラベルと獣医指示を優先してください。
緊急度判定:まずはこのチェックリスト
すぐに投与を検討/獣医師へ相談するサイン:
- 目がくぼむ・眼球陥没
- 皮膚のつまみ戻りが遅い(皮膚回復>2秒)
- 哺乳意欲の著しい低下、ぐったりしている
- 頻回に粘血便や血便がある
上記のうち1つでも該当する場合、経口補液剤の早期投与を検討し、可能な限り獣医師に相談してください。重度脱水やショック症状が疑われる場合は静脈補液が必要です。
経口補液剤(ORS)とは:効果と仕組み
経口補液剤は下痢によって失われた水分と電解質(Na, K等)を補い、腸管での水分吸収を促す製剤です。多くの製品はグルコース(ブドウ糖)とナトリウムの共輸送を利用して、細胞外液の回復を助けます。グリシンや酢酸塩を配合することで吸収効率が改善され、急性期の回復を早める作用が期待できます。

※人用の経口補水液と成分・目的が異なる場合があるため、子牛専用の製剤を用いてください。
いつ与えるか(投与タイミングと頻度)
推奨タイミング
原則として下痢の初期(発症直後)に投与することで効果が高まります。脱水の兆候(上記チェックリスト)を確認したら、速やかに経口補液剤を与えます。重症化が疑われる場合は自己判断で継続せず、獣医に連絡してください。
一般的な投与頻度の目安
- 1日あたり:通常は1〜2回(製品指示に従う)
- 継続日数:軽度で1〜3日、回復が遅い場合は獣医師の判断を仰ぐ
※以下に示す用量は製品ごとの例として提示しています。正確な用量は必ず製品ラベルまたは獣医師の指示を優先してください。
現場での混合・給与方法(実務手順)
- 製品パッケージの指示量を確認する(必ずラベルを優先)。
- 微温湯(体温に近い温度、目安約37〜40℃)2Lに所定量を溶かすと嗜好性と吸収が良い。
- ミルクとは別容器・別時間に与える。ミルクに混ぜない。
- 哺乳器やスポイトで少しずつ与え、飲まない場合は無理に押し込まない。飲水量を観察する。
- 経過観察:6〜12時間ごとに状態を確認し、回復が見えない場合は獣医師へ。
主要製品の現場向け比較(参考例)
| 製品名 | 区分 | 主成分(概略) | 混合例(参考) | 現場での特徴 |
|---|---|---|---|---|
| カーフライトS | 医薬品 | NaCl、KCl、酢酸Na、グリシン | 48g / 2L(例) | 吸収促進処方。治療向けの定番。 |
| エフィドラル | 医薬品(発泡錠) | 電解質各種 | 2錠 / 2L(例) | 溶解が早く嗜好性が高い。 |
| エレクトロプラスA | 医薬品 | 電解質バランス型 | 46g / 2L(例) | 標準的処方で使いやすい。 |
| サラーロン | 医薬品 | 電解質重視 | 80g / 2L(例) | 重度脱水改善を重視した処方。 |
上表は現場での比較参考です。製品の細かな成分・用量はメーカーの最新ラベルを確認してください。

よくある誤解と注意点
- 誤解:ミルクに混ぜれば栄養も補える → 注意:ミルクに混ぜると電解質補給の目的が達成されず、下痢を悪化させる恐れがあります。
- 誤解:経口補液を大量に与えれば良い → 注意:過剰投与は電解質バランスを崩す可能性があるため、指示量を守ること。
- 注意:血便、発熱、著しい元気消失がある場合は速やかに獣医師に相談し静脈補液等の判断を仰ぐ。
緊急時の簡易フロー(現場で使える)
- 下痢を確認 → チェックリストで脱水徴候を確認
- 軽度(元気あり・飲む)→ 経口補液剤を規定量で給与、6〜12時間観察
- 中等度(飲むが元気低下・つまみ戻り遅い)→ 経口補液の頻度を増やす+獣医に連絡
- 重度(起立不能・血便・ショック兆候)→ 速やかに獣医師に搬送・静脈補液を依頼
FAQ(現場でよくある質問)
Q:自宅で塩と砂糖で作る補液は有効ですか?
A:応急処置としては一定の効果が期待できますが、電解質バランスやpH調整など市販の子牛用製剤の方が安全・確実です。可能なら子牛用ORSを優先してください。
Q:いつ獣医師に連絡すべきですか?
A:ぐったりしている、哺乳を全く取らない、血便がある、目が大きくくぼんでいるなど重度徴候が見られたら速やかに連絡してください。
Q:予防的に経口補液を与えることはありますか?
A:高リスク群(集団搬入直後・ストレス要因が大きい群)では予防的に簡易補液を用いることがありますが、常用は推奨されません。獣医と相談のうえ実施してください。
まとめ
- 下痢の初期に脱水徴候を見逃さず、早期に経口補液剤を投与することが回復を大きく左右する。
- 経口補液剤はミルクとは別で与え、製品ラベルと獣医師の指示を優先する。
- 重症例は自己判断せず、速やかに獣医師に相談・静脈補液の検討を行う。
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