乳房炎は、酪農現場で最も多く発生し、乳量や乳質の低下、経済的損失を招く深刻な問題です。本記事では、体細胞数(SCC)、黄色ブドウ球菌(SA)、大腸菌(CO)、環境性ブドウ球菌(CNS)、環境性レンサ球菌(OS)の5大タイプそれぞれの特徴と最新の予防・治療手法をわかりやすく解説します。さらに、私の牧場で実践しているアンドレアス軟膏・セフロキシム軟膏による現場活用術まで具体的に紹介。この記事を読めば、乳房炎対策の全体像がつかめ、損失を最小限に抑えるための第一歩が踏み出せます。

乳房炎は“見逃し厳禁”!早期対応で乳質ダウンを防げます
1. 乳房炎とは?
- 定義:乳牛の乳房に炎症が起きる疾患。
- 発生理由:病原性微生物(主に細菌)が乳房内に侵入し、増殖することで発症。
- 症状:
- 臨床型:乳房の腫れ・熱感・痛み、異常乳汁(水様・血性・凝乳塊)
- 潜在型:見た目は正常だが、SCC(体細胞数)が増加
ポイント:放置すると乳量減少・乳質低下・治療費増大で、1頭あたり最大33万円の損失リスクがあります。

乳房炎1頭で最大33万円の損失⁉ 見逃し厳禁です!
2. 乳房炎の種類と原因菌
乳房炎は大きく「伝染性」と「環境性」に分かれ、原因菌によって対策が異なります。
2.1 SCC(体細胞数上昇型)
- 特徴:外見異常なし。SCC測定で発見。
- 目安:100,000/ml以下が正常、200,000–300,000/mlで要注意。
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体細胞数が20万超えたら…要注意!
2.2 SA(黄色ブドウ球菌性乳房炎)
- 特徴:伝染性。手指や器具から感染。
- 原因菌:Staphylococcus aureus
- 対策:
- 搾乳前後の手洗い徹底
- 搾乳器具の毎回消毒
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SA乳房炎は“うつる”!清潔な手が最大の防御!
2.3 CO(大腸菌性乳房炎)
- 特徴:環境性。敷料・糞便由来。
- 原因菌:Escherichia coli
- 対策:
- 敷料の定期交換&乾燥維持
- 通気性の良い牛床設計
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CO乳房炎は“環境との闘い”!
2.4 CNS(環境性ブドウ球菌性乳房炎)
- 特徴:軽度~潜在型中心。慢性化しやすい。
- 原因菌:Coagulase-Negative Staphylococci
- 対策:
- 前処理&後処理の徹底(ポストディッピング)
- 乳頭周りのトリミングで汚染源を減少
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CNSは地味だけど、油断すると慢性化しやすい!
2.5 OS (環境性レンサ球菌)
- 特徴:土壌・敷料・水に広く存在し、特に湿度が高い環境で急速に増殖する環境性乳房炎菌です。
- 原因菌:Streptococcus uberis などの環境性レンサ球菌群
- 発生リスク:
- 敷料の湿り過ぎ
- 通気不良の牛床
- 雨水が入り込む場所
- 予防策:
- 定期的な敷料交換:乾燥した新しい敷料をこまめに補充し、牛が寝る場所を常にClean & Dryに保つ
- 乾燥管理:牛舎内の換気を強化し、湿気を排出
- 排水対策:牛舎周囲の水たまりを防ぎ、雨水の侵入経路を遮断
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3. 乳房炎の予防策
乳房炎対策の基本は「清潔な環境」と「正しい搾乳手順」、そして「牛の健康管理」です。
搾乳衛生管理
- 前処理:乳頭を清拭・消毒し、1頭ごとに使い捨てタオルを使用。
- 後処理:搾乳後すぐにヨウ素系ディップで乳頭消毒。消毒後すぐに牛が寝床に入らないよう注意。
畜舎環境の整備
- 敷料はふかふかに、且つ定期的に全交換。
- 清掃・乾燥を徹底し、床面や通路の湿度を下げる。
牛群管理
- 栄養バランスの良い飼料で免疫力を維持。
- ストレス軽減:群管理や運動場の整備で健康的な生活環境を提供。

機械も毎回洗浄・消毒しないと危険!

4. 治療の流れと現場での実践例
- 診断:視診・触診、SCC測定、細菌培養
- 感受性試験:原因菌に合った抗生物質を選択
- 投与方法:
- 乳房内注入(乳房炎軟膏)
- 全身投与(獣医指示の下)
- 私の牧場での軟膏活用
- アンドレアス軟膏:乳房表面に塗布。炎症を和らげます。
- セフロキシム軟膏:黄色ブドウ球菌や大腸菌の局所抑制に効果。

セフロキシム軟膏はSA・COに特に有効!
注意:抗生物質の過剰使用は耐性菌発生のリスクがあります。必ず獣医師と相談のうえ投与を。


5. 経済的影響と損失を最小化するコツ
- 直接損失:乳量減少(約2,100 L/頭)、乳質低下による出荷制限
- 間接損失:治療費、労働力コスト、反復感染牛の淘汰費用
- 損失例:タイプA 45,000円~タイプD 330,000円/頭
- 損失抑制のコツ:
- 早期発見・即時対応で乳量減少を最小限に
- 定期SCCと細菌培養で感染源を特定
- 予防策を従業員教育のマニュアル化

“予防は最大のコスト削減”——衛生管理マニュアル、できてますか?
6. まとめと次のステップ
乳房炎は「かかってから対処」ではなく、「かからない環境づくりと早期発見」が何よりも大切です。
- 乳房炎は「予防が最良の治療」。
- 「搾乳衛生管理」「畜舎環境改善」「定期モニタリング」を徹底しよう。
- 本記事を社内マニュアルや新人研修資料に組み込むことで、継続的な品質向上が期待できます。
これらを日々実践すれば、発症率を大きく抑え、酪農経営の安定化につながります。

乳房炎は“起きてから”じゃ遅い。予防が最強のコスト対策!
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