江崎グリコは2025年1〜9月の第3四半期累計で売上高を約9.8%伸ばしましたが、乳製品やカカオ豆など原材料費の高騰により営業利益が大幅に悪化しました。本記事では公式決算を基に、減益の具体的要因をセグメント別に整理し、投資家や事業担当者が注目すべきKPIと今後の想定シナリオを専門的かつ読みやすく解説します。
要点
- 売上高(第3Q累計): 2,647億円(前年比 約9.8%増)
- 通期売上見通し: 3,640億円(前年比 約9.9%増)
- 営業利益(第3Q累計): 90億円(前年比 -28.8%)、通期見通し110億円(前年比 -0.6%)
- 主原因: 原材料価格高騰(乳製品・カカオ豆・小麦等)→売上原価率上昇(第3Q:62.3%)
決算の主要数値(第3四半期累計・通期予想)
まずは数値をひと目で把握できるように表にまとめます。
| 項目 | 第3Q累計(1–9月) | 前年比 | 通期見通し |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,647億円 | +9.8% | 3,640億円(+9.9%) |
| 営業利益 | 90億円 | -28.8% | 110億円(-0.6%) |
| 経常利益 | 108億円 | -29.1% | 135億円(+1.1%) |
| 純利益 | 72億円 | -11.5% | 80億円(-1.4%) |
注:数値は会社発表の第3四半期決算を基に整理しています。売上は堅調だが、利益率の悪化が目立ちます。
減益の主因 — 原価率上昇の中身を分解する
営業利益が圧迫された最大要因は売上原価率の上昇(第3Q:62.3%)です。会社側は原材料高による影響額を約88億円と示しています。具体的にどの原料が効いているのか、以下に整理します。
- 乳製品原料のコスト増:乳製品を用いるチルド商品や飲料で原価が上昇し、マージン悪化に直結。
- カカオ豆価格の高騰:チョコレート・菓子カテゴリのコスト増。材料費が高まると商品価格への転嫁が難しい品目もある。
- 小麦等の原料・加工費上昇:一部の加工食品と原料調達コストを押し上げています。
さらに、物流費・保管費・販売促進費など販管費の上昇も営業利益を圧迫しており、原価+販管費の“二重ショック”が見られます。
セグメント別の明暗(第3Q累計のポイント)
部門ごとに状況が分かれています。要点を簡潔に示します。
| セグメント | 売上の動向 | 営業利益の状況 | 主な要因 |
|---|---|---|---|
| 健康・食品 | 369億円(+0.3%) | △3億円(黒字→赤字) | アーモンド効果は堅調、アイス減収が響く |
| 乳業 | 502億円(+20.0%) | △46億円(損失拡大) | 売上は増だが原価上昇で採算悪化 |
| 栄養菓子 | 442億円(+2.2%) | 22億円(-32.8%) | 一部主力商品の減速で利益率低下 |
| 国内その他 | 585億円(+17.3%) | 8億円(+187.4%) | 子会社化・受託販売が寄与 |
| 海外 | 648億円(+10.1%) | 72億円(+8.5%) | 中国市場を中心に増収・増益 |
特に乳業事業は売上増がありながら営業損失が拡大しており、製品ミックスと原価管理が今後の重要課題です。
業界環境と想定されるシナリオ
菓子・乳業業界全体で原材料コスト高が続く中、各社は値上げや商品改廃で対応しています。グリコの場合、以下のシナリオが考えられます。
- コスト高が継続→値上げの追加→販売数量にマイナス影響
- 原料価格が下落→粗利回復→利益率の改善
- 製品ミックス改善(高付加価値化)で収益性回復
投資判断では市況(カカオ・乳原料)・為替・各国の需給動向を注視する必要があります。
投資家・経営が注目すべきKPI(短中期)
- 売上原価率(四半期ごと) — 62.3%からの改善/悪化を確認
- 製品別販売数量と平均販売単価 — 値上げの浸透度を測る
- ヘッジ状況(原料の先物・契約状況) — コスト変動リスクの抑制度
- セグメント別の営業キャッシュフロー — 実態の収益性把握
結論
- 売上は堅調で第3Q累計は約2,647億円(前年比約+9.8%)、通期見通しも約+9.9%増。
- 営業利益は第3Qで90億円(前年比約-28.8%)と大幅減、通期は110億円で微減見通し。
- 主因は原材料高(乳製品・カカオ・小麦等)による売上原価率上昇(第3Q:62.3%)と販管費増。
- セグメントでは乳業と健康・食品が採算を圧迫、海外と国内その他は比較的堅調。
- 投資家は売上原価率、製品別販売数量、ヘッジ方針、セグメント別営業CFを定点観測すべき。
江崎グリコは売上拡大というポジティブな側面を持ちながら、原材料高と販管費増が利益を圧迫しています。通期見通しは据え置かれているものの、短期的には原料市況の動向と価格転嫁の成否が業績を左右します。経営側は①原料調達の最適化、②高付加価値商品の推進、③販管費の徹底的な見直し、を優先すべきです。投資家は上記KPIを定期的にチェックしましょう。
FAQ(よくある質問)
Q:売上が増えているのに利益が減るのはなぜ?
A:原材料費や物流費などコストが増えると、売上が増えても売上総利益率が下がり、営業利益を圧迫するためです。
Q:グリコは今後値上げを続けるのか?
A:値上げは一手段ですが、需要への影響とのバランスが重要です。商品ごとの価格弾力性や競合状況に応じて慎重に判断されるでしょう。
Q:個人投資家は何を見れば良い?
A:売上原価率、セグメント別営業利益、為替・原料市況、会社のヘッジ方針を定点観測してください。
参考:江崎グリコ 公式IR(決算短信・説明資料)や企業発表に基づき、当記事は事実を要約・解説しています。公式資料は必ず一次情報でご確認ください。
関連記事
2025年のガイドライン改正で牛乳の賞味期限延長が本格化|よつ葉・森永・グリコの最新対応まとめ
※本記事は投資アドバイスを目的としたものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
※本サイトで紹介している商品・サービス等の外部リンクには、アフィリエイト広告が含まれる場合があります。




