搾乳は酪農経営の根幹を支える日常作業です。前処理(前搾り)からユニット装着、速やかな離脱、後処理(ディッピング)までの正しい流れを徹底することで、乳房炎の発生を抑え、乳質と労働生産性を高められます。本稿では「マシンストリッピング(後搾り)」の危険性を整理し、現場でそのまま使えるチェックリストと機器点検の要点を現場農場長の視点で詳しく解説します。
搾乳の基本とマシンストリッピングの定義
搾乳は通常1日2回(朝夕)行い、乳房の健康を保ちながら安定した乳量を確保する作業です。ここで重要なのが手順の順守と機器管理。
用語整理:
- 前搾り(ストリッピング):ストリップカップ等で数滴先に絞り、乳汁の性状(血液・膿や異臭)を確認する診断的行為。
- マシンストリッピング(後搾り):機械搾乳後に残乳を手で力を入れて絞る行為。過搾乳・乳頭損傷や感染を招くため近年は原則推奨されない。

主要な搾乳方式と現場での違い
| 方式 | 特徴 | 現場でのポイント |
|---|---|---|
| パイプライン方式 | ミルカーで搾乳→パイプで輸送 | 定期的な真空・脈動点検が必須 |
| ミルキングパーラー | 集中的に多頭を処理 | 装着→5分以内で離脱を意識 |
| 搾乳ロボット | 自動化で省力化 | 前処理・センサーの校正がカギ |

現場で守るべき正しい搾乳手順(実践版)
- 観察と環境整備:牛の歩様、乳房の腫脹・熱感を確認。床の泥や寝具の汚れは先に除去。
- 前搾り(診断):ストリップカップで数滴出す。血液・膿・異臭があれば別枠で最後に搾乳。
- プレディッピング(消毒):乳頭を消毒し30秒程度置いて汚れを浮かせる。
- 装着:ユニット装着は素早く、装着後は乳流を確認し、作業は目安として5分以内で完了させる。
- 離脱:乳流が自然に止まったら速やかに離脱。過剰に引っ張ったり、手で後搾りを行わない。
- 後処理(ディッピング):乳頭ケアとしてディッピング剤で消毒・保護。

現場チェックリスト(印刷して使える)
- [ ]床・寝床の清掃は済んでいる
- [ ]前搾りで異常なしor要観察の振り分け済み
- [ ]プレディップ15–30秒放置
- [ ]ユニット装着時間を記録(5分目安)
- [ ]離脱後にポストディップ完了
- [ ]乳房炎疑いは最後に搾乳し隔離記録
なぜマシンストリッピングを避けるべきか
マシンストリッピングは残乳を無理に搾り出す行為で、以下のリスクがあります。
- 乳頭の組織損傷(痛み・びらん)→感染経路を作る→乳房炎に
- 手指や手袋を介した細菌の侵入機会増加
- 牛のストレス増→泌乳状態の悪化
- 作業効率の低下(1頭あたりの手作業時間が増える)
搾乳機の管理ポイント
機器の状態が悪いとライナースリップや過剰な乳頭摩耗を起こします。定期点検項目:
- 真空圧の定期測定(マニュアル値に合わせる)
- 脈動比と頻度の確認
- ライナーの摩耗チェック(交換履歴の管理)
- パイプライン内の洗浄と残乳チェック
乳房炎疑いがある場合の対応(現場フロー)
- 症例牛を最終に搾乳し、検体採取(必要なら検査機関へ)
- 局所治療(獣医指示に基づく投薬・軟膏)
- 治癒までの搾乳記録を明確化(再発防止のため)
まとめ(結論)
- 結論:マシンストリッピング(機械搾乳後に無理に手で残乳を絞る行為)は原則避ける。乳頭損傷や感染リスク、牛のストレス増大につながる。
- 正しい手順:観察→前搾り(診断)→プレディップ(消毒)→ユニット装着(5分以内目安)→自然離脱→ポストディップ。
- 現場チェックリスト:床清掃・前搾り判定・プレディップ放置・装着時間記録・離脱後ディップ・疑い牛は最後に搾乳・記録管理。
- 機器管理の重要項目:真空圧・脈動比・ライナー摩耗・パイプライン洗浄を定期点検し、数値と交換履歴を記録する。
- 乳房炎対応フロー:疑い牛は最後に搾乳、検体採取→獣医指示に基づく局所治療→治癒までの搾乳履歴を明確化。
リンク
マシンストリッピングは一見丁寧な介入に見えますが、乳頭損傷・感染リスクを高めるため原則避けます。重要なのは「前処理→適正装着→速やかな離脱→後処理」の流れを機械管理とセットで徹底すること。現場の小さな改善が、乳質向上と経営の安定につながります。
よくある質問(FAQ)
Q:前搾りは必ず必要ですか?
A:はい。前搾りは乳汁の性状と初期乳房炎のサインを診る診断行為なので必ず実施してください。
Q:装着時間はどのくらいが適正ですか?
A:作業目安は装着からの総時間を5分前後に抑えることが理想です。乳流が止まれば速やかに離脱します。
Q:ライナーはどれくらいの頻度で交換すべきですか?
A:使用頻度や材質で差はありますが、定期的に摩耗チェックを行い、表面のひび割れ・伸びが見られたら早めに交換してください。
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