2025年8月、業界団体による乳製品の期限表示ガイドラインが改定され、ナチュラルチーズ(ソフト・セミハード)向けにリステリア菌の判定基準が新たに設けられました。本記事では「何が変わったのか」を端的に示し、製造者が取るべき実務的対応、消費者が知っておくべき注意点を現場目線で解説します。
改定の概要──何が起きたのか?
2025年8月27日、一般社団法人日本乳業協会、全国飲用牛乳公正取引協議会、チーズ公正取引協議会が「牛乳等・乳製品・乳等を主要原料とする食品の期限表示設定のためのガイドライン」を改定し、最新版を会員向けに公開しました。今回の改定は、消費者庁が2025年3月に行った「食品期限表示の設定のためのガイドライン」改正を踏まえたものです。

改定の“2大ポイント”
- ナチュラルチーズ(ソフト・セミハード)向けにリステリア菌の判定基準を新設 — 熟成や低温保存の条件で増殖し得るリスクに対応するための試験指標や管理温度の考え方が明確化されました。
- 期限表示(賞味期限・消費期限)の設定方法の見直し — 従来の“一律的な安全率(0.7〜1.0未満)を乗じる方法”から、製造者が試験データと製品特性を総合的に勘案して責任を持って設定できる柔軟な方式へ変更されました。
ナチュラルチーズのリステリア判定基準とは?(ポイント解説)
リステリア・モノサイトゲネス(以下リステリア)は、低温でも増殖する性質を持ち、妊婦や高齢者など感受性の高い人に重大な影響を与えることがある微生物です。ナチュラルチーズは熟成や高水分箇所があるため、食品特性によっては増殖リスクが高まります。改定では「ソフトタイプ(例:カマンベール、ブリー)」「セミハードタイプ(例:ゴーダ、チェダー)」に分け、検査・判定の枠組みを明確化しています。

実務で押さえるべき検査・管理項目(製造者向け)
- 標本採取の箇所と頻度(外皮・内相・熟成庫内の環境検査など)
- 保存温度の管理基準(低温保存でも増殖することを念頭に温度条件を設定)
- pH・水分活性(aw)の把握 — リステリア増殖に影響する要因として重要
- 製造ロット毎の微生物試験結果のトレーサビリティ確保
短いチェックリスト(まずやること)
- 自社製品の種類(ソフト/セミハード/ハード)を再確認する
- 既存の微生物試験メニューとサンプル取り方を見直す
- 保管・流通温度の実測データを3か月分程度まとめる
- 必要なら食品安全コンサル/検査機関と相談して評価方法を確定する

フランスでのリステリア菌による感染が改正の発端
期限表示の考え方がどう変わったか(具体的なポイント)
従来のガイドラインでは、微生物増殖試験などで得られた安全日数に対して“安全率(0.7〜1.0未満)”を掛けて最終期限を算出する方式が一般的でした。今回の改定では、製造者がその食品の特性(pH、塩分、殺菌の有無、包装形態、保存温度など)や品質のばらつき、流通実態を踏まえ、より柔軟に安全係数を設定することが認められる方向へ変わっています。
「安全係数を掛けない」ケースとは?
改定では、例えば高度な加圧加熱殺菌のように微生物増殖が物理的に抑制され、品質のばらつきが非常に小さいと判断される製品について、必ずしも安全係数を掛ける必要はない、という取り扱いが明記されました。これにより、不必要に短い賞味期限設定による食品ロスを減らす効果が期待されます。
製造者(メーカー・小規模製造)向け:実務対応フロー(提案)
- 現状把握:自社製品の特性・製造工程・保管条件をドキュメント化する。
- 試験デザイン:必要な微生物試験(リステリア含む)と理化学/官能試験を組み合わせ、実証データを整える。
- 期限算出:試験結果を基に日数を算出し、製品特性を踏まえた安全係数(あるいは日数差し引き)で最終期限を決定。
- 運用マニュアル化:出荷・保管・流通の温度監視方法と異常時対応を明文化する。
- 定期レビュー:市場データや回収・苦情情報があれば期限見直しのトリガーにする。
※実務では社内の品質保証担当者、外部検査機関、必要に応じて弁護士や行政窓口と連携してリスク評価を行ってください。
消費者が知っておくべきこと
- 今回の改定は〈より科学的で柔軟な期限設定〉を促すものであり、全製品が短縮や延長されるわけではありません。
- 特にソフトタイプのナチュラルチーズはリステリア対策が強化されるため、妊婦や高齢者向けの取扱い注意は今後も重要です。
- 購入時はパッケージの保存方法・賞味期限表示を確認し、表示に従って保存してください。

2025年8月15日には成城石井でリステリア菌検出のため自主回収があったよ!
輸入チーズや小規模加工業者への影響
輸入品や小規模なチーズ加工業者は、今回の基準で追加された判定項目や文書要求によって、検査体制やコスト負担が増える可能性があります。国際基準との整合性は考慮されていますが、実務的には各ロットに対する検査・温度管理等の強化が求められる場合があります。
Q&A(よくある質問)
Q1:この改定で私たち消費者の食品は安全になりますか?
A:ガイドライン改定はリスクに応じた指標設定と期限算出の精緻化を目的としており、適切に運用されれば安全性向上に寄与します。ただし各社の対応に差が出るため、パッケージの保存方法や期限表示は必ず確認してください。
Q2:家庭での取り扱いで気をつけることは?
A:未開封であっても表示された保存温度を守ること、開封後は早めに消費すること、妊婦や高齢者が食べる場合は特に加熱するなどの配慮が有効です。
Q3:小規模事業者は具体的に何を準備すれば良いですか?
A:製造工程と保存・流通条件の現状把握、検査計画の見直し(リステリアを含む必要性の検討)、外部検査機関との連携を優先してください。
まとめ(要点チェック)
- 2025年8月の改定で、ナチュラルチーズ(ソフト・セミハード)向けにリステリアの判定基準が新設された。
- 期限表示の算出は従来の一律安全率方式から、製造者が製品特性と試験データを総合して設定する柔軟な方式へと変更。
- 高度な殺菌処理などで増殖リスクが低い場合は、安全係数を適用しない扱いが認められるケースがある(食品ロス軽減の観点)。
- 製造者は(1)製品分類の再確認、(2)微生物試験とサンプル採取の見直し、(3)温度管理データの整備、(4)運用マニュアル化、(5)定期レビューを優先して実施すること。
- 消費者はパッケージの保存方法と表示を遵守し、妊婦や高齢者は特にソフト系ナチュラルチーズの取り扱いに注意すること。
- 小規模事業者・輸入業者は検査体制や文書整備の負担増が想定されるため、外部検査機関や専門家と連携して対応を進めるべき。
本記事が、現場の実務担当者や乳製品を日常的に食べる消費者の判断に役立てば嬉しいです。最新の原文(業界団体や消費者庁の公開資料)を参照して、社内手順や消費者向け案内を作成してください。
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