~防虫ネット・IGR剤の活用と経済効果を徹底検証~
酪農現場におけるサシバエ被害は深刻です。本記事では、サシバエの生態、影響、防除対策(防虫ネット・IGR剤など)の最新事例や経済効果を専門的に解説。地域ぐるみの共同対策も必見!

サシバエの被害は深刻で、牛の健康や生産性に大きな影響を与えています。効果的な対策が求められています。
サシバエとは?酪農現場に迫る吸血性ハエの実態
酪農現場で問題となっているサシバエは、牛の血液を吸う吸血性ハエです。一般的なイエバエと異なり、吸血に特化した口器を持ち、牛の足元や乳房に付着し、強い痛みやストレスを引き起こします。
- 特徴
- 体長:約3~8mm
- 発生時期:春~秋(特に晩夏から秋にかけてピーク)
- 飛翔能力:約4km
- 生息環境
- 牛舎内外の湿気・有機物が豊富な場所
- 周辺の草むらや堆肥、飼料残渣が繁殖源
サシバエの侵入は、酪農経営全体に影響を及ぼすため、個々の現場だけでなく、地域全体での対策が求められます。

サシバエの吸血が、牛たちにどれほどの負担を与えているのかな…
サシバエがもたらす酪農現場への影響
牛への直接的な被害
サシバエの吸血行動は、乳牛に以下の影響を及ぼします:
- 採食量の低下
吸血による不快感から、牛が飼槽に近づかなくなり、十分なエサが摂取できなくなります。 - 乳量減少と発育阻害
吸血ストレスにより、乳量が5~20%低下するケースが報告され、若い牛の発育にも悪影響を及ぼします。なんと5匹止まると1kg乳量が減るとの報告も! - 感染症リスクの増加
吸血により皮膚に傷ができ、黄色ブドウ球菌などの細菌感染による乳房炎や皮膚炎が発生する恐れがあります。

乳量減少、発育にも影響!5匹で1kg減ってしまうなんて驚きの事実!
牛群の行動異常
サシバエ被害により、牛は一部の牛舎内エリアに密集する「片寄り行動」を起こします。
この不均衡な行動は、個体間のストレスを増大させ、全体の健康状態や生産性に悪影響を与えます。
サシバエのライフサイクルと繁殖メカニズム
短期間で増殖する驚異のライフサイクル
サシバエのライフサイクルはわずか10~14日で完結し、以下の段階を経て繁殖します:
- 卵
有機物が豊富な湿った場所に産卵。 - 一齢幼虫
卵から孵化し、残渣や堆肥中で栄養を摂取。 - 二齢幼虫
成長が進み、摂取量が増加。 - 三齢幼虫
最も活発な成長期を迎える。 - 蛹
成熟過程に入り、環境条件に応じて変態。 - 成虫
吸血性の成虫となり、再び繁殖サイクルを開始。
環境条件と吸血タイミングの変動
- 温度・湿度の影響
夏季は活動が活発になる一方、酷暑で一時的に低下する場合もあります。晩秋には気温低下により吸血行動が変動します。 - 時間帯の違い
季節により、夏は朝早く、春や秋は気温上昇に伴い昼間に吸血が集中する傾向があります。これにより、対策のタイミングも重要となります。
専門家が提唱するサシバエ対策の優良事例
【環境管理と発生源除去】
- 堆肥・飼料残渣の管理
サシバエの繁殖源となる湿った有機物を定期的に清掃・除去。発酵熱を利用して温度を40℃以上、水分を50%以下に保つことで、幼虫の発育を大幅に抑制できます。 - 牛舎周辺の整備
雑草の刈り取り、水たまりの排除、動物糞の早期処理を徹底し、サシバエが休息・繁殖できる環境を物理的に排除します。
【物理的防除策】
- 防虫ネットの設置
- 設置例:縦2m×横50mの1~2mm目合いの防虫ネットを牛舎外周に設置。
- ポイント:
- 完全密封:ネットの接続部や出入口はビニールカーテンなどで二重扉構造にし、隙間を徹底的にカバー。
- 送風・換気対策:防虫ネット設置により通風不足が生じる場合、送風ファンや換気扇で内部環境を改善。
- 効果:実証実験では、牛に付着するサシバエ数が70~80%減少し、牛群の片寄り行動も88%以上抑制されたと報告されています。
- 入退出部の強化
出入口はサシバエの侵入経路となるため、ワイヤーレールカーテンや殺虫剤を含浸した縄のれんで対策を実施します。
【薬剤散布による直接対策】
- 脱皮阻害剤(IGR剤)
幼虫の成長を抑制するため、4月~10月の期間中に月2回程度の定期散布が効果的です。 - 成虫殺虫剤
吸血後のサシバエに対して、必要に応じた散布を行い、吸血行動を抑制します。牛体への直接噴霧を避け、生乳混入防止を徹底することが重要です。 - 耐性対策
薬剤の連続使用により耐性が形成されるリスクがあるため、定期的な薬剤ローテーションや併用が推奨されます。

環境管理がカギ!堆肥や飼料残渣の管理でサシバエの繁殖を抑制
低コスト防虫ネットの実証と経済効果
実証実験の概要
複数のフリーストール農場で、低コスト防虫ネットを用いた実証実験が実施され、次の成果が確認されています。
- 牛にたかるサシバエ数の低下
対照区では1頭あたり平均10頭以上のサシバエが確認されるのに対し、対策実施後は3~6頭に減少。 - 牛群の片寄り行動の抑制
対策前は年間130日以上の片寄り行動が記録されたのに対し、対策後は15日前後まで減少。
→ 約88%の改善効果が示されています。
● 経済効果の試算
- 乳量改善効果
サシバエストレスにより乳量が5%低下すると仮定した場合、ある農場(平均日乳量2,893kg)の場合、約145kg/日の乳量減少が防げ、年間で16,820kg分の乳量改善が期待されます。
乳価100円/kg換算で約1,682,000円の収入改善効果に。 - 設置費用と費用対効果
100頭規模の牛舎で防虫ネットの設置費用は約20~25万円程度と低コスト。長期運用により、費用回収は十分に可能と評価されています。
地域ぐるみで取り組むサシバエ対策の重要性
サシバエ対策は、個々の農場だけでなく地域全体で取り組む共同防除が求められます。
- 情報共有:各農場が対策事例や最新データを共有することで、地域全体の対策レベルが向上。
- 共同実証実験:地域単位で実施することで、より広範囲な効果検証が可能。
- 持続可能な酪農経営:牛の健康維持と生産性向上を実現するためには、総合的な防除対策が鍵となります。
まとめ~サシバエ対策で酪農現場の未来を守る
本記事では、サシバエの基本的な特徴から、酪農現場に与える影響、最新の防除対策(環境管理、物理的対策、薬剤散布)、そして経済効果までを徹底解説しました。
【重要キーワード】
サシバエ、酪農、防虫ネット、IGR剤、吸血性ハエ、環境管理、経済効果、共同防除
サシバエ対策は、単一の方法だけでなく、複数の手法を組み合わせる総合的アプローチが不可欠です。低コストで実績のある防虫ネットの導入や、定期的な環境整備、そして薬剤散布を効果的に運用することで、牛の健康と酪農の収益向上につなげられます。さらに、地域ぐるみの共同対策を進めることで、飛翔性の高いサシバエの侵入を防ぎ、持続可能な酪農経営が実現できるでしょう。

サシバエ対策は牛群全体の健康に直結!みんなで取り組んで被害を最小限に!
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