TPI(Total Performance Index)は、ホルスタイン牛の乳量・乳成分、健康性、体型など複数の要素をバランスよく評価し「繁殖価値」を数値化する指標です。2025年4月の改訂で健康性や飼料効率への配慮がさらに強化され、酪農家の繁殖プログラム設計に欠かせないツールとなりました。本記事では、TPIの基本概念から最新の計算方法、現場での具体的な活用ポイントまでを初心者にも分かりやすく解説します。

TPIでホルスタインの繁殖価値を総合評価、健康性も重視!
1. TPIの概要と誕生背景
TPIは1990年代後半、アメリカのHolstein Association USAによって開発された遺伝的選択指数です。個々の牛が次世代に伝える経済的に重要な特性(乳量、乳質、健康性、形態など)を総合的に評価し、1頭ごとの「繁殖価値」を数値化します。
- 目的:品種全体の遺伝的進歩を加速し、経済的利益と動物福祉を両立
- 対象:主にホルスタイン種の乳用牛
- 更新頻度:ホルスタイン協会が定期的に改訂(2025年4月が最新)

乳量・乳質・健康性・体型をバランスよく数値化
2. TPIの計算要素と重み付け
2025年4月の改訂で、従来の生産・形態中心から健康性や飼料効率への配慮が強化されました。主要な構成要素は以下の通りです。
項目カテゴリ | 主な評価特性 | 重み付けのポイント |
---|---|---|
生産特性 | 乳量(Milk)、乳脂肪(Fat)、蛋白質(Prot) | 脂肪生産に重点、蛋白質は従来通り |
健康特性 | 生産寿命(PL)、生存可能性(LIV)、体細胞スコア(SCS)、受胎率(Fert) | PLを7%→4%、LIVを3%に分割;SCSやFertを重視 |
形態特性 | 乳房コンポジット(UDC)、足脚コンポジット(FLC)、体重コンポジット(BWC) | 体高の相関を低下させ、機能性重視へ |
飼料効率 | FE(Feed Efficiency) | チーズメリット$の経済価値連動で増加 |
例えば、体重コンポジット(BWC)は2017年からBody Size Composite(BSC)を置き換え、成熟体重増減の予測に使われます。高いTPIを持つ牛は、より少ない飼料で効率的に生産できる可能性があるのです。

生産寿命(PL)や受胎率(Fert)など健康指標も強化
3. 酪農家によるTPIの活用法
3.1 雄牛選択の指針として
TPIスコアが高い雄牛を人工授精(AI)や受精卵移植(ET)に用いることで、
- 生産能力:乳量・乳成分の安定的向上
- 健康維持:長寿命・低体細胞スコア
- 繁殖性能:高い受胎率とスムーズな分娩
…といったメリットが期待できます。

高TPI雄牛は乳量と乳質を安定向上!
3.2 多特性選択のメリット
従来は乳量だけに注目しがちでしたが、TPIは複数の特性をバランス良く評価。
- 単一特性を重視した場合の遺伝子プールの偏りを防止
- 動物福祉(アニマルウェルフェア)と経済性の両立に貢献
- 将来の繁殖プログラム設計を効率化

健康と生産の両面から評価するTPIの強み
3.3 先進技術との組み合わせ
遺伝子検査データやゲノミクス情報を併用し、TPIの信頼性を高める事例が増えています。これにより、器官別の疾患リスクまで把握し、より安全な飼養管理が可能となります。

遺伝子検査とTPIで繁殖精度アップ!
4. TPIとNet Meritの違い
特徴 | TPI | Net Merit(NM$) |
---|---|---|
評価目的 | 品種全体の遺伝的進歩に焦点 | 個体の経済的利益を予測 |
対象品種 | ホルスタインに特化 | ホルスタイン中心にCheese, Fluid, Grazing Meritも含む |
重点特性 | 生産・健康・形態・飼料効率 | 乳成分、寿命、体細胞、乳房・体型など |
使用期間 | 長期的な品種改良プラン | 短期的な飼養管理・経営判断 |
酪農家は「長期的な遺伝改良目標」にはTPIを、「当期の経営効率」にはNM$を使い分けることが一般的です。

Net Meritは経済利益を具体的に数値化
5. 導入時のポイントと注意点
- データの正確性
- 自牧場の記録体系と協会データの照合を行い、TPI活用の土台を整備する
- 多段階の評価
- TPIだけでなく、乳房健康や脚元、体型検査結果も総合的に判断
- 継続的なフォローアップ
- 定期的なTPI見直しや、最新改訂情報のキャッチアップ
- スタッフ教育
- 新人やパート・アルバイトにもTPIの意義を共有し、現場での一貫性を保つ

データの正確性がTPI活用の基盤!
6. まとめ
- TPIは繁殖価値を総合評価し、品種の遺伝的進歩を加速。
- 2025年4月の改訂で健康性と飼料効率への配慮が強化。
- 酪農家はAIや自然交配の雄牛選択にTPIを活用し、多特性選択を実現。
- Net Meritとの使い分けで、長期的な遺伝改良と短期的な経営効率を両立。
- 正確なデータ管理と継続的な更新が、TPI活用の鍵。
TPIを導入すれば、繁殖プログラムの精度が大きく向上し、将来的に安定・持続可能な酪農経営に寄与します。ぜひ自牧場のデータを活かし、TPIを繁殖戦略に組み込んでみてください。

TPIは繁殖価値を総合評価し、遺伝的進歩を加速!
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