ユッケや半生のハンバーグなど、生や加熱不足の牛肉は、腸管出血性大腸菌(EHEC / O157など)による感染源になり得ます。感染の重篤な合併症として知られるのが溶血性尿毒症症候群(HUS)です。本記事では、原因・症状・日本国内の実例・そして家庭で実際に行える予防手順を、肉牛農家視点で慎重にまとめます。
1. HUS(溶血性尿毒症症候群)とは?
HUSは、志賀毒素(Shiga toxin)を産生する腸管出血性大腸菌(O157など)感染後に起こることが多く、主に溶血性貧血・血小板減少・急性腎不全の3徴を示します。特に小児で重症化しやすく、適切な管理が必要です。
2. O157と牛肉の関係(なぜ牛肉がリスクになるのか)
牛は腸管出血性大腸菌(O157など)を無症状で保菌する場合があります。と畜・処理中に糞便由来の菌が肉表面やひき肉に混入すると、加熱不足の調理で感染源となります。感染の低用量(少ない菌量)でも疾病を引き起こすことが知られているため、特にひき肉製品や生食文化がある食品は注意が必要です。

3. 主な症状と発症までの流れ(受診の目安)
感染後、通常は1〜10日(多くは3〜5日程度)で症状が現れます。初期は腹痛・下痢(血便を伴うことが多い)、嘔吐、発熱。HUSへ進行すると貧血・尿量減少・浮腫・高血圧・けいれんなどが見られます。血便・尿量減少・極端な倦怠感があれば速やかに受診が必要です。
4. 日本での発生状況
日本では保健当局によるサーベイランスが継続されており、O157を含むEHEC検出は毎年報告されています。近年の統計や事例報告(IASR等)では、O157が主要な検出群であり、散発事例や外食チェーンでの集団発生が公表されることがあります。
2026年には山口県でレアステーキ丼を食べた7人が腹痛・下痢などを訴え、3人から腸管出血性大腸菌O157が検出。うち10代の女性1人が溶血性尿毒症症候群(HUS)を発症し重症となっています。
5. 治療のポイント(一般的な方向性)
HUS治療は主に支持療法(輸液、血圧管理、必要に応じて輸血や透析など)。抗生物質は一部のケースで志賀毒素放出を増やす可能性が懸念され、O157感染では使用を慎重に判断する必要があります。治療は医療機関の指示に従ってください。
6. 今すぐできる実践的予防手順(チェックリスト)
重要:最も効果的なのは「正しい加熱」と「衛生管理」の徹底です。
加熱の基準(目安)
肉の中心温度が75℃で1分以上に達していることを確認してください。表面だけでなく中心までしっかり加熱することが重要です。家庭では肉用の温度計を使うことを推奨します。
器具・調理動線
- 生肉用と加熱後用でまな板・包丁を分ける。
- 生肉を扱った手は石鹸で念入りに洗う(20秒以上)。
- 生肉の汁が他の食材に触れないようにする。
外食・購入時の注意
- ユッケ・生レバーなど生食メニューは避ける(日本では牛レバー生食提供禁止の経緯あり)。
- ひき肉は特に内部まで菌が混入しやすいので十分加熱。

子ども・高齢者の食事
免疫が弱い層は特にリスクが高いため、中心温度が基準に達していることを厳守してください。
ワンポイント:「見た目で判断しない」——ピンク色が残る肉は中心部が十分に加熱されていない可能性があります。肉用温度計で中心温度を測る習慣をつけましょう。
7. 外食チェーンや事例から学ぶ:過去の重大事例
日本では過去にユッケ等が原因の大規模な食中毒事件があり、その後の規制(生レバー提供禁止など)につながりました。こうした事例は「なぜ生食が危険か」を示す教材となります。最新の行政発表やIASRの事例報告を確認し、家庭や店舗での対策に活かしてください。

8. Q&A(よくある疑問)
Q:生で食べてしまったらどうする?
A:まずは症状の有無を確認。血便・激しい腹痛・嘔吐・高熱・尿量の減少などがある場合は速やかに医療機関を受診してください。症状がない場合でも不安であれば、保健所やかかりつけ医に相談を。
Q:市販の「牛肉は新鮮だから安全」って本当?
A:肉の新鮮さは菌の有無を保証しません。調理と加熱が最も確実な予防法です。
Q:抗生物質は飲んでいい?
A:O157感染では抗生物質が毒素放出を増やす可能性が指摘されています。医師の判断に従ってください。
10. 参考・出典(主要)
- 厚生労働省:牛肝臓の生食(レバ刺し)に関するQ&A(生レバー提供禁止・加熱基準)。
- 国立感染症研究所(IASR):腸管出血性大腸菌感染症の年次報告(EHEC検出状況・事例)。
- CDC(米国疾病対策センター):E. coli(症状・受診サイン)。
- Escherichia coli O157:H7(総説的資料、学術情報)。
- Mayo Clinic(検査・診療に関する参考)。
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