宮崎県酪農公社2025年9月解散へ|預託牛減少と累積赤字がもたらす影響

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宮崎県酪農公社解散による酪農業界への影響と預託牛育成の現状 乳製品
宮崎県酪農公社の解散
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2025年9月30日をもって、宮崎県酪農公社が設立から57年の歴史に幕を下ろします。預託牛の減少と累積赤字3.5億円という厳しい経営環境が背景にあり、酪農家は育成牛の管理負担を一手に背負うことになります。この記事では、宮崎県酪農公社の歩みと解散に至った経緯を整理し、宮崎県酪農の現状や今後の支援策、JA宮崎経済連の役割について初心者にもわかりやすく解説します。未来の酪農を支えるための「乳用牛・肉用牛生産基盤近代化計画」の全容もあわせて見ていきましょう。

牛さん
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宮崎県酪農公社、57年の歴史に幕。預託牛減少と経営赤字が解散の背景に!

1. 宮崎県酪農公社とは?―設立から50年以上の歩み

1.1 設立の背景

  • 1968年(昭和43年)、「霧島地域酪農開発公社」としてスタート
    宮崎県内の酪農家が増える中、府県をまたいだ広域的な協力体制が求められたため、当時の農水省と宮崎県が連携し設立。
  • 1978年(昭和53年)、名称を「宮崎県酪農公社」へ変更
    事業エリアを霧島地域から宮崎県全域に拡大し、県下すべての酪農家を視野に入れた支援体制を構築。
  • 2013年(平成25年)、一般社団法人に移行
    それまでの財団法人格から一般社団法人へと移行し、より柔軟かつ効率的な運営体制を実現。

長い歴史の中で、特に「預託事業」が主軸として機能し、酪農家の経営安定を支えてきました。下記の表は、2023年3月末時点の預託牛管理頭数です。

カテゴリ頭数
預託牛628
繁殖牛70
子牛59
保育・育成牛45
経産牛104
合計906

上表のように、約900頭を超える乳用牛の育成・管理をおこない、県内酪農家の経営基盤強化に寄与してきました。

牛さん
牛さん

長年にわたる預託事業で、宮崎県の酪農経営の安定を支えてきた歴史があります。


2. 解散に至った背景と理由

2025年5月30日付『宮崎日日新聞』によると、宮崎県酪農公社は2025年9月30日をもって解散することが決定しました。その主な要因は以下の通りです。

2.1 預託牛の減少

  • 近年、全国的に酪農戸数が減少傾向にある中、宮崎県内でも預託される育成牛の頭数が徐々に減少
  • 2023年3月末の預託牛628頭からさらに減少し、経営維持に必要な規模を下回る可能性が高まっていた。
牛さん
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全国的な酪農戸数減少は宮崎県にも影響。預託牛管理の課題が深刻化。

2.2 累積赤字の膨張

  • 設立以来の運営費用や人件費、飼料費などを賄いながら事業を継続してきたが、累積赤字が約3.5億円に達していたことが判明。
  • これ以上の負債を抱えたまま事業を続けることは困難と判断され、解散を最終決定。
牛さん
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長年の運営費用が重なり、財務状況は厳しさを増しています。

2.3 業界を取り巻く厳しい環境

  • 飼料価格の高騰(ロシア・ウクライナ情勢以降、輸入飼料の価格が約2倍に上昇)
  • 新型コロナウイルス禍による需要減少(学校給食の停止や飲食店の自粛で販売先が縮小)
  • 人手不足や離農の増加(過去3年間で27戸が離農を選択)

これら要因が重なり、酪農公社単体での支援体制維持が難しくなったことが、解散決断の背景です。

牛さん
牛さん

複数の課題が重なり、公社解散の決断を後押し。

酪農業で飼料価格が高騰し悩む酪農家と飼料対策を示すイラスト
輸入飼料の価格上昇や円安の影響で経営が厳しくなる酪農現場。自給飼料の活用や給与設計の見直しといった対応策。

3. 預託事業の重要性と酪農家への影響

3.1 預託事業とは何か?

  • 預託事業 は、酪農家が所有する「まだ牛乳を搾れる年齢・体格ではない育成牛(若齢牛)」を一時的に公社施設へ預け、責任をもって約22カ月まで育成したうえで返却するサービス。
  • 育成期間中の飼育・管理(飼料給餌・健康管理など)はすべて公社側が行い、酪農家は「搾乳できる経産牛」に専念できる。
牛さん
牛さん

約22カ月までの育成管理で、安心して牛を預けられる。

栃木県の育成牛預託牧場で健康に育つ若い乳用牛たち
栃木県の育成牛預託牧場で過ごす若い乳用牛たち

預託事業のメリット

  1. 飼育コストの平準化
    育成期の高額な子牛管理コストを公社に集約することで、酪農家は経営計画を立てやすくなる。
  2. 専門的な育成ノウハウの活用
    公社職員は子牛~育成牛に精通したスタッフ。早期疾病発見や適切な飼料設計による効率的な育成を実現。
  3. 作業負担の軽減
    毎日の餌やり・保育・病気のケアなど労力のかかる育成作業を任せられるため、搾乳作業に集中できる。

家族経営の酪農家や従業員が少ない小規模酪農家ほど、預託事業の恩恵を大きく受けていました。

牛さん
牛さん

人手不足の酪農家にぴったりのサポート体制。

3.2 解散後に想定される酪農家への痛手

  • 育成管理の負担増
    公社が解散すると、預託先がなくなり、酪農家自身で子牛~育成牛の管理を行わねばならず、労力とコストが大幅に増加します。
  • 資金繰りの不安定化
    育成期間の飼料費や医療費を全額自己負担する必要があるため、経営計画が立てにくくなるケースも。
  • 技術格差の懸念
    公社が培ってきた専門ノウハウを失うことで、疾病管理や飼養技術に疎い農家では離乳期の成長不良や病気多発などリスクが高まる可能性があります。

特に、子牛の健康管理や成長促進は経験と専門知識が求められるため、**解散により「酪農家が育成技術をゼロから習得しなければならない」**状況に陥る可能性があります。

牛さん
牛さん

育成管理が一気に負担増!自分で全てこなす大変さ。


4. 宮崎県の近代化計画とJA宮崎経済連の役割

4.1 宮崎県乳用牛・肉用牛生産基盤近代化計画

宮崎県は解散を踏まえたうえで、2025年6月より以下のような施策を打ち出しています。

  1. 経営基盤強化の補助金制度
    • 畜舎の改修や高効率飼料設備の導入費用を補助し、個々の酪農家のコスト削減を支援。
    • 特に小規模酪農家には優先的に給付し、廃業を抑制する狙い。
  2. 若手酪農家の育成・定着支援
    • 大学生や新規就農者向けの研修プログラムを実施。初期費用免除や技術指導を行うことで、後継者不足に対応。
    • 既存農家と若手のマッチング制度を導入し、ノウハウ継承と人的資源の交流を促進。
  3. 乳価の安定化策
    • 県独自の価格調整基金を設置し、需要が減少した場合も一定の販売価格を維持。
    • コロナ禍のように急激に需要が落ち込むケースへの対応力を高め、経営リスクを軽減。
牛さん
牛さん

乳価安定のための県独自価格調整基金で、経営リスクを軽減!

乳価は全国的にプール乳価というシステムで決定されています。

4.2 JA宮崎経済連による支援継続

  • 施設・職員の引き継ぎ
    2025年9月末の解散後、宮崎県酪農公社の施設および職員は「JA宮崎経済連」が引き継ぎ、従来の育成ノウハウを維持しつつ、運営体制を一新。
  • 営農指導・技術サポート
    JA宮崎経済連はすでに飼料や資材の供給、乳価交渉などを担う組織。解散後は育成ノウハウや技術指導も担うことで、酪農家へのワンストップ支援を実現。
  • 交流イベント・体験学習
    モーモーふれあい体験会」など地域住民・子供向けイベントを継続することで、酪農への理解を深め、次世代の酪農家育成や地産地消の促進を図る。

JA宮崎経済連が中心となることで、宮崎県 乳用牛 生産の基盤を崩さず、効率的な運営が期待されます。

牛さん
牛さん

酪農公社の育成ノウハウ、JA宮崎経済連がしっかり継承!

7. まとめ

宮崎県酪農公社の解散は、長きにわたり宮崎県 酪農 現状を支えてきた組織の一区切りを意味します。しかし、解散によって「預託事業」が消滅することで多くの酪農家が育成管理の負担を背負うことになり、業界全体に影響が及びます。
一方で、宮崎県 酪農 未来を見据えた「乳用牛・肉用牛生産基盤近代化計画」や、JA宮崎経済連による施設・職員の引き継ぎは、酪農家を支える新たな体制を築くチャンスでもあります。

預託事業」や「畜産基盤近代化計画」など少し専門用語も多いかもしれませんが、本記事を読めば大まかな仕組みと今後の支援策がイメージしやすくなるはずです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

牛さん
牛さん

宮崎県酪農公社の解散で“預託事業”が終わるって…育成の負担が酪農家に戻るのは大きな変化!

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この記事を書いた人

神奈川県横浜市の非農家に生まれる。実家では犬を飼っており、犬部のある神奈川県立相原高校畜産科学科に進学。同級生に牛部に誘われ、畜産部牛プロジェクトに入部。牛と出会う。

大学は北海道の酪農学園大学に進学。サークルの乳牛研究会にて会長を務める。

今年で酪農歴10年!現在は関西の牧場にて乳肉兼業農場の農場長として働いています。

毎日牛乳1L飲んでます!

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