近年、日本では猛暑日の増加が顕著で、乳牛にも深刻な影響を及ぼしています。気温上昇による熱ストレスは、牛の健康状態や食欲、さらには牛乳の「量」や「質」にも変化をもたらします。本記事では、最新データをもとに猛暑が乳牛および牛乳生産に与える影響を解説し、現場で実践されている具体的な酪農家の対策や、業界が抱える課題についてまとめました。

牛さん
猛暑が乳牛の健康と生産性に深刻な影響を及ぼす!
猛暑が乳牛にもたらす影響
食欲低下と乳量減少
- 乳牛は気温25℃以上で自力による体温調節が難しくなり、食欲が減退します。ある地域では連日の猛暑により、牛舎内での摂取量が激減し、結果として1頭あたりの搾乳量が15%減少した事例も報告されています。
- 2018年の夏には「牛の夏バテ」によって全国で乳量が落ち込み、スーパーでの牛乳特売削減が懸念されたこともありました 。
牛乳の成分変化
- 熱ストレスは代謝や消化機能にも影響を及ぼし、乳脂肪分や乳タンパク質のバランスに変動が生じる可能性があります。特に長期的な高温下では、クリーム層の分離や風味の変化が懸念されます(※詳細な学術論文での検証が進行中)。

牛さん
気温25℃超で乳牛の食欲が落ち、搾乳量が最大15%減少!
日本の気候変動と猛暑の現状
- 気象庁の観測によれば、日本の年平均気温は**1898年以降、100年あたり1.40℃**の割合で上昇しており、近年は偏差が顕著に大きくなっています 。
- 30年平均(1991〜2020年)比で、2023年の偏差は+1.29℃、2024年には+1.48℃となり、過去最高を更新しました 。
- 真夏日の増加や熱帯夜の頻発は、乳牛の暑熱ストレスを悪化させる要因です。

牛さん
2023年・2024年は過去最高の気温偏差を記録!

酪農家が実践する猛暑対策
1. 遮熱・反射ネットの設置
- 高拡散反射ネット「バロンスクリーンホワイト涼風」を牛舎外壁や屋根に設置することで、遮熱効果とともに紫外線や赤外線を反射し、牛舎内の温度上昇を最大10℃程度抑制できる事例があります 。
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2. 換気・ファンによる風通し改善
- 牛舎内に大型換気扇や送風ファンを設置し、体感温度を低下させる取り組みが基本対策です。農畜産業振興機構によれば、適切な送風により興奮を抑え、泌乳量の維持に寄与します 。
3. 十分な水分補給の確保
- 乳牛は体重の56〜81%が水分で構成され、夏場は特に多くの飲水が必要です。北海道釧路総合振興局では、常に新鮮な水を供給することが暑熱ストレス軽減の基本とされています 。
4. ミスト・スプリンクラーによる直接冷却
- 屋外飼育場や通路に設置したミスト噴霧システムで、牛の体表温度を下げる方法も普及しています。実際に炎天下では、5分おきのミストで牛の呼吸数が落ち着き、食欲維持につながったとの報告があります 。
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5. 飼料の与え方・タイミング調整
- 気温上昇が著しい日中は給餌量を抑え、比較的涼しい早朝や夜間にまとめて与えることで、消化効率を高める工夫が行われています。特に25℃を超えると摂食量が急減するため、タイミングの見極めが重要です 。

酪農業界全体が抱える課題
- 赤字経営率の高さ:一般社団法人中央酪農会議の調査では、調査対象157名中**84.7%**が赤字経営であり、そのうち4割以上は月間100万円以上の赤字と報告されています 。
- 飼料価格・光熱費の高騰や後継者不足などに加え、猛暑対策による初期投資負担も経営を圧迫しています。
- 気候変動による長期的な猛暑頻発は、酪農を持続可能な産業とする上で避けられない課題と言えます。

おわりに
- 猛暑の影響:熱ストレスにより食欲低下→乳量減少、乳脂肪・タンパク質バランスの乱れ
- 遮熱・反射ネット:屋根や外壁に設置し、牛舎内温度を最大10℃程度低減
- 換気・ファン:大型換気扇や送風ファンで体感温度を下げ、牛の興奮を抑制
- ミスト・スプリンクラー:定期的な噴霧で牛の体表温度を下げ、呼吸数の安定化
- 給水管理:常時新鮮な水を確保し、体内水分バランスを維持
- 飼料・給餌タイミング:涼しい早朝・夜間に給餌を集中させ、消化と摂食量を最適化
- 業界課題:赤字経営率の高さ、飼料・光熱費高騰、後継者不足など、持続可能性への対策も急務
猛暑による熱ストレスは、乳牛の健康と牛乳品質を守るために酪農家が日々工夫を重ねるべき重要テーマです。消費者としては、そうした努力を理解し、安心して牛乳や乳製品を楽しむことで、業界の支援につながります。日本の酪農が次世代へと継承されるよう、私たち一人ひとりの理解と応援が欠かせません。

牛さん
猛暑による熱ストレスが乳牛の食欲と乳量を大きく左右!
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