牛の白帯病とは?原因・症状・治療・予防を2級認定削蹄師が解説

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蹄のトラブルは乳量・繁殖成績に直結します。白帯病は蹄底と蹄壁の接合部(白帯)に発生する角質の異常で、跛行や乳量低下の原因になります。ここでは原因から治療、すぐに現場でできる予防まで、2級認定削蹄師である筆者が実践的にまとめます。

牛さん
牛さん

蹄のトラブルは乳量や繁殖成績に直結!

白帯病の概要と酪農への影響

白帯病(英:white line disease)は、蹄の白帯(蹄底と蹄壁の接合部)で角質が脆弱化または離解して細菌などが侵入することで発生する疾患群を指します。初期は微小な亀裂や出血で目立たないことが多いですが、進行すると跛行を引き起こし、採食量低下→乳量低下(ケースにより10〜20%程度の乳量減少が報告されることもあります)や繁殖成績の悪化、最悪は廃用の原因になります。 

ポイント:白帯は物理的ストレスに弱く、床面や運動、削蹄のバランスが発生に直結します。

牛さん
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白帯病は蹄底と蹄壁の接合部で角質が脆弱化して発生

牛の白帯病の症状と特徴的な蹄の白帯
白帯病は牛の蹄の白帯部分に起こる損傷や感染症です。

主な原因(環境・管理・栄養)

白帯病の原因は単一ではなく複合的です。実務で押さえておくべき点を挙げます。

  • 外傷性要因:硬い床面、鋭利な異物、急なターンや狭い通路で白帯に亀裂が入りやすい。
  • 湿潤・不潔環境:泥や糞尿がたまりやすい場所は角質を軟化させ、感染リスクを上げる。
  • 栄養・代謝:セレンやビタミンE不足は角質形成に影響する可能性があるが、主因は環境管理が多い。
  • 管理様式:タイストールなど拘束が長い飼養形態や放牧不足は特定の蹄に負荷が集中しやすい。

→ 結論としては「環境改善+定期的な削蹄」が最も有効です。

牛さん
牛さん

拘束時間が長いタイストールなどの繋ぎ飼いは負荷集中の原因

症状と診断・重症度判定

初期症状

  • 軽度の跛行(歩様の違和感)
  • 蹄の出血点や白帯部分の小さな剥離
  • 蹄浴後に一時的に改善するケースもある

進行症状

  • 明らかな跛行、体重後肢回避
  • 採食量低下、乳量減少
  • 蹄底潰瘍や趾皮膚炎の合併

診断方法

削蹄時に白帯の離開や空洞を確認するのが基本です。現場ではABCチャート(A: 白帯病、B: 白帯出血、C: 趾間皮膚炎など)で重症度をスコア化して記録すると後の管理に便利です。疑いが強ければ獣医師や削蹄師と連携してレントゲン等で評価します。

牛さん
牛さん

進行すると乳量減少や採食量低下が見られる

現場でできる治療(削蹄・ブロック装着・消毒)

治療は迅速さが重要です。以下は現場で一般的に行われる手順です(獣医師の指示に従ってください)。

1. 安静確保

まず弱っている牛を安静にし、清潔で滑らない床に移す。過度な歩行を避けさせます。

2. 削蹄(基本処置)

  1. 白帯の剥離・空洞部を慎重に削り、感染物質を除去する。
  2. 蹄角度を機能的に調整(目安:前後バランスを取り、片側に過負荷がかからないように。実務では内外で52度前後の調整を念頭にすることが多い)。

3. ブロック(ゲタ)装着

健側の蹄底にブロックを付け、患側の負荷を減らす。これにより短期間で痛みが緩和され、治癒を促進します。

ブロック(ゲタ)装着による蹄治療(健側にブロックで患側負荷軽減)
蹄病で使うブロック(ゲタ)

4. 消毒と感染管理

患部を洗浄・消毒し、必要に応じて獣医師の指示で抗炎症薬や抗生剤を使用します。局所に綿花パックを行い、汚染を防ぎます。

5. フォローアップ

削蹄後は週単位で観察し、ブロック除去時に再評価を行う。再発しやすいので原因環境の見直しを必ず行います。

注意:抗生剤や痛み止めの投与は獣医師の判断に従ってください。

牛さん
牛さん

治療は迅速が肝心、まずは安静と清潔な床で対応!

予防策と酪農経営での実践ポイント

白帯病は「発生してから治す」より「発生させない」ことが経営上重要です。実践的な予防策を整理します。

1. 定期削蹄(必須)

年2〜3回の定期削蹄を推奨。過度の削りすぎは逆効果なので、機能的削蹄(バランスを整える)を実施すること。

2. 牛舎と床面の改善

  • 滑りにくく、過度に硬くない床材の検討(ゴムマット等の導入を検討)。
  • 糞尿の滞留を防ぐ排水・清掃体制の強化。
  • 通路幅や曲がり角の緩和で急停止や衝撃を減らす。

3. フットバス(蹄浴)の運用

定期的(例:週1〜数回)な蹄浴は感染予防に有効。使用する溶液は市販品の指示に従うこと。濃度管理・交換頻度を守り、過度な濃度の自己判断は避けてください。

4. 運動と栄養管理

放牧やパドックでの運動を取り入れることで、自然な蹄角形成と血流改善に寄与します。飼料面ではセレン・ビタミンE等の微量栄養素を適切に補う(獣医または栄養士と相談)。

5. モニタリングと記録

歩様チェック表や蹄病発生率を集計し、発生時期・場所・個体条件を分析。例えば「週別発生」「牛舎別発生率」を記録すれば原因特定が速くなります。

牛さん
牛さん

環境・運動・栄養・削蹄の総合管理が白帯病予防の基本

チェックリスト/年間スケジュール

日常チェック(毎日)

  • 牛の歩様を飼養班が朝と夕で観察する(異常があれば記録)。
  • 床面の泥・糞尿の滞留がないか確認。
  • 蹄浴槽の溶液濃度と清潔度を確認。

週次チェック

  • フットバスの交換・濃度確認。
  • 通路や出入り口の異物・損傷点の点検。

年次スケジュール(例)

  1. 春(発情・乾乳前):重点削蹄と牛群スクリーニング
  2. 夏(高温期):フットバス頻度増、清掃強化、運動管理
  3. 秋:発生データの解析と施設改善計画の実行
  4. 冬:凍結対策と床面の保守、耐荷重点検
牛さん
牛さん

毎日、牛の歩様と床面をチェックしよう!

よくある質問(FAQ)

Q. 白帯病は再発しやすいですか?

A. 原因を排除しない限り再発のリスクは高いです。特に床面や削蹄の不良が原因の場合、改善しなければ再発します。

Q. 削蹄を自分でやっても大丈夫ですか?

A. 基本的には削蹄は専門技能を要します。初めて行う場合や深刻な症例は、2級以上の削蹄師や獣医師に相談してください。簡単な観察や応急処置(清潔な環境確保、安静化)は現場で行えます。

Q. フットバスのおすすめ溶液は?

A. 市販の蹄浴用溶液を使用し、メーカー指示に従うことが安全です。自家調合する場合は獣医や削蹄師と相談してください。

Q. 削蹄を自分でやっても大丈夫ですか?

A. 基本的には削蹄は専門技能を要します。初めて行う場合や深刻な症例は、削蹄師や獣医師に相談してください。簡単な観察や応急処置(清潔な環境確保、安静化)は現場で行えます。

Q. フットバスのおすすめ溶液は?

A. 市販の蹄浴用溶液を使用し、メーカー指示に従うことが安全です。自家調合する場合は獣医や削蹄師と相談してください。

まとめ

白帯病は「見落とし」が損失につながる疾患です。早期発見のための歩様観察、定期削蹄、床面の清潔管理、フットバスの運用という基本を確実に行うことで、発生率は大きく低下します。問題が発生したら獣医師・削蹄師と連携し、原因対策(環境改善・記録・運動・栄養)を速やかに実施しましょう。

牛さん
牛さん

白帯病は見落としが損失につながる重要疾患!

※本記事は現場経験に基づく情報を提供していますが、特定の治療や薬剤の使用については必ず獣医師の指導に従ってください。

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この記事を書いた人

神奈川県横浜市の非農家に生まれる。実家では犬を飼っており、犬部のある神奈川県立相原高校畜産科学科に進学。同級生に牛部に誘われ、畜産部牛プロジェクトに入部。牛と出会う。

大学は北海道の酪農学園大学に進学。サークルの乳牛研究会にて会長を務める。ゼミでは草地・飼料生産学研究室に所属。

今年で酪農歴10年!現在は関西の牧場にて乳肉兼業農場の農場長として働いています。

【保有免許・資格・検定】普通自動車免許・大型特殊免許・牽引免許・フォークリフト・建設系機械・家畜商・家畜人工授精師・日本農業技術検定2級・2級認定牛削蹄師

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