酪農経営において、草地更新は飼料コスト削減と乳量・品質の向上に直結する重要な作業です。草地は更新から3年で収量がピークを迎え、その後は低下していくため、定期的な更新が求められます。本記事では、草地更新の基本から利点、方法、北海道の事例、補助金活用まで、持続可能な酪農を実現するためのポイントを草地・飼料生産学研究室に所属していた筆者が解説します。

草地更新で乳量アップ&飼料コスト削減!
草地更新とは? 酪農でなぜ重要か
草地更新は、劣化した牧草地を耕し、施肥・播種などで植生を入れ替える作業です。酪農では牛の主飼料の大部分を牧草が占めるため、牧草の収量と品質が経営に直結します。一般に更新後3年目で収量がピークを迎え、その後徐々に低下するため、定期的な更新計画が必要です。

更新は3年ごとが目安!収量ピークを逃さない

草地更新の主な利点
- 収量と品質の向上:更新により高栄養牧草の割合が増え、牛の乾物摂取量が安定。乳量・乳質の改善につながります。
- 土壌物理性の改善:耕起やルートマットの破砕で通気性と水はけが向上し、根群の発育が良くなります。
- 雑草・有害種の抑制:不良草の蔓延をリセットし、目的種の優占を取り戻します。
- 経済効果:長期的にエサ購入費が抑えられ、1頭当たりの飼料効率が改善します。
- 持続可能性(環境):適切な更新と施肥で土壌炭素の安定化や肥料利用効率が改善されます。
ポイント:短期的な投資は必要ですが、長期の飼料自給率と所得安定に直結します。

雑草や不良草をリセットして目的種を優占
草地更新の方法(完全更新 vs 簡易更新)
完全更新(全面耕起・再播種)
劣化が進んだ草地に有効。工程の例:
- 事前調査(地力・雑草の種類・ルートマットの厚さ確認)
- 雑草抑制(必要に応じて除草)
- 全面耕起(深耕でルートマットを破砕)
- 整地・施肥(基肥と微量要素の補給)
- 播種(適期に合わせた品種選定)
- 初期管理(ローリング・追肥・除草)
メリット:土壌改良効果が高く、長期間にわたり生産性を回復しやすい。デメリット:コストと機械投入が多い。
簡易更新(作溝法・追播)
ルートマットが薄い、または省力化を求める場合に適した方法。表層を破砕して追播することで短期間で植生を改善します。シードマスターや表層破砕機を用います。
メリット:低コスト・短工期。デメリット:土壌物性改善は限定的で、雑草管理が重要になります。

デメリットはコストと機械投入の多さ
成功のためのチェックポイント(現場での実務ガイド)
- 時期の選定:夏播き(梅雨明け〜盛夏)か、翌春播きを基本に品種と気候を合わせる。
- 土壌診断:pH、P・K、CECを確認し、必要な改良を行う。
- 品種選定:地域の環境(寒冷地/温暖地)、利用方法(サイレージ/放牧)を考えて選ぶ。
- 雑草対策:更新前の準備除草と播種後の早期管理を徹底する。
- 肥培管理:初期追肥で早期の定着を促進する。堆肥の併用も有効。
- 機械選択:投入できる機械(トラクター出力、サブソイラー、シードマスター)を事前確認。
現場で失敗しやすいのは「雑草対策の甘さ」と「播種時期のずれ」です。計画的に工程を組みましょう。

雑草対策は更新前後で徹底!放置は失敗の元
北海道の事例と補助金活用(活用のコツ)
北海道の草地型酪農では、石混じりや凍結融解で劣化した草地が多く、サブソイラー等を使った物理的改善と品種更新で回復した事例が報告されています。地域の農業高校やJAと連携した共同更新の取り組みも成功例が多く、人的負担とコストの分散に有効です。
補助金は年度や施策により内容が変わるため、申請前に最新の公的情報を確認してください。補助金申請では、更新後の生産見込み(収量向上予測)や環境効果を明確にして申請書を作ると採択率が高まります。

収量向上予測や環境効果を明確に申請で採択率アップ
現場チェックリスト(プリントして使える)
以下は更新計画時の最低限のチェック項目です。現場担当者で共有して使ってください。
- 土壌診断(pH、P、K、CEC)→日付:________
- ルートマット厚さ測定→結果:________
- 選定品種と播種量(kg/ha)→________
- 使用する機械・資材(トラクター馬力、サブソイラー、シードマスター)→________
- 除草計画(事前・播種床処理・播種後)→________
- 施肥計画(基肥・追肥の予定)→________
- 予算と補助金候補→________

施肥計画で早期定着と収量安定をサポート
まとめ・次の一手
草地更新は短期的な手間と費用が発生しますが、中長期的な収益性改善と持続可能な飼料自給率向上に直結します。まずは小区画で簡易更新を試験的に行い、得られたデータをもとに全面更新の時期を決める“段階的更新”をおすすめします。
次にやるべきこと:
1) 土壌診断を行う(まずはpHとP・K)
2) 使用可能な機械と予算を確認する
3) 地域の試験圃場や先行事例を参照して品種を決める
草地更新は、酪農経営の収益性・持続可能性を同時に高める戦略的な手法です。収量・品質の向上、土壌改善、経済効果、労働負担軽減といった多くのメリットがあり、適切な方法と更新頻度を守ることで長期的なコストダウンも可能になります。補助金制度や地域事例も活用し、持続可能な飼料生産を実現しましょう。

草地更新で収量・品質アップ&飼料自給率向上!
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