酪農の主要牧草ガイド|チモシー・アルファルファ・ライグラスの特徴と栽培法

チモシー・アルファルファ・ライグラスの酪農用牧草フィールド 酪農
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牛の健康と乳質を左右する「牧草選び」。北海道・東北など高冷地の実務経験を踏まえ、各牧草の特徴・栽培ポイント・利点と欠点、実践的な混播・給餌法まで、草地・飼料生産学研究室出身の筆者がわかりやすく専門性高くまとめました。

導入:なぜ牧草選びが重要か

牧草は酪農における主飼料です。牧草の種類・栽培管理・収穫タイミングが牛の摂取栄養、消化効率、乳量・乳質に直接影響します。稲科(チモシー等)とマメ科(アルファルファ等)を適切に組み合わせることで、タンパク質と繊維のバランスが取りやすくなり、粗飼料主体の飼養管理であっても高い生産性を維持できます。

この記事は酪農場での実務を想定した解説です。地域の気候や土壌に応じた品種選定・防除計画は、自治体の普及指導所や種苗会社の最新資料も合わせて参考にしてください。

主要牧草の比較早見表

牧草耐寒性収量性栄養特性代表的な用途
チモシーイネ科非常に高い中〜高適度な繊維、消化良採草(干し草)、放牧
イタリアンライグラスイネ科高(短期集中的)嗜好性・新鮮飼料向き生刈り、ロールサイレージ
オーチャードグラスイネ科再生力高、放牧向き放牧・採草の両用
ペレニアルライグラスイネ科中〜高高栄養価、初期生育良放牧、採草
アルファルファマメ科高タンパク・カルシウム粗飼料栄養補強、乾草・サイレージ

1. チモシー(Timothy Grass) — 高冷地の定番

Compressed imported hay block for dairy cow feed, such as alfalfa or timothy
輸入された圧縮乾草ブロック(チモシー)

特徴

チモシーは多年生で耐寒性が非常に高く、北海道や東北などの高冷地で広く用いられる採草用牧草です。穂が立つ株姿が特徴で、消化の良い繊維質を供給します。冬越し・春先の利用に強みがあります。

栽培のポイント

  • 播種時期:春(4〜5月)または秋(9〜10月)。
  • 土壌:pH5.5〜6.5、排水の良い土壌を好む。石灰は過剰にしない。
  • 施肥:窒素中心。ただし過剰施肥は茎葉の過剰成長による倒伏の原因。
  • 管理:1〜3番刈りを目安に、乾草利用なら刈り時をやや遅らせて繊維を確保。
  • 混播:オーチャードグラスなどと混播することで再生力と収量の安定化が図れる。

利点・欠点(実務視点)

  • 利点:優れた耐寒性、良好な乳量安定化効果、干し草品質が高い。
  • 欠点:再生力は品種によるがやや弱く、高温多湿には弱い。

2. イタリアンライグラス(Italian Ryegrass) — 速生で収量が出る「短期戦」型

イタリアンライグラス
酪農で使われるイタリアンライグラス

特徴

イタリアンライグラスは速生性が高く、短期集中の収穫で高品質な飼料を確保しやすいのが特徴です。一年生扱いの品種も多く、オーバーシード(追播)や早生品種の利用で短期間に収量を得られます。

栽培のポイント

  • 播種:春(3〜5月)や秋(8〜10月)。
  • 肥沃な土壌を好み、窒素肥料はやや多めに。
  • 収穫:2〜4回の収穫が可能。生刈り・ロールサイレージ用途に適す。
  • 注意点:耐寒性は中程度。厳寒地では冬越しが難しいことがある。

利点・欠点

  • 利点:初期生育が速く、嗜好性が高い。乳牛の鮮飼料摂取量を伸ばせる。
  • 欠点:耐寒性に限界があり、旺盛な競争力で混播相手を抑えることがある。

3. オーチャードグラス(Orchard Grass) — 再生力と放牧適性

画面中央に映るオーチャードグラスの牧草
中央に生えるオーチャードグラス

特徴

オーチャードグラスは多年生で再生力が高く、放牧と採草の両用途で使いやすい牧草です。地下茎型で根張りが良く、雑草抑制や耐乾性にも強みがあります。

栽培のポイント

  • 播種:春または秋。土壌pH5.5〜7.0を好む。
  • 施肥:窒素とリン酸をバランスよく。収量を上げたい時は追肥を計画的に。
  • 管理:収穫適期の幅が比較的広く、初心者でも扱いやすい。

利点・欠点

  • 利点:再生力が強い、放牧での回復が早い、雑草抑制力。
  • 欠点:育成条件によってはチモシーに比べ生産力がやや劣ることがある。

4. ペレニアルライグラス(Perennial Ryegrass) — 高栄養で使い勝手の良い多年草

特徴

ペレニアルライグラスは世界的に広く使われる多年生のライグラスで、初期生育が良く栄養価も高め。放牧や採草、混播用として万能に使えます。

栽培のポイント

  • 播種:春または秋。排水良好な肥沃地を好む。
  • 施肥:窒素中心で生育促進。過湿を避ける。
  • 活用:放牧地の補修や混播で利用すると効果的。

利点・欠点

  • 利点:高栄養価で乳量向上に寄与、放牧との相性が良い。
  • 欠点:チモシーほどの耐寒性はないため、凍結が厳しい地域では注意。

5. アルファルファ(Alfalfa) — 高タンパクの栄養補完役

輸入アルファルファ(ルーサン)牧草ブロックの実写真
輸入されたアルファルファの圧縮ブロック

特徴

アルファルファはマメ科の多年生牧草で、タンパク質とカルシウム含量が高く、粗飼料の栄養補完に優れます。根が深く耐乾性にも強みがあります。

栽培のポイント

  • 播種:春(4〜5月)が基本。種子は土壌に浅く覆土する。
  • 土壌:pH6.5以上の石灰質土壌を好む。施肥はリン酸・カリが重要。
  • 収穫:年3〜5回が可能。多回収穫の管理が必要。
  • 病害虫対策:病害虫にやや弱いので輪作や圃場管理が重要。

利点・欠点

  • 利点:高タンパク・高カルシウム、乳牛の栄養強化に最適。
  • 欠点:耐寒性は中程度で、厳寒地では越冬管理が必要。病害虫の管理コストがかかる。

混播(ミックス)と飼料設計の実務ガイド

単一草種よりも混播(複数種類の牧草を同一圃場で混ぜて播く)することで、収量の安定化、耐候性の向上、栄養バランスの改善が期待できます。以下は現場で使える実践例です。

代表的な混播例と目的

  • チモシー+オーチャードグラス:耐寒性を確保しつつ、再生力を高める。高冷地の長期放牧向け。
  • イタリアンライグラス+アルファルファ:短期で高品質飼料を確保しながらタンパクを補う。生刈りやサイレージに向く。
  • ペレニアルライグラス+クローバー類:放牧地の土壌固定と窒素供給を促す。化学肥料の削減にも寄与。
白クローバー
白クローバー根粒菌が窒素固定をしてくれます

栄養設計の目安(成牛の例)

粗飼料主体の配合を考える際、粗タンパク(CP)と可消化養分(TDN)をバランスさせます。アルファルファを一定割合(例:乾物ベースで10〜20%)混ぜるだけで粗タンパクが上がり、乳量維持に寄与しやすくなります。具体的な配合は個体・生産段階によって調整してください。

圃場管理カレンダー(一般的目安)

季節作業ポイント
春(3〜5月)播種、土壌検査、初期施肥土壌pHと窒素補給を確認。春播した草は速やかに追肥。
初夏(6月)1番刈り(採草)刈り時は穂立ち前の栄養ピークを狙う。
夏(7〜8月)追肥、害虫・病害確認高温期の生育遅延に注意。適宜潅水や輪作。
秋(9〜10月)秋播き、土壌改良、最終追肥秋播きは越冬用の草地を作るのに有効。
冬(11〜2月)設備点検、乾草管理乾草・サイレージの品質チェックを行う。

給餌と保存(乾草・サイレージ)の注意点

乾草化のコツ

  • 刈り時の含水率を管理(地域・気象によるが一般的に15〜18%程度を目標)。
  • 風通しの良い天日干し+夜露対策で品質保持。
  • 発熱や発酵臭がする場合は廃棄判断を早めに。

サイレージ化(丸ロール・ピット)のポイント

  • 適切な含水率(約30〜40%)を保つ。過乾燥・過湿は発酵不良の原因。
  • 梱包密度を高め、空気侵入を防ぐ。白・黒フィルム等で遮光。
  • 切り返し・開封後は早めに消費。表面のカビは除去してから給餌。
WCS(ホールクロップサイレージ)
稲科牧草を乳酸菌発酵したWCS(ホールクロップサイレージ)です。

病害虫と防除の基礎

牧草の病害虫は収量・品質に直結します。代表的な問題と対応は以下。

  • 葉斑病・白絹病:輪作・排水改善・耐病性品種の導入で予防。
  • ネキリムシ類:深耕や播種時期の調整、必要に応じて防除薬剤を使用。
  • ウイルス性病害:伝搬源の除去と防除ネットワークの構築。

防除は地域の普及員や獣医、種苗会社の推奨に従って行ってください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 北海道ではどの牧草を優先すべきですか?

A1. 高冷地の北海道ではチモシー中心で、耐寒性の面からオーチャードグラスやペレニアルライグラスを混播して耐久性を高めるのが一般的です。アルファルファは越冬管理が必要なため、地域条件を見て導入を検討してください。

Q2. アルファルファの病害対策は?

A2. 土壌検査でpHを適正に保ち、輪作を行うことで土壌伝染性の問題を抑えます。初期生育期の密度管理や適切な施肥で健全な立ち上がりを促すことも重要です。

Q3. 乾草とサイレージ、どちらが良いですか?

A3. 目的によります。乾草は長期保存と給餌の取り扱いが簡単で、乳牛の粗繊維補給に優れます。サイレージは発酵飼料として嗜好性が高く、短期で高品質な粗飼料を確保しやすいです。混用することでメリットを相殺できます。

次に何をすべきか(現場で使えるチェックリスト)

  1. 圃場の土壌検査を実施(pH・有機物・P・K)。
  2. 栽培目的(乾草・サイレージ・放牧)を明確にし、それに合った草種を選定。
  3. 混播や輪作計画を立て、種子量・播種時期を最適化。
  4. 収穫計画(刈り時と含水率管理)を作り、設備・人員を確保。
  5. 収穫後は保存品質をチェックし、飼料分析を定期的に実施。

まとめ:地域と目的に合わせた「最適な組み合わせ」を作る

酪農で成果を上げるには、単に「高収量」を追うだけでは不十分です。地域の気候、圃場土壌、飼養体系(放牧中心か採草中心か)に応じて、チモシー、イタリアンライグラス、オーチャードグラス、ペレニアルライグラス、アルファルファの長所を組み合わせることが重要です。混播・輪作・収穫管理を適切に行えば、乳量・乳質・経営安定性の向上が期待できます。

現場での品種選定や防除対策は、地元普及員や種苗メーカーの最新情報を参考にしてください。圃場ごとに最適解は異なります。

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この記事を書いた人

神奈川県横浜市の非農家に生まれる。実家では犬を飼っており、犬部のある神奈川県立相原高校畜産科学科に進学。同級生に牛部に誘われ、畜産部牛プロジェクトに入部。牛と出会う。

大学は北海道の酪農学園大学に進学。サークルの乳牛研究会にて会長を務める。ゼミでは草地・飼料生産学研究室に所属。

今年で酪農歴10年!現在は関西の牧場にて乳肉兼業農場の農場長として働いています。

【保有免許・資格・検定】普通自動車免許・大型特殊免許・牽引免許・フォークリフト・建設系機械・家畜商・家畜人工授精師・日本農業技術検定2級・2級認定牛削蹄師

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