酪農の「秋落ち」とは?秋に乳量が下がる理由と対策:ライトコントロールで守る酪農経営

秋落ちで乳量が低下する酪農現場の牛舎とライトコントロールの様子 酪農
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秋になると多くの酪農場で経験する「秋落ち」。日照時間の短縮や夏の暑熱ストレスの残存、飼料品質の変化、そして防疫上のリスク増加が重なり、乳量が急に落ちる現象です。本記事では、現場で即実行できるライトコントロールや飼料管理、防疫対策を中心に、導入時の注意点やコスト感まで実務目線でわかりやすく解説します。

秋落ちの概要:なぜ秋に乳量が落ちるのか

秋落ち」とは、主に夏の終わりから秋にかけて牛の泌乳量が季節的に低下する現象を指します。日照時間の短縮や気温変化、夏の高温ストレスの残存、飼料の栄養変動、防疫リスクの増加など複数要因が重なり合って発生します。

現場で見るポイントは次の通りです。

  • 日照時間の短縮によるホルモン変化(メラトニン増加など)で乳量が落ちる
  • 夏バテや暑熱ストレスが秋になって影響を残す
  • 飼料(乾物摂取量・品質)の変化で乳成分や量が変わる
  • 秋は病原体リスクが高まり、健康低下が乳量に直結する

実務では乳量が10〜20%程度落ちることがあり、規模や繁殖サイクルによって影響度は上下します。

原因を現場目線で分解する(チェックリスト)

  • 光周期(照明):日照時間が短くなるとプロラクチン分泌が低下し、泌乳量に影響。
  • 温度ストレスの残存:夏の高温が乾乳期や移行期に影響すると、次季のピーク乳量が低下。
  • 飼料の質・摂取量:収穫時期や貯蔵状態の違いで栄養が不足しやすい。
  • 防疫・衛生:秋口は抵抗力が低下しやすく、感染症で急激に乳量が落ちる。

現場で効く対策:実務的で再現性の高い手順

1. ライトコントロール(人工照明の導入)

ポイントは「明期を延長する」こと。農場規模や器具で差がありますが、実務上は明期を16〜18時間程度に整えることが基本です。早朝に点灯し夜間に消灯するなど、一定のリズムを維持してください。

導入時の注意:

  • LED器具は初期費用はかかるが省電力で長寿命
  • 照度は牛が活動しやすい範囲を確保(現場で照度計を使って調整)
  • 給餌や搾乳のスケジュールと合わせた点灯タイミングが効果的

2. 飼料管理の最適化

秋は飼料の乾物摂取が不安定になりやすい時期です。事前に栄養バランスを見直し、必要なエネルギーとタンパクを補えるように配合を調整します。乾物摂取量が一時的に落ちる想定で、繊維とエネルギーのバランスを保つことが重要です。

3. 防疫と衛生の強化

秋口は牛の抵抗力が下がるため「持ち込ませない・持ち回らない・持ち出さない」の基本を徹底します。人と車両の消毒、隔離管理、乾燥した床材の確保などで感染リスクを下げることができます。

4. 暑熱ストレスの「後処理」

夏の暑熱が乾乳・移行期に与えた影響を放置しないこと。分娩前後の栄養管理、体調管理を丁寧に行えば、秋の乳量回復が速くなります。

導入コストと効果の見積り(現場で使える簡易表)

導入前に簡易ROIを計算して置くと意思決定がしやすくなります。以下は考え方の一例です(実際の数値は施設規模・電気料金・乳価で変動します)。

項目例(100頭規模)
LED器具・タイマー等初期費用例:数十万〜数百万円
年間電気代増(概算)例:数万円〜十数万円
想定乳量回復による増収乳量回復で年間の牛乳収入が増加(乳価に依存)
回収年数(概算)導入費 ÷ 年間増収(目安)=回収年数

重要なのは「現場で計測した乳量変化」をベースに現実的な数値で回収期間を算出することです。導入前後での数ヶ月の比較をお勧めします。

現場でよくある質問(FAQ)

Q. 何時間照明を延長すればいいですか?

A. 一般的には明期を16〜18時間に整えるのが有効です。現場の環境や牛の状態で微調整してください。

Q. LED以外の方法はありますか?

A. 自然光が入る設計や、給餌・搾乳のスケジュール最適化で光周期の影響を緩和することも可能です。ただし確実な効果を求めるなら人工照明がわかりやすいです。

Q. まず何から手を付ければ良いですか?

A. まずは「乳量の時系列データ」を整え、秋口の変化幅を把握すること。次に照度と飼料の現状チェックを行い、優先順位をつけて対策を実施してください。

まとめ:秋落ちは防げる、だが準備が鍵

秋落ちは単一要因ではなく、光周期・飼料・健康管理・過去の暑熱影響が複合して発生します。対策は組合せが肝心で、まずは乳量の時系列データを整え、照度と飼料摂取を現場で計測すること。効果の高い対策は(1)ライトコントロール(明期16〜18時間を目安)、(2)飼料バランスの事前調整、(3)秋口の防疫強化、(4)夏の暑熱影響への手入れ、の4点です。導入前に簡易ROIを試算し、数ヶ月単位で効果検証を行えば、秋落ちによる損失を大幅に抑えられます。

この記事は現場での経験と実務的な視点を基に作成しました。導入時には各地域の条件や規模に合わせた調整を行ってください。

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この記事を書いた人

神奈川県横浜市の非農家に生まれる。実家では犬を飼っており、犬部のある神奈川県立相原高校畜産科学科に進学。同級生に牛部に誘われ、畜産部牛プロジェクトに入部。牛と出会う。

大学は北海道の酪農学園大学に進学。サークルの乳牛研究会にて会長を務める。ゼミでは草地・飼料生産学研究室に所属。

今年で酪農歴10年!現在は関西の牧場にて乳肉兼業農場の農場長として働いています。

【保有免許・資格・検定】普通自動車免許・大型特殊免許・牽引免許・フォークリフト・建設系機械・家畜商・家畜人工授精師・日本農業技術検定2級・2級認定牛削蹄師

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