農業従業員の給与が65.3%上昇|稲作・酪農で進む賃金改善と現場対策(2025)

農業従業員の給与65.3%上昇|稲作と酪農で進む賃金改善と現場対策 2025 酪農
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2025年の調査で、「従業員1人当たりの所定内給与が直近1年で上昇している」と回答した農場が全体の約65%に達したことが明らかになりました。なかでも稲作と酪農で上昇傾向が強く、現場の労働条件改善が進んでいます。本記事ではデータの要点を整理し、現場の農場長がすぐに使える短期・中長期の対策、求人に使える文例やコスト試算を分かりやすくまとめます。

この記事のポイント(要約)

  • 農業従業員の給与上昇は全体の約65%で確認。稲作・酪農で特に顕著。
  • 上昇の背景は人手不足対策、最低賃金の影響、コスト構造の変化など複合的。
  • 農場でできる即効性のあるアクションと持続的な対策を具体的に提示。
  • 求人文例・給与テーブル・補助金を活用した資金計画の考え方を紹介。

現状の整理:何が起きているのか

調査のポイントを現場目線でまとめると、「賃金が上がり始めている」ことが第一の事実です。とくに労働集約的な稲作と、飼料費・労働負荷の高さが問題となる酪農で賃金改善の動きが目立ちます。

現場で感じる変化(実感)

  • 求人応募の質は上がるが、採用コスト(求人広告・面接時間)は増える
  • 短期で応募を集めるには賃金上乗せが効果的
  • 長期定着には賃金以外の働きやすさ(休み、教育、住環境)が重要

なぜ給与は上がっているのか?(背景要因)

1)深刻化する人手不足

農業全体で人手が足りない状況が続き、特に繁忙期の確保が難しくなっています。採用競争が激化するため、賃金を上げて応募を増やす動きが出ています。

2)最低賃金や地域賃金の底上げ

最低賃金の上昇は農業にも波及します。地域ごとの生活コストに合わせて賃金を見直す農場が増えています。

3)経営面の調整(価格転嫁や生産性向上)

飼料や肥料のコスト上昇を受けて、販売価格の見直しや省力化投資を進める経営体があり、賃金改善の余地が生じています。

業種別のポイント(稲作/酪農)

業種特徴現場での影響
稲作繁忙期に大勢の作業員を必要とする。機械化と人手の組合せが鍵。手当や日給の上乗せで短期の人手確保が進むが、長期雇用は教育が必要。
酪農毎日のルーチン業務(搾乳・給餌・管理)が多く、重労働。賃金上昇は定着に直結しやすい。機械化投資で負担軽減を図るところが増加。

農場長がすぐに使える<短期対策>(即効性あり)

  • 時給・日給の一時上乗せ:繁忙期や即戦力採用時に有効。応募率の伸びが期待できる。
  • 通勤手当・住宅手当の明示:求職者は総取り分を重視するため、支給条件を求人に明確化する。
  • 採用のターゲティング:学生向け・兼業者向け・未経験歓迎の枠を作り、募集チャネルを分ける。
  • 短期契約→長期雇用への導線:試用期間を設け、教育プログラムで定着化を図る。

中長期で進めたい<持続可能な人材戦略>

1. 機械化・設備投資で労働負担を下げる

自動給餌器や搾乳ロボットなど、初期投資が必要な設備は長期的な人件費圧縮につながります。補助金や助成制度を活用して導入コストを抑える方法が現実的です。

GEA MIone robotic milking system for large-scale dairy farms with multi-box setup
GEA製の自動搾乳ロボット「MIone」

2. キャリアパスと賃金テーブルの明示

入社→育成→リーダー昇格という賃金設計を明確にし、モチベーションと定着率を高めます。具体的な目安(月給/時給レンジ)を求人に載せると良いです。

3. 多様な雇用形態の活用

短時間シフト、高齢者や兼業者の受け皿、外国人労働者の適正な受け入れ体制などを整備すると人材プールが広がります。

求人で使える文例(実際にコピペして使える)

【募集職種】酪農スタッフ(正社員)
【給与】月給 230,000円〜300,000円(経験・能力により決定)+通勤手当+住宅手当
【勤務時間】実働8時間(早出・遅出あり)/週休2日(交替)
【福利厚生】社会保険完備、賞与年2回、住宅相談可、教育制度あり
【応募】メールまたは電話で履歴書を送付ください。面接後、体験就業あり。
    

※短期バイトやパート向けには「日給例:10,000円〜/時給:1,200円〜」のように明示すると応募が増えます。

現場での簡易コスト試算(例)

例:従業員1名の月額コスト(概算)

項目金額(円)
所定内給与(基本給+手当)250,000
社会保険(事業者負担分)30,000
通勤・住宅手当10,000
合計(目安)290,000

賃金を上げる場合、この差分をどう生産性や販路でカバーするかが経営の要点です。

補助金・支援を使った賃金改善の考え方(方針)

賃金の恒常的引上げは経営負担になりますが、以下の組合せで負担を軽減できます:

  • 補助金で設備投資(省力化)→人件費抑制
  • 短期の賃金上乗せを助成で補填する施策の活用(都道府県ごとに異なる)
  • 販路改善(直販・ブランド化)で販売単価を向上させる

今後の方針

  1. 求人の見直し:給与と手当を含めた条件の明示で応募を増やす。
  2. 短期施策と中長期施策の両輪:繁忙期対策と設備投資を並列で進める。
  3. 現場の見える化:賃金テーブル・育成計画を社内で共有し、定着率を高める。

まとめ

  • 現状:担い手農業者の約65%で所定内給与が上昇。稲作・酪農でとくに顕著。
  • 背景:人手不足、最低賃金上昇、コスト構造の変化、機械化・外国人労働者活用などが複合要因。
  • 短期対策:繁忙期の一時上乗せ、手当明示、ターゲット別求人、試用→本採用の導線化。
  • 中長期対策:設備投資による省力化、賃金テーブルの明示、キャリア育成と多様な雇用形態の整備。
  • 実務ポイント:求人では具体的な給与例と手当を明示し、補助金や販路改善を組み合わせて賃上げの持続可能性を担保する。

よくある質問(FAQ)

Q. 給与を上げるとすぐに人が来ますか?

A. 短期的には応募数は増えますが、長期定着は職場環境や教育が鍵です。

Q. 小規模農家でも賃金改善は可能ですか?

A. 可能です。補助金や共同利用(機械や作業の共用)で初期コストを抑える工夫が有効です。

Q. 求人に載せる「具体的な給与例」はどこまで出すべきですか?

A. 最低ラインと平均例、手当の範囲を明示すると応募者の安心感が増します。

最後に:賃金上昇は雇用環境の改善を示すポジティブなシグナルです。ただし、現場の経営負担をどう分配するかが重要。賃金だけでなく「働きやすさ」と「将来像」を示すことで、安定した人材確保につながります。

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この記事を書いた人

神奈川県横浜市の非農家に生まれる。実家では犬を飼っており、犬部のある神奈川県立相原高校畜産科学科に進学。同級生に牛部に誘われ、畜産部牛プロジェクトに入部。牛と出会う。

大学は北海道の酪農学園大学に進学。サークルの乳牛研究会にて会長を務める。ゼミでは草地・飼料生産学研究室に所属。

今年で酪農歴10年!現在は関西の牧場にて乳肉兼業農場の農場長として働いています。

【保有免許・資格・検定】普通自動車免許・大型特殊免許・牽引免許・フォークリフト・建設系機械・家畜商・家畜人工授精師・日本農業技術検定2級・2級認定牛削蹄師

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