乳牛の遺伝的評価指標として世界中で注目される「LPI(Lifetime Performance Index)」。特にカナダでは、酪農生産性や持続可能性を左右する重要な要素として、毎年多くの酪農家が評価結果をもとに繁殖計画を立てています。本記事では、2025年4月に予定される最新のLPI改訂内容をはじめ、指数の仕組みやカナダ酪農業の背景、更新によってもたらされる影響をわかりやすく解説します。

LPIは乳牛の遺伝評価の世界標準!カナダの酪農家も注目する重要指標です。
2. LPI(Lifetime Performance Index)とは
LPIは乳牛一頭あたりの生涯パフォーマンスを総合評価する指標で、カナダの遺伝評価機関「Lactanet」によって算出されます。酪農家はLPI値を参考に、雄牛や優良雌牛の選択、繁殖戦略の構築を行います。

LPIは乳牛の生涯パフォーマンスを数値化したカナダ発の重要な評価指標!
2.1 現行LPIの構成要素
- 生産性(Production):乳量や乳成分の指標で構成され、全体の約51%を占める。
- 形質(Conformation):乳房形状や体型骨格など、搾乳適性を表す数値で約29%。
- 健康・繁殖性(Health & Fertility):子牛誕生までの期間や疾病抵抗性を示し、約20%が割り当てられる。
各要素はさらに「Herd Life(HL)」「Daughter Fertility(DF)」「Somatic Cell Score(SCS)」など複数のサブ指標に細分化され、標準化スコアとして算出されます。たとえば、HLが平均より1ポイント高い場合、LPI全体に対して20ポイントの加算がなされます。

LPIは生産性、形質、健康・繁殖性の3つの要素で総合評価されています。
3. 2025年4月予定のLPI更新ポイント
2025年4月に導入される改訂版LPIでは、指数のバランス調整や新要素の追加が行われ、環境配慮の観点も盛り込まれます。
- 生産性の重みを51%から40%へ減少:過剰な乳量偏重を是正し、形質や健康の重視比率を高める。
- 6つのサブ指標を再編:
- 生産量
- 寿命と体型
- 健康・福祉
- 繁殖能力
- 搾乳適性
- 環境影響(メタン排出量など)
- 環境影響評価の導入:メタン排出や飼料効率を評価対象とし、持続可能な酪農経営を促進。
この更新により、従来のランキング上位群でも順位変動が予想され、特に形質と環境サブ指標で高評価を得る牛が評価を伸ばす見込みです。

2025年4月、LPI改訂で環境配慮が加わり持続可能な酪農へ一歩前進!
4. カナダ酪農業の背景と特徴
カナダの酪農業は国内農業セクターで赤肉に次ぐ規模を誇り、供給管理制度による価格安定が大きな特徴です。
- 経済規模:GDPへの貢献額は約199億カナダドル(2018年)、雇用創出は22万人以上。
- 主要生産地:ケベック州(国内生産37%)、オンタリオ州(33%)が中心。平均乳牛数は約89頭/農場。
- 供給管理制度(Supply Management):国内需要に合わせた生産割当と輸入制限で、市場価格と生産量を安定化。
近年、搾乳ロボットや自動給餌システムの普及が進み、1頭あたりの乳量は30%増加。また、環境負荷低減の取り組みとしてメタン削減プロジェクトが各地で実践されています。

カナダ酪農はGDP約199億カナダドル、22万人の雇用を支える大規模産業です。
5. 更新による酪農家への影響と対策
5.1 繁殖戦略の見直し
形質や健康指標の比重増加は、長期的な繁殖計画に大きく影響します。従来の高乳量優先から、丈夫で長寿命・低環境負荷の個体を選抜する傾向が強まるため、以下のような対策が有効です。
- データ活用:Lactanet提供のExcelツールで改訂後のLPIをシミュレーションし、最適な雄牛を選定。
- 専門家コンサルティング:獣医師や遺伝評価コンサルタントへの相談で、個々の農場環境に合った繁殖戦略を策定。

形質や健康重視で、丈夫で長寿命な乳牛の繁殖が求められる時代に。
5.2 環境負荷低減への取り組み
メタン排出評価の導入に伴い、飼料の発酵効率改善や消化促進サプリメントの導入が注目されます。また、堆肥管理や温室効果ガス監視機器の導入も効果的です。

メタン排出評価で飼料効率を改善し、環境に優しい酪農を目指そう!
6. LPI以外の評価指標との比較
米国では「Net Merit(NM)」、「TPI(Total Performance Index)」などが主流ですが、カナダのLPIは環境配慮を早期に取り入れた点で先進的です。各指標の特徴は以下の通りです。
指標名 | 主な評価項目 | 環境配慮 | 発表頻度 | 対象地域 |
---|---|---|---|---|
LPI | 生産・形質・健康・環境 | ○ | 年1回 | カナダ |
NM$ | 生産・乳成分・体型・繁殖 | × | 年2回 | 米国 |
TPI | 生産・乳成分・形質 | × | 年2回 | 米国 |

LPIは環境配慮を早期導入した先進的な乳牛評価指標です。
7. まとめ
- 改訂の核心:生産性の重みが51%→40%に減少し、健康・形質・環境評価を強化。
- 新サブ指標:生産量・寿命&形質・健康福祉・繁殖能力・搾乳適性・環境影響の6項目で総合評価。
- 背景・制度:供給管理制度で安定した価格体系を持つカナダ酪農業は、技術革新と持続可能性に注力中。
- 酪農家の対策:Lactanetのシミュレーションツール活用、獣医師や遺伝評価専門家への相談で最適繁殖戦略を。
- 展望:環境負荷低減もスコアに反映される新LPIは、持続可能な経営と高い評価を両立する鍵となります。
2025年4月に改訂されるカナダのLPIは、生産性偏重からバランス重視へのシフト、環境影響評価の導入という点で酪農業の新たな潮流を示します。酪農家はLPI改訂を機に、長期的な繁殖戦略や環境対策を再構築することで、持続可能かつ効率的な経営を実現できるでしょう。
今後もLactanetの公式サイトや専門セミナーで最新情報をキャッチし、改訂版LPIを活用した最適な繁殖計画を立ててください。

2025年改訂LPIは生産性偏重から健康・環境重視へ大きくシフト!
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