敷料(bedding material)は牛の快適性と乳質管理に直結する重要な要素です。おが粉や麦稈、籾殻、戻し堆肥、さらにはコーヒー粕などの代替素材まで、各素材の特徴と現場での使い方を比較します。コスト・供給安定性・衛生管理のポイントを押さえ、小さな試験導入で失敗を避ける実践的な選び方を現場目線で解説します。

敷料選びは経済性と入手しやすさも重要な判断基準です。
敷料の役割 — なぜ重要か
敷料は単に床を覆う素材ではありません。吸湿性で牛の皮膚を乾燥させ、クッション性で寝姿勢を安定させ、衛生性で乳房炎や蹄病のリスクを低減します。牛の滞在時間が長いフリーストールでは特に敷料の品質が乳量・乳質に影響します。

快適な寝床は滞在時間の延長とストレス軽減につながります。

主な敷料の種類とメリット・デメリット
以下は現場で多く使われる主要6種の比較です。
種類 | 特徴 | 利点 | 欠点 / 注意点 |
---|---|---|---|
おが粉(おがくず) | 製材の副産物・細粒 | 吸水性・クッション性良好、自動散布機に適応 | 供給不足で価格変動、細菌繁殖に注意でこまめな交換が必要 |
バーク(樹皮) | 粗めの木材残渣 | 安価、持ちが良い、堆肥化しやすい | 粒が粗く刺激になる場合あり、粉塵対策必要 |
麦稈ロール(麦わら) | 圧縮ロール状のわら | 環境負荷小、通気性良、安価な時あり | 吸水性は低めで交換頻度増、季節・供給不安定 |
籾殻(もみ殻) | 稲の殻 | 大量安価、軽く扱いやすい | 粉塵が多く呼吸器に影響の恐れ、牛が食べると不調の可能性 |
戻し堆肥(牛ふん堆肥) | 自家製堆肥の再利用 | コスト削減・循環型、製品化されたサラサラタイプは省力化に有利 | 発酵不良や病原菌リスク、臭気・湿気管理が必須 |
代替素材(コーヒー粕・茶殻等) | 食品廃棄物由来の新素材 | 臭気対策や廃棄物活用、地域資源利用でSDGs効果 | 供給量の制約、長期的な安全性評価が必要 |

敷料の選び方(現場チェックリスト)
- 牛舎タイプを確認:フリーストールはクッション性重視、通路は耐久性重視。
- 吸水性と交換頻度:吸水性が低ければ交換コストが上がる。作業時間も考慮。
- 衛生管理:細菌繁殖のリスクと消毒しやすさを評価。
- コストと供給の安定性:地域資源(籾殻、麦稈等)を利用できるか。
- 環境負荷・堆肥化:最終的な処理方法(堆肥化の可否)も比較。

吸水性が低いと交換コスト増、作業時間も考慮が必要。

日々の管理ポイント(乳房炎対策を中心に)
敷料の選択と同じくらい重要なのは日々の管理です。以下は実践的なポイント:
- 朝晩の目視チェックで濡れ部分を早めに除去。
- 厚敷きは牛の体圧分散に有効だが、湿気が溜まりやすいので通気管理を徹底。
- 自動散布機を導入する場合は素材の粒度に注意(詰まり・劣化を防ぐ)。
- 戻し堆肥を使う場合は十分な加熱発酵を行い病原性低減を確認。

濡れ部分を早めに除去して乳房炎リスクを低減。

コスト削減と環境配慮の実践例
おが粉の高騰に対応して、混合敷料(おが粉+バーク)や戻し堆肥の活用で経費を下げつつ衛生を保つ事例が増えています。地域資源(籾殻・麦稈)を安定供給と結びつけることで運搬コストも削減できます。導入前に小区画で試験運用し、牛の反応と乳房炎発生率・体細胞数(SCC)を比較するのが安全です。

導入前に少頭数で試し、牛の反応や乳房炎発生率・SCCを確認。
現場ミニケーススタディ
例:北海道の中規模牧場では、麦稈に少量のおが粉を混ぜることでクッション性を確保し、敷料費を約20%削減。香川県の試験では、適切に処理した戻し堆肥を採用した区画でSCCが改善傾向を示した報告があります(事前の発酵と管理が鍵)。

麦稈に少量のおが粉を混ぜ、クッション性を確保しつつ敷料費を約20%削減。
よくある質問(FAQ)
Q1: 敷料はどれくらいの頻度で交換すればいい? A: 素材と牛舎条件によるが、目安は毎日表面の濡れを取り除き、深刻な濡れは週1回の部分交換、全交換は素材次第で月1〜数か月。
Q2: おが粉が手に入らないときの代替は? A: バーク・籾殻・麦稈を混合して使う方法や、処理済み戻し堆肥を選ぶ方法がある。まずは小さな区画で適応試験を行うこと。
Q3: 敷料で乳房炎は本当に減る? A: 敷料の衛生状態が乳房への汚染リスクを左右します。吸湿性が高く頻繁に清掃できる素材を選び、乳房清潔操作と組み合わせればリスク低減効果は期待できます。
現場で使えるテンプレ—敷料選定チェックリスト
- 牛舎タイプ(フリーストール / タイストール / 放牧):
- 年間敷料費(目標):
- 供給元の安定性(〇/△/×):
- 堆肥化の可否(可/不可):
- 導入前試験の期間(例:1ヶ月):
まとめ(導入の一歩目)
- 敷料選びは「牛舎タイプ」「吸水性」「交換頻度」「供給の安定性」「堆肥化の可否」を基準に判断する。
- おが粉はクッション性・吸水性に優れるが価格と供給が不安定。バークや籾殻、麦稈は地域資源としてコストメリットがある一方、吸水性や粉塵対策が課題。
- 戻し堆肥は循環型でコスト削減に寄与するが、発酵管理と病原菌対策が重要。代替素材は臭気対策やSDGs的利点があるが供給と安全性の評価が必要。
- 導入前は小区画で試験運用を行い、SCC(体細胞数)や牛の行動、作業負担を数値で比較して判断すること。
- 日々の管理(濡れ部分の除去、通気管理、自動散布機の適正運用)が敷料効果を最大化し、乳房炎予防につながる。
敷料は乳質・牛の快適性・経営コストに直結します。まずは自分の牛舎の条件(牛舎タイプ・通気・作業時間)を整理し、小区画で代替素材を試し、SCCや牛の行動・作業負担を数値で比較してください。短期コスト削減だけでなく、長期的な衛生管理と堆肥処理の流れまで見据えた選択が、結果的に安定した乳生産につながります。

おが粉:クッション性・吸水性◎、価格・供給不安定
バーク・籾殻・麦稈:地域資源でコストメリット、吸水性や粉塵注意
戻し堆肥:循環型でコスト削減、発酵管理と病原菌対策必須
代替素材:臭気対策・SDGs効果あり、供給量と安全性評価が必要。
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