牛乳やチーズ、ヨーグルトなどの乳製品は、健康維持に欠かせないカルシウムやタンパク質源として広く親しまれています。しかし「脳卒中のリスク」との関係性については、研究結果が必ずしも一致していません。本記事では、主要なメタアナリシスや大規模コホート研究、そして国際的なガイドラインを俯瞰しながら、乳製品が脳卒中リスクに及ぼす影響をわかりやすく解説します。

牛乳・ヨーグルトは脳卒中リスクを下げる?それとも上げる?
脳卒中とは何か?──基礎知識を押さえる
脳卒中(ストローク)は、脳内の血管が詰まる「虚血性脳卒中」と、血管が破れて出血を起こす「出血性脳卒中」の大きく二つに分けられます。いずれも放置すると半身麻痺や言語障害、生命に関わる重篤な結果を招く可能性があり、予防対策が重要です。
- 虚血性脳卒中:脳血管が血栓などでふさがり、血流が途絶えるタイプ。全脳卒中の約80%を占める。
- 出血性脳卒中:脳の血管が破れて出血し、血腫によって脳組織が圧迫されるタイプ。重症度が高い。
生活習慣病(高血圧、脂質異常、糖尿病)や遺伝的要因のほか、食事も大きな予防要素とされています。

脳卒中は「詰まる」か「破れる」か──2タイプに分類!
乳製品の種類と摂取量のポイント
乳製品は「全脂」「低脂肪・無脂肪」「発酵食品(チーズ・ヨーグルト)」に大別できます。
- 全脂乳製品:牛乳、クリーム、バターなど。飽和脂肪酸が比較的多いため、過剰摂取は脂質異常のリスク要因に。
- 低脂肪・無脂肪乳製品:乳脂肪分を減らした牛乳やヨーグルト。カルシウムやタンパク質はそのままに、飽和脂肪を抑えられる。
- 発酵乳製品:チーズ、ヨーグルト。プロバイオティクスや生理活性ペプチドが含まれ、血圧・コレステロール改善に寄与するとされる。
目安摂取量
1 日あたり乳製品換算で 牛乳200ml、ヨーグルト100g、チーズ20g 程度が、多くの研究で推奨されています。

乳製品は“全脂・低脂肪・発酵”の3タイプに分けられる!
科学的エビデンス──主要研究のポイントまとめ
2016年メタアナリシス(de Goede et al.)
- 対象:18の前向きコホート研究、762,414人・29,943例の脳卒中イベント
- 結果:
- 1日200gの牛乳摂取で脳卒中リスクが7%低下(相対リスク0.93)。
- チーズ摂取は20gあたり9%リスク低減。
- 東アジアでの保護効果(相対リスク0.82)が特に強い一方、西欧では有意差なし(0.98)。
2025年グローバル分析(Nature Communications)
- 対象:中国カドリー生物バンク&UKバイオバンクデータ
- 結果:
- 総乳製品摂取で脳卒中リスク6%低下。
- ただし全脂乳では出血性脳卒中リスクが8%増加(相対リスク1.08)。
PURE研究(2018年)
- 対象:21か国136,000人超
- 結果:
- 乳製品全般の摂取で脳卒中リスク34%低下。
- 全脂乳でも心血管リスクを32%低減。
これらの研究から、「低脂肪・発酵乳製品は脳卒中予防に有効」「全脂乳は出血性リスクに注意」の二つのトレンドが見えてきます。

牛乳200g/日で脳卒中リスクが7%も減るって知ってた?

チーズ20gで脳卒中リスクが9%低下という研究も!
なぜ乳製品が脳卒中リスクに影響を与えるのか?──潜在的メカニズム
乳製品に含まれる栄養素や生理活性成分が、下記のような生体反応を介して脳卒中リスクを調整すると考えられています。
- 血圧低下作用
- カルシウム、マグネシウムが血管拡張を促進。
- 乳由来ペプチドがACE阻害様作用を示唆。
- 血中脂質の改善
- プロバイオティクスを含む発酵乳でLDLコレステロール減少。
- 飽和脂肪を抑えた低脂肪乳で総コレステロール制御。
- インスリン感受性の向上
- 乳タンパク質やミネラルが糖代謝をサポートし、動脈硬化を抑制。
これらの作用が組み合わさることで、虚血性脳卒中や心血管疾患のリスク軽減につながると考えられます。

乳製品のカルシウムが“血圧を下げる”
健康組織のガイドラインはどう示している?
- アメリカ心臓協会(AHA)2024年ガイドライン
- 低脂肪・無脂肪の乳製品を「心臓に優しい食事」の一部として推奨。
- 乳製品が中心ではなく、果物・野菜・全粒穀物と組み合わせることを強調。
- オーストラリア脳卒中財団
- 減脂乳製品を脳卒中後の食事に推奨、カルシウム強化の植物性代替品も併記。
- 地中海式食事
- ヨーグルトやチーズを適度に含み、オリーブオイルや魚介類と組み合わせ。
いずれのガイドラインも、「バランスの取れた食事パターン」のなかで乳製品を位置付けています。

アメリカ心臓協会も「低脂肪乳製品」を推奨してるよ!
実践的アドバイス
- 低脂肪・無脂肪製品を選ぶ
- 牛乳200ml/ヨーグルト100g/チーズ20gを1日2~3サービング。
- 発酵乳製品を積極的に
- ヨーグルトやナチュラルチーズはプロバイオティクスで血圧改善に寄与。
- 他の食品とバランス良く
- 果物・野菜・全粒穀物・リーンなタンパク質と組み合わせる。
- 乳糖不耐症の場合
- A2ミルクを活用。
- 定期的な健康チェック
- 血圧・コレステロール値を把握して、摂取量を調整。

乳製品だけじゃなく“野菜・穀物・たんぱく質”と一緒に摂ろう!
まとめ
- 低脂肪乳やチーズ、ヨーグルトなどの発酵乳製品は、複数の研究で脳卒中リスクを5~9%低下させる関連が示されている。
- 一方、全脂乳は出血性脳卒中のリスクをわずかに増加させる可能性が指摘されている。
- アメリカ心臓協会やStroke Foundation Australiaなども、乳製品をバランスの取れた食事の一部として推奨。
- 1日牛乳200ml/ヨーグルト100g/チーズ20gを目安に、果物・野菜・全粒穀物と組み合わせて摂取すると効果的。
- 乳糖不耐症の方はA2ミルクを活用し、医療専門家の助言を得ながら調整を。
- 低脂肪乳・発酵乳製品は、虚血性脳卒中リスクを低下させる可能性が多くの研究で示唆。
- 全脂乳は出血性脳卒中リスク増加に注意が必要。
- 大規模ガイドラインも「乳製品はバランス食の一部」として推奨。
- 個人の体質や健康状態を考慮しながら、適量を目安にしましょう。
本記事が、「牛乳と乳製品選び」の参考になれば幸いです。健康維持の一環として、賢く乳製品を取り入れていきましょう。

低脂肪乳やヨーグルトで“脳卒中リスクを下げられる”
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