酪農現場で欠かせない粗飼料の一つが「デントコーン(dent corn)」。でん粉含有量が高く、安定した栄養供給を実現するデントコーンは、牛乳生産の土台を支えています。本記事では、デントコーンの基礎から栽培・調製方法、北海道における最新動向まで草地・飼料生産学研究室に所属していた筆者が解説します。

デントコーンは乳牛のエネルギー源!
1. デントコーンとは?
- 特徴: 穀粒上部に凹み(dent)があり、でん粉含有量が高い。甘みが少なく、家畜飼料専用。
- 用途: 牧草と混ぜて発酵させる「サイレージ」として利用。乾物栄養価が高く、冬場の飼料不足を補う。
- 国内生産の約7割が北海道で栽培され、全国の酪農を支える基盤となっている。

でん粉たっぷり!乾物でしっかり栄養補給

2. 酪農における役割
- 栄養バランスの安定化
- タンパク質、エネルギー源として優秀。牧草と組み合わせることで、乳牛の健康維持と乳量の安定をサポート。
- 季節を問わない飼料供給
- 収穫期にまとめてサイレージ化すると、年間を通じて一定の品質を確保できる。
- コスト管理
- 自家栽培すれば購入コストを抑えられ、経営安定に寄与。

自家栽培で飼料コストがグッと下がる!
3. 栽培からサイレージ調製までの流れ
3-1. 土壌準備と種まき
- pH管理: 5.8~7.0が最適。
- 肥料設計: 1haあたり窒素160~210kg、リン酸55kg、カリ175kg。
- 種まき時期: 土壌温度が8~10℃を超えた頃、深さ5~8cmに播種。

デントコーンはpH調整がカギ!5.8〜7.0を目指そう
3-2. 収穫タイミング
- 理想の乾物含量: 約35%(R5.5~R6期)。
- 切断長: 茎葉は9~12mm、穀粒は2mm以下に粉砕。

早すぎても遅すぎてもNG!サイレージの質に直結するよ
3-3. サイレージ化のポイント
- 細断・搬送: ハーベスターで細断後、トラックで場内サイロへ。
- 充填・密封: 20cmごとに圧縮し、酸素バリアシートとタイヤで密封。
- 発酵管理: 2~10日目に発生するガスを適切に排気しつつ、発酵完了を待つ。

サイレージの出来は密封次第!仕上がりで乳量が変わる
4. 地域特性と品種選び
北海道中心の栽培ですが、東北や関東以西でも栽培可能な品種が増えています。代表的なものを紹介します。
品種 | 主な適応地 | 日数 | 特徴 |
---|---|---|---|
P7631 | 北海道 | 82 | すす病抵抗性が高く、収量安定 |
P9027 | 北海道/東日本 | – | 北東北や高冷地で高い子実収量を実現 |
P9400 | 東西日本 | – | 背丈が高く、乾物収量を重視 |
P3577 | 南西日本 | – | 遅まきに強く、二期作に適している |

地域に合った品種選びがデントコーン成功のカギ!
5. 最近の動向と課題
- 道外販売の拡大
北海道で生産された余剰分を北関東や中部地方へ販売するモデルが始動。 - 主な課題
- 輸送コスト(特にトラック運転手不足)
- 販路開拓と需要喚起
これらの解決が進めば、酪農家の収益改善につながる可能性が高いです。

トラック不足がネック…輸送の工夫が鍵です!
6. デントコーンの病害と防除対策
デントコーン栽培において注意すべき病害の一つが「すす紋病」です。特に北海道や東北の一部地域では、梅雨明け以降の高温多湿な気候下で発生しやすく、葉に黒褐色のすす状の斑点が広がることで、光合成効率の低下や収量減少の原因になります。

光合成ダウン=収量ダウン!病害の初期発見がカギ!
◆ 初期防除には「チルト乳剤」の活用を
- すす紋病は発生初期の対応が極めて重要です。
- 有効な薬剤として「チルト乳剤(有効成分:プロピコナゾール)」が挙げられます。
- 発生が確認された段階、または前年度に多発した圃場では早期散布が効果的です。

すす紋病は早期対応がカギ!チルト乳剤が効果的!
◆ 効率的な防除法
- 病害は圃場の外回り(周辺部)から広がる傾向があるため、特に多発履歴のある圃場では外周部のみの散布でも効果が期待できます。
- 病斑が広がる前に対応することで、圃場全体への展開を防ぎ、農薬使用量の削減にもつながります。
🌽【ポイント】チルト乳剤はすす紋病の予防および治療の両面で効果があり、適切なタイミングでの使用が収量・品質維持の鍵となります。

チルト乳剤は予防・治療に効果的、使い時が重要!
7. まとめ
- デントコーンの魅力: 高いでん粉含有量で栄養価が安定し、冬季も質の良い飼料を確保できる。
- 栽培ポイント: 土壌pH管理、適切な肥料設計、最適な収穫タイミングを守ることが重要。
- サイレージ調製: 細断・充填・密封・発酵管理の各ステップで品質を左右するため、手順を徹底。
- 地域と品種: 北海道の主要品種から、東西日本向けの品種まで用途に応じて選択可能。
- 今後の展望: 余剰デントコーンの道外販売拡大による酪農家の収益改善が期待される。
デントコーンは、その高い栄養価と発酵による保存性から、酪農における粗飼料の中核を担っています。正しい栽培・収穫管理と地域特性に合った品種選びで、安定した牛乳生産と経営改善を実現しましょう。将来的に増える道外販売の取り組みも注目すべきポイントです。

デントコーンは酪農の成長を支える重要作物
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