牛の健康管理で欠かせないのが「蹄浴(フットバス)」です。特に趾皮膚炎や腐蹄病といった伝染性蹄病は、乳量の低下や跛行の原因になり、酪農経営に大きな損失を与えます。この記事では、蹄浴の効果や方法、頻度、薬剤選びまで、実践的なポイントを詳しく解説します。

趾皮膚炎や趾間ふらんを防ぎ、乳量低下・跛行を抑制
蹄浴とは?:役割と期待できる効果
蹄浴(フットバス)は、牛の蹄を消毒液に浸すことで病原菌の付着を減らし、趾(し)皮膚炎、趾間ふらんなどの伝染性蹄病を予防・制御する管理手法です。蹄病は跛行や摂食量低下、乳量の減少といった経済的損失をもたらすため、定期的な蹄浴は酪農経営の安定に直結します。

蹄浴は牛の蹄を消毒して伝染性蹄病を予防!
蹄浴槽の設計ポイント:失敗しない長さ・深さ・幅
効果を出すための基本スペックは次の通りです。
- 長さ:2.5~3.0m(牛が2~3歩踏める長さ。蹄がしっかり浸る時間を確保)。
- 深さ:10~15cm(蹄冠部が浸る深さを目安)。
- 幅:50~60cm(牛が不安なく通れる幅)。
- 床材:滑り止め加工またはゴムマットを敷き、怪我防止。
- 動線:搾乳後や牛舎通路の自然な通り道に設置すると定着しやすい。
Tip:プレバス(事前洗浄槽)を設けると汚物が落ち、薬液の消耗が抑えられます。

蹄浴槽は長さ2.5〜3mで蹄がしっかり浸かる設計
蹄浴の実施手順と頻度
標準的な手順
- 通路と槽の清掃を行う(大きな汚れは事前に除去)。
- 規定濃度の消毒液を槽に入れる。
- 牛をゆっくり通過させ、2~3歩踏ませる(浸漬時間を確保)。
- 通過後は乾いた場所へ誘導し、休ませる。
頻度の目安
基本は週3~4日連続での実施が効果的です。季節や牛舎の汚れ具合によって増減させ、150~200頭通過ごと、または汚れが目立ったら薬液を交換します。

牛をゆっくり通過させ、2~3歩で浸漬時間を確保
代表的な薬剤と濃度、取扱注意
現場でよく使われる薬剤と留意点をまとめます。
- 硫酸銅(硫酸銅水溶液):有効性が高く趾皮膚炎に広く用いられる。現場濃度の目安はおよそ5%前後。ただし金属の腐食、環境負荷に注意。
- 四級アンモニウム塩(QAC):扱いやすく刺激が少ない。濃度は製品指示に従う。低温下で効果が落ちることがある。
- ホルマリン:殺菌力は強いが取扱いと安全管理が重要(揮発性・刺激性あり)。
薬剤の濃度は製品ラベルと獣医の指示を最優先にしてください。誤った濃度や混合は牛の皮膚や環境に悪影響を与えます。

硫酸銅は趾皮膚炎に効果的、濃度は5%前後
廃液処理と環境配慮
硫酸銅のような金属含有薬剤は直接の放流を避け、以下を徹底しましょう。
- 廃液は専用タンクで回収し、適切な処理施設へ持ち込むか、農協などと連携して処理。
- 処理前にpH調整や中和処理を行う場合があるので、自治体の規則を確認。
- 薬剤使用の記録を残し、交換頻度と量を可視化する。

硫酸銅など金属含有薬剤は直接放流NG
現場で効く実践Tipsとトラブル対策
- 嫌がる牛への対処:ベテラン牛を先頭に通す、柵や目隠しで直線化すると通過がスムーズ。
- 凍結対策:寒冷地では加温や断熱、冬季専用のQAC系薬剤の使用を検討。
- コスト削減:プレバスを活用し薬液の汚染を減らす、微量ミネラル給餌で蹄の耐性を高める。
- 効果確認:蹄病の発生率や跛行率を記録し、蹄浴実施前後で比較して改善を評価。

微量ミネラル給餌で蹄の耐性を高める
よくある質問(FAQ)
Q:蹄浴はすべての牛に必要ですか?
A:基本的に群全体での管理が望ましいですが、乾乳期や病歴のある個体など個別対応が必要な場合は獣医と相談してください。
Q:薬液はどのくらいの頻度で交換すべき?
A:目安は150~200頭通過ごとですが、濁りや糞尿が多い場合は早めの交換が必要です。
蹄浴は単独の対策というより、給餌管理・床材管理・獣医診断とセットで効果を発揮します。まずは小さく試して記録を取り、効果を確認しながら現場に合った運用ルールを作ってください。
まとめ
蹄浴(フットバス)は、酪農経営において蹄病予防・生産性向上・経費削減の三拍子を叶える重要な管理手法です。
正しい設計・方法・頻度を守り、効果的な薬剤を選ぶことで、乳牛の健康と経営の安定につながります。
記事を参考に、ぜひ現場に合わせた最適な蹄浴管理を導入してください。

蹄浴は蹄病予防・乳量維持・経費削減の三拍子
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