国産生乳の消費低迷が深刻化 — 乳業8団体の連携と牛乳でスマイルプロジェクト

国産生乳の消費低迷と脱脂粉乳在庫増を解説する乳業8団体の取り組み「牛乳でスマイルプロジェクト」のイメージ画像 乳製品
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国産生乳の消費が長期的に落ち込む中、Jミルクなど酪農乳業8団体が連携して「牛乳でスマイルプロジェクト」を再始動しました。本記事では脱脂粉乳の在庫増や生産基盤の脆弱性という現状を一次データと業界発表に基づいて整理し、短期的対策と中長期の構造的処方箋を専門家の視点で提示します。

導入:なぜ「今」国産生乳の需要喚起が急務なのか

2025年11月12日、Jミルクを含む酪農乳業8団体が東京都内で合同会見を行い、業界横断で消費拡大に取り組むことを発表しました。会見では農水省と連携する「牛乳でスマイルプロジェクト」を軸に、イベント連携や在庫対策などの施策が示されています。

背後には、脱脂粉乳(脱粉)の在庫増や生乳の需給アンバランスがあり、供給過剰が続けば生産基盤(酪農家の経営)にも悪影響が及ぶ懸念があります。本稿では**公的データと業界発表**を基に、事実と取れる範囲で現状を整理します。

背景データ:在庫・生産・消費の現状(要点)

脱脂粉乳の在庫状況

Jミルクの2025年度需給見通しでは、脱脂粉乳の年度末在庫が前年度比で大幅に増加し、8万トン台に達する見込みが示されています。具体的には、年度末在庫は約8.1万〜8.4万トンと試算され、前年からの増加率は六〜七割近くにのぼる見通しです。これは在庫の積み上がりと消費回復の停滞が重なった結果です。

生乳生産と消費の潮流

農林水産省の統計や需給見通しでは、国内生乳の生産は地域差があるものの、飲用牛乳需要の減少や代替飲料の普及が消費を押し下げていることが示唆されています。生産側では飼料高騰や酪農家戸数の減少といった構造要因も並行して存在しており、需給の脆弱さが浮き彫りになっています。

乳業8団体が示した主な施策(会見のポイント)

  • 牛乳でスマイルプロジェクトの再始動とイベント展開:11月15日の「ミルクフェス in 豊洲」を皮切りに、消費者接点を増やして体験訴求を強化します。イベント情報は公式でも案内されています。
  • 脱脂粉乳の在庫対策としての全国参加型基金:在庫の一時買い取りや用途開拓支援を目的とした基金の検討・設立が発表されています。
  • 外食・加工・小売との異業種連携:乳製品を組み込んだメニュー開発や流通チャネル拡大で消費の“面”を作る方針です。
  • 消費者向け情報発信と教育:学校給食や家庭での利用提案を通じ、習慣化を促す取り組みを強化します。
学校給食のイラスト|栄養バランスと食育

現場の視点 — リスクと実効性の評価

イベントや基金は短期的に在庫処理や消費喚起に寄与しますが、**根本的な解決には中長期の需要形成と生産コスト構造の見直し**が必要です。具体的リスクとしては(1)基金が在庫を一時的に抱えるだけで終わる懸念、(2)イベント効果が一過性にとどまる可能性、(3)消費者行動が戻らない場合の再度の在庫積み上がり、が挙げられます。

現場で効く短期施策

  1. 学校・業務用の用途拡大(脱脂粉乳を使った業務レシピの普及)
  2. イベントでの即売・定期購入誘導(試飲→サブスク誘導など)
  3. 地域連携によるローカル需要の喚起(地域ブランドとの結びつけ)

必要な中長期施策(構造処方箋)

  1. 飼料自給とコスト低減策で生産基盤を安定化
  2. 乳製品の用途開拓(加工品・外食メニューへの組み込み)で需要の“底上げ”
  3. 消費教育(栄養価や調理利用)を通じた習慣化の促進

専門家の考察:政策と市場のバランスをどう取るか

業界による連携と基金の投入は必要な初動ですが、**公的支援と市場メカニズムの両輪**で進めることが重要です。短期的な在庫圧縮策(買い取りや用途転換)は、過度に実施すると市場シグナルを曖昧にし、長期的な生産調整の先送りを招く恐れがあるため、透明性の高い基準と出口戦略(いつ、どの程度まで基金を縮小するか)を明示する必要があります。

また、消費側の習慣変容には時間を要するため、イベントやPRは**接点作り(awareness)→体験(trial)→継続(habit)**へと段階的に設計することが求められます。具体的には試供→レシピ提供→購入後のリマインド(メールやSNS)を組み合わせる施策が効果的です。

結論:現実的かつ慎重な道筋

  • 現状認識:飲用習慣の変化や代替飲料の台頭で国産生乳の需要は低下し、脱脂粉乳在庫が顕著に増加している。
  • 業界対応:8団体による連携(イベント実施、基金設立、異業種連携)は適切な初動。ただし短期処置のみでは再発リスクあり。
  • 必要な施策(同時並行):
    1. 基金は透明な運用ルールと明確な出口戦略を設定すること、
    2. イベント等の短期施策は用途開拓・定着化施策と組み合わせること、
    3. 生産側では飼料自給やコスト低減を進め生乳生産基盤の強化を図ること。

効果を持続させるには、(A)脱脂粉乳在庫対策に透明で限定的な基金運用ルールを設ける、(B)イベント等の短期施策を中長期の用途開拓とセットで運用する、(C)生産コスト改善(飼料自給や効率化)を並行して進める、という三点を同時に進める必要があります。これらの要素を欠いたまま短期策にだけ注力すると、再び需給不均衡が表面化するリスクが高いと専門家は考えます。

今後のチェックポイント:(1)基金の設計詳細、(2)ミルクフェス等イベントの参加実績・購入率、(3)脱脂粉乳在庫の四半期ごとの推移—これらを定点観測して記事を更新してください。

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この記事を書いた人

神奈川県横浜市の非農家に生まれる。実家では犬を飼っており、犬部のある神奈川県立相原高校畜産科学科に進学。同級生に牛部に誘われ、畜産部牛プロジェクトに入部。牛と出会う。

大学は北海道の酪農学園大学に進学。サークルの乳牛研究会にて会長を務める。ゼミでは草地・飼料生産学研究室に所属。

今年で酪農歴10年!現在は関西の牧場にて乳肉兼業農場の農場長として働いています。

【保有免許・資格・検定】普通自動車免許・大型特殊免許・牽引免許・フォークリフト・建設系機械・家畜商・家畜人工授精師・日本農業技術検定2級・2級認定牛削蹄師

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