小宮山泰子「白い水」炎上─中洞正氏が岩手日報で真相説明。

SNS炎上を象徴する炎とスマートフォン、放牧牛と牛乳を対比した牛乳の生産方法と価値観の違いを表すイメージ 酪農NEWS
牛乳を巡る価値観
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2025年12月、立憲民主・小宮山泰子議員がXで引用した「白い水」という表現が酪農界で波紋を広げました。12月18日に岩手日報へ寄稿した中洞正氏は、発言の背景と「山地酪農」と市販の牛乳(超高温殺菌)の違いを説明しています。本稿では事実関係を整理し、殺菌技術と飼養の違いが消費者の味覚と選択にどう影響するかを酪農家視点で解説します。

事件の概要と時系列

2025年12月上旬、立憲民主党の小宮山泰子議員がX(旧Twitter)で、総会の報告として中洞正氏の発言を引用し、 「一般的な市販牛乳を『白い水』」と伝えた投稿が波紋を呼びました。投稿は削除され、議員側は謝罪を行っています(投稿削除・謝罪の報道)。

その後、中洞正氏本人が2025年12月18日付の岩手日報「声」欄に寄稿し、自身の発言の文脈や山地酪農の理念を説明しました。 (本記事は同寄稿の要旨と、殺菌技術・飼養管理の違いが味や消費者選択にどう影響するかを専門的に解説します。)

中洞正氏の岩手日報寄稿(要点)

  • 発言の対象は「超高温殺菌中心の市販牛乳」としての特徴(長期保存・風味の薄さ)を指したもので、市販牛乳全体の否定ではないと説明しています。
  • 寄稿では、牛の飼養方法(放牧 vs 舎飼)や飼料の差が乳の風味と牛の健康に影響すると述べ、消費者に対して生産方法を知る重要性を訴えています。

牛乳とは「牛の乳汁。殺菌して飲用に用いる、バター、チーズなどの乳製品の原料となる」(広辞苑・第7班版)とあるにもかかわらず、そのUHT牛乳はバターにもチーズにもならないのである。このような牛乳は本来の牛乳とは言えないのではないか。という意味から「白い液体」と発言したのである。

岩手日報「超高温殺菌 牛乳と言えるか」より引用

超高温殺菌(UHT)とは:消費者が押さえるべきポイント

超高温殺菌(UHT)は短時間で高温(一般に120℃程度で数秒)加熱して滅菌性を高め、長期保存を可能にする処理です。 長期保存と流通効率を重視する現代の大量流通に向く一方、加熱による風味変化が指摘されることがあります(発言の背景にもこの指摘が含まれます)。

<消費者への簡潔な理解>

  • メリット:長期保存、食中毒リスク低減、流通の安定化
  • デメリット:加熱処理に伴う香気・風味の変化(好みの差が出る)

ここで大切なのは、「危険な製法」ではなく「安全性のある製法」だという点です。 食品としての安全性は、現在の基準では十分に確保されています。

栄養は変わらない?よくある誤解

結論から言うと、栄養成分表の数値はほぼ同じです。

たんぱく質・カルシウム・脂質などの「量」は、 超高温殺菌でも低温殺菌でも大きく変わりません。

ただし、違いが出やすいのは「構造」です。

  • たんぱく質は高温で変性しやすい
  • 脂肪球をホモジナイズ(均質化)しているため口当たりに影響

そのため「栄養がゼロになる」「体に悪い」というのは誤解ですが、 味や舌触りの違いとして感じる人がいるのは事実です。

山地酪農(なかほら牧場)の特徴とその評価

中洞氏が実践する「山地酪農」は、通年放牧・自然草中心飼料・ストレス低減を重視する手法です。 なかほら牧場は通年放牧や飼育方法で知られ、アニマルウェルフェアや乳質の良さを打ち出しています。

消費者にとってのポイント:

  1. 放牧・草飼育は乳(グラスフェッド牛乳)の「風味」に影響しやすい(草由来の香気成分など)。
  2. 付加価値を打ち出すために価格も高めになりやすい(購買選択の分岐点になる)。

市販牛乳と山地牛乳の比較

下表は一般的な比較(目安)です。

項目市販(UHT等含む)山地酪農(放牧中心)
殺菌方法超高温殺菌(UHT)や高温短時間(HTST)多くは低温処理や短時間の加熱(製品により異なる)
風味保存性重視で風味は比較的均一草由来の風味が残ることが多く個性が強い
価格比較的安価高価格帯になりやすい
流通全国流通向けに最適化地域流通または直販が中心
動物福祉生産形態により差がある(舎飼中心が多い)放牧中心で福祉面に配慮がされやすい

(※表は一般論。メーカー・商品ごとに例外あり)

なぜ日本はUHT牛乳が主流なのか?

日本で超高温殺菌牛乳が主流になった理由は、単純ではありません。

主な理由は次の4つです。

  1. 学校給食での安全性を最優先してきた
  2. 流通距離が長く、安定供給が必要
  3. 廃棄リスクを下げる必要がある(低温殺菌は消費期限が短い)
  4. 大手乳業メーカーの設備投資との相性

日本の流通構造と歴史の中で選ばれてきた結果と考えるのが自然です。

海外ではどうなの?

ヨーロッパでは、低温殺菌牛乳が主流の国も多く、 UHT牛乳は保存用や料理用として使われることが一般的です。

味や風味を重視する文化があり、 「用途によって牛乳を選ぶ」という考え方が浸透しています。

結局、どの牛乳を選べばいい?

正解はひとつではありません。

  • 毎日飲む・価格重視 → UHT牛乳
  • 味や風味を楽しみたい → 低温殺菌牛乳
  • 料理・チーズ用途 → 用途に応じて選ぶ
  • 防災→常温保存可能で賞味期間:120日のロングライフ牛乳(LL牛乳)

「用途で選ぶ」という視点を持つだけで、 牛乳との付き合い方はぐっと豊かになります。

まとめ

どのように生産された牛乳か(殺菌法・飼養環境・飼料)」をラベルや公式情報で確認し、自分の価値観(味/動物福祉/価格)に合わせて選ぶことが賢明です。

参考・一次情報(抜粋)

  • 中洞正氏の発言(議連の記録・一部抜粋) — 立憲民主党の関連ページ等。
  • なかほら牧場(公式) — 山地酪農の実践紹介。
  • 各ニュース報道(投稿削除・謝罪の報道) — 日刊スポーツ、ライブドア等。

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この記事を書いた人

神奈川県横浜市の非農家に生まれる。実家では犬を飼っており、犬部のある神奈川県立相原高校畜産科学科に進学。同級生に牛部に誘われ、畜産部牛プロジェクトに入部。牛と出会う。

大学は北海道の酪農学園大学に進学。サークルの乳牛研究会にて会長を務める。ゼミでは草地・飼料生産学研究室に所属。

今年で酪農歴10年!現在は関西の牧場にて乳肉兼業農場の農場長として働いています。

【保有免許・資格・検定】普通自動車免許・大型特殊免許・牽引免許・フォークリフト・建設系機械・家畜商・家畜人工授精師・日本農業技術検定2級・2級認定牛削蹄師

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