北海道で酪農経営に携わる皆さんにとって、資金繰りの安定は最重要課題の一つです。その中で、JA(農業協同組合)が提供する「クミカン(組合員勘定制度)」は、生乳販売収入のタイミングと資材購入のタイミングをスムーズに結びつけ、経営の安定化に大きく寄与しています。本記事では、初心者の方にもわかりやすく、クミカンの仕組みから導入方法、メリット・デメリット、実際の活用事例まで、専門的かつ具体的に解説します。

クミカンは“生乳販売収入と資材購入代金の支払いをつなぐ”便利な制度!
1. クミカン(組合員勘定制度)とは
「クミカン」は、JAが組合員(農家)向けに提供する専用の会計口座で、正式名称を「組合員勘定制度」と言います。農家はこの口座を使って、飼料・肥料・農薬などの生産資材を掛売りで購入し、その代金を生乳販売収入と相殺するしくみです。
- 掛売り購入:現金を使わず、後払いで必要な資材を確保
- 相殺決済:生乳の販売代金から自動的に支払い
酪農は毎日の搾乳で生産量が安定している一方、販売代金の入金にはタイムラグがあるため、クミカンが資金繰りのブリッジとして機能します。

クミカンは、資材購入の掛け払いと生乳代金の相殺で資金繰りをサポート!
2. 制度の誕生と歴史的背景
- 1961年(昭和36年):北海道農協中央会が全国に先駆けて導入
- 1970〜80年代:全国のJAでも同様の勘定制度が拡大
- 現在:北海道では約90%以上の酪農家がクミカンを利用※1
制度創設の背景には、当時の北海道酪農が抱えていた以下の課題があります。
- 極端な季節性:冬季は積雪による飼料輸送コスト増大
- 決済遅延:集荷→出荷→精算まで約1ヶ月のタイムラグ
- 設備投資需要:寒冷地向け施設の維持・更新
これらを克服するために、JAと生産者が協力して生まれたのが「組合員勘定制度」です。

酪農経営と資金繰りの安定に、クミカン制度が重要だと実感しました!
3. 具体的な仕組み:資材購入から決済まで
項目 | 内容 |
---|---|
資材購入 | 組合員勘定口座で飼料・肥料などを掛売りで購入 |
口座計上 | 購入代金が口座残高に自動計上 |
販売代金入金 | 生乳販売収入が口座に入金 |
清算処理 | 入金額から購入代金を自動的に相殺 |
残高管理 | 残った差額は次回以降の取引に繰越 |
供給限度額 | 営農計画に基づき掛売り可能額の上限を事前設定 |

資材購入から生乳代の入金・清算まで、全部が口座で管理されてて便利!
4. クミカン利用の流れとポイント
- 加入申請
- 管轄JA窓口で「組合員勘定利用申込書」を提出
- 営農計画や収支見込みを確認、供給限度額を設定
- 資材購入
- JA支所または提携業者から掛売りで資材調達
- 購入時に組合員番号で認証し、口座に計上
- 生乳出荷・代金回収
- 集荷センター→卸売市場→乳業メーカーへ生乳を出荷
- 販売代金は指定口座(クミカン口座)へ自動入金
- 月次清算
- 毎月1回、自動相殺と残高明細表の発行
- 残高超過時は追加返済、余剰時は次月以降に繰越
- 定期レビュー
- JA担当者と半年に一度、営農計画の見直し・限度額再設定
ポイント:
- 継続的な記帳確認:購買・販売のデータは毎月必ず照合
- 限度額の適正化:生産量増減や市場価格変動に応じて調整
- 相談窓口活用:JAの経営・技術指導員を積極的に活用

クミカンって、申請から清算まで全部セットで管理されてるんだ!
5. メリット・デメリット詳細比較
メリット
- 資金繰りの安定
- 手元資金が少なくても資材購入が可能
- 会計効率化
- 購入・販売代金が自動相殺され、記帳事務が簡素化
- 経営指導と連携
- 営農計画をもとにJAから適切な助言が得られる
- 取引一元管理
- 購入・販売履歴が一元化され、経営分析が容易

クミカンって、資金繰りに困っても資材を買えるから安心だね!
デメリット
- 過剰負債リスク
- 限度額以上に資材を購入すると返済負担が増大
- 依存度の増加
- JAへの依存度が高まり、自由度が制限される
- 金利・手数料
- 長期残高には所定の手数料が発生する場合あり
- 運用ルールの複雑化
- 各JAで運用方法や限度額設定基準が異なる

クミカンに頼りすぎると、JAのルールに縛られやすくなるね
6. 実際の酪農現場での活用事例
事例①:繁忙期の飼料購入
- 背景:乳交配から分娩、哺育まで人手と資材が一時的に集中
- 活用:クミカンで一括購入し、翌月の生乳代金で清算
- 成果:資金ショートを回避し、通常通り育成計画を遂行
事例②:設備更新投資
- 背景:搾乳設備の老朽化に伴う入れ替え投資
- 活用:設備業者との連携で掛売り条件を設定
- 成果:大規模投資を分割で実施し、キャッシュフローを平準化

更新投資のタイミングで使えて便利!計画的な設備改善が進んだ
7. 導入前に確認すべき注意点
- 契約条件の詳細確認
- 手数料率・限度額の変更条件・清算日
- 将来計画との整合性
- 生産量増減や新規品目導入とのシナジー
- 複数JAの利用
- 複数のJA支所と連携する場合は口座管理が煩雑化
- 緊急資金手当
- 生乳価格急落時の短期資金繰り対策プラン

増頭予定なのに限度額が足りないかも。導入前に営農計画と照らし合わせよう
8. まとめと今後の展望
- クミカンの定義と仕組み:掛売り購入→組勘口座計上→生乳販売代金で相殺
- 歴史・背景:1961年創設以降、季節変動に対応する資金管理ツールとして進化
- メリット:資金繰り安定化、会計効率化、JAによる経営指導
- デメリット:過剰負債リスク、依存度増加、手数料負担
- 導入ポイント:限度額設定、定期レビュー、JA担当者との連携強化
クミカン(組合員勘定制度)は、北海道の酪農家にとって「なくてはならない資金管理ツール」です。生乳の販売代金までのタイムラグをカバーし、年間を通じたキャッシュフローを安定化させます。今後は、ICTを活用したリアルタイム残高管理や、生産データと連動した限度額自動調整など、さらに進化したサービス提供が期待されます。

クミカン制度って、酪農の資金繰りを支える“縁の下の力持ち”なんだね!
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※当記事の情報は2025年7月2日時点のものです。今後の法改正や制度変更にご注意ください
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