牛の蹄底潰瘍|原因・症状・予防・治療を徹底解説|乳量減少と経営損失を防ぐ5つの対策

牛の蹄底潰瘍:解剖図と実写真 疾病
スポンサーリンク

蹄底潰瘍(ていていかいよう)は、乳牛の健康と酪農経営に深刻な影響を及ぼす代表的な蹄病です。発症すると歩行困難や乳量減少を招き、1頭あたり年間数万円の損失となることもあります。本記事では、蹄底潰瘍の原因、症状、予防策、治療法を最新データと実例を2級認定牛削蹄師である筆者が詳しく解説します。

牛さん
牛さん

歩き方がおかしい?乳牛の蹄底潰瘍に注意!


蹄底潰瘍とは?症状と経営への影響

蹄底潰瘍は、蹄底(牛の足裏部分)の角質層が損傷し、真皮が露出することで発生します。特に後肢の外側蹄に多く見られ、強い痛みを伴います。

主な症状

  • 跛行(足を引きずる歩き方)
  • 蹄の変形
  • 食欲低下
  • 乳量の減少

放置すると慢性化し、蹄葉炎(ていようえん)や白帯病(はくたいびょう)などの合併症を引き起こす可能性があります。

経営への影響

  • 乳量が10〜20%減少
  • 治療費の増加
  • 廃用牛の増加による損失

英国の調査では、100頭規模の酪農場で蹄底潰瘍による年間損失は約2000ポンド(約30万円)に達することが報告されています。日本国内でも北海道や九州の酪農場で同様の傾向が見られます。

牛さん
牛さん

食欲が落ち、乳量も10〜20%減少することも

牛の蹄底潰瘍の症状と治療風景
蹄底潰瘍は牛の歩行に影響を与える深刻な蹄疾患です。

蹄底潰瘍の主な原因

蹄底潰瘍の発生には、環境、栄養、管理など複数の要因が関わります。

1. 牛舎環境の悪化

  • 粗いコンクリート床や糞尿の蓄積が蹄を傷つける
  • 長時間立ち続けることで蹄内部の圧力が増加

2. 栄養不良と蹄葉炎

3. 削蹄の不備

  • 削蹄を怠ることで蹄のバランスが崩れ、負荷集中
  • 暑熱ストレスによる蹄葉炎の悪化

4. 感染症の併発

  • 趾皮膚炎(DD)が蹄を弱らせる
  • 湿度の高い牛舎で発生リスク増大
牛さん
牛さん

分娩前後の循環障害で角質が弱化、潰瘍につながる


蹄底潰瘍の予防策

予防は治療よりも効果的で、経営損失の回避につながります。

定期的な削蹄

  • 年2〜3回の機能的削蹄で蹄のバランスを維持
  • 分娩前後の牛を重点的にチェック

牛舎環境の改善

  • 柔らかい敷料(ストロー・ゴムマット)を使用
  • 牛舎を清潔に保ち、休憩スペースを確保

栄養管理

  • 粗飼料中心でルーメンアシドーシスを防止
  • 分娩期にはビタミンE・セレンを補給

蹄浴(フットバス)の活用

  • 週1〜2回、硫酸銅や石灰乳、ホルマリンで感染予防

早期発見

  • 毎日の歩様観察で異常を見逃さない
牛さん
牛さん

蹄浴(フットバス)で感染症リスクを下げよう


蹄底潰瘍の治療法

早期治療が回復率を高めます。獣医と削蹄師の連携が重要です。

  1. 診断
    蹄テスターで痛みを確認し、必要に応じてX線検査。
  2. 削蹄と免重
    損傷部を削除し、健側の蹄にブロックを装着して負荷を分散。
  3. 薬剤投与
    抗生物質や消炎鎮痛剤を使用。重症例では静脈注射も。
  4. フォローアップ
    2〜4週間後に再検査し、フリーバーン牛舎で安静を確保。

日本の酪農現場では、適切な治療で80%以上が回復可能とされています。

牛さん
牛さん

早期発見・早期治療が回復のカギ!

ブロック(ゲタ)装着による蹄治療(健側にブロックで患側負荷軽減)
蹄病で使うブロック(ゲタ)

経営改善と今後の展望

  • 削蹄支援などの補助金活用
  • 歩様監視用IoTデバイスの導入
  • 酪農家同士の情報共有による技術向上

予防型管理を徹底すれば、蹄底潰瘍の発生率を半減させることも可能です。

牛さん
牛さん

削蹄支援や補助金で現場コストを軽減!


まとめ

蹄底潰瘍は、環境、栄養、管理の改善によって十分に防げる疾患です。定期的な削蹄と快適な牛舎環境、適切な栄養管理、そして早期発見を徹底することで、乳牛の健康と酪農経営の安定を守ることができます。

牛さん
牛さん

蹄底潰瘍は予防がカギ!環境・栄養・管理を見直そう


※本サイトで紹介している商品・サービス等の外部リンクには、アフィリエイト広告が含まれる場合があります。

この記事を書いた人

神奈川県横浜市の非農家に生まれる。実家では犬を飼っており、犬部のある神奈川県立相原高校畜産科学科に進学。同級生に牛部に誘われ、畜産部牛プロジェクトに入部。牛と出会う。

大学は北海道の酪農学園大学に進学。サークルの乳牛研究会にて会長を務める。ゼミでは草地・飼料生産学研究室に所属。

今年で酪農歴10年!現在は関西の牧場にて乳肉兼業農場の農場長として働いています。

【保有免許・資格・検定】普通自動車免許・大型特殊免許・牽引免許・フォークリフト・建設系機械・家畜商・家畜人工授精師・日本農業技術検定2級・2級認定牛削蹄師

みやむーをフォローする
スポンサーリンク
疾病酪農
みやむーをフォローする
タイトルとURLをコピーしました